お金より幸せを測る国?ブータンの国民総幸福
豊かさをお金だけで測らない国があります。ヒマラヤの小国ブータンは、国民の幸せそのものを国の指標にしてきました。
国民総幸福(GNH)と呼ばれるこの考え方は、9つの分野と33の項目で数値化されます。心がけの話ではなく、統計の仕組みとして動いているのが特徴です。
国王の言葉から始まった
言い出したのは、第4代国王ジグミ・シンゲ・ワンチュクです。「国民総幸福は国民総生産より大切だ」という言葉が知られています。
ただし、最初に語られた年ははっきりしません。1972年とする説が広く出回っていますが、オックスフォード大学の研究機関OPHIは1970年代後半としています。
国の方針として明文化されたのは2008年の憲法です。第9条が、国民総幸福の追求を可能にする条件づくりに努めると定めました。
4本の柱と9つの分野
GNHは4本の柱で支えられています。持続可能な社会経済開発、環境の保全、文化の保護と振興、そして良い統治です。
調査ではこれを9つの分野に組み替えます。心理的な幸福、健康、教育、時間の使い方、文化の多様性、良い統治、地域の活力、環境の多様性、生活水準の9つです。
柱は言葉だけではありません。環境の保全については、憲法が国土の60パーセント以上を森林として保ち続けるよう定めています。
「幸せな人」の数え方
9つの分野には、合計33の指標が割り当てられます。調査員は一人ひとりにこの33項目を尋ね、それぞれが足りているかどうかを調べます。
重みづけした指標の66パーセント以上で基準を満たした人が、幸せな人として数えられます。計算にはアルキレ=フォスター法という手法を使い、指数は0から1の間に収まります。
気分を10段階で自己申告してもらう方式とは、まったく違う作りです。
2022年の数字
最新の2022年調査で、GNH指数は0.781でした。2010年が0.743、2015年が0.756ですから、少しずつ上がっています。
内訳は「深く幸せ」が9.5パーセント、「広く幸せ」が38.6パーセント。この2つを足した48.1パーセントが幸せに分類され、2010年の40.9パーセントから増えました。
一方で「幸せでない」人も6.4パーセントいます。伸びを支えたのは、住宅、収入、就学、公共サービス、識字率の改善でした。
「世界一幸せな国」は俗説
よく聞く「ブータンは世界一幸せな国」という説明には、裏づけがありません。国連の関連機関がまとめる世界幸福度報告は、今の生活を0から10で自分に採点してもらう方式です。
2019年版のブータンは95位でした。GNHは主観の点数ではなく、健康や教育や環境まで含めて暮らしの状態を測る仕組みです。
測っているものが違うので、順位を並べても比べたことにはなりません。
何をもって豊かとするか。ブータンの答えは「幸せは測れる、測るなら33項目だ」というものでした。
自分の暮らしをこの9つの分野で採点してみると、足りているものが思ったより多いかもしれません。
参考にした資料