トルコに立ち並ぶきのこ形の岩、その正体とは何か
トルコのカッパドキアに立つきのこ形の岩は、火山灰が固まった岩が雨と風に削られて残ったものです。ポイントは、頭にのった黒っぽく硬い岩。
これがかさの役目をして、真下の柔らかい岩を守っています。数百万年前の噴火と、今も続く侵食が組み合わさってできた地形です。
きのこ形の岩が並ぶ土地
カッパドキアはトルコ中部、首都アンカラの南東およそ280キロにある高原地帯です。頭に大きな岩をのせた塔が谷いっぱいに立ち並び、地元では「妖精の煙突」と呼ばれています。
この一帯は1985年、「ギョレメ国立公園とカッパドキアの岩窟群」としてユネスコの世界遺産に登録されました。自然の価値と文化の価値の両方で選ばれた、数少ない遺産のひとつです。
材料を運んだ火山
材料を運んできたのは火山です。エルジエス山、ハサン山、ギョッリュ山などが、およそ900万年前から300万年前にかけて噴火を繰り返しました。
降り積もった火山灰は固まって凝灰岩になり、その上を、火砕流が高温のまま固まった溶結凝灰岩や溶岩が覆います。こうしてカッパドキアの地面には、柔らかい層と硬い層が交互に重なりました。この重なり方が、後の形を決めます。
かさが真下だけを守る
岩は硬さによって削られる速さが違います。上にのった硬い岩が雨を受け止め、真下の柔らかい凝灰岩だけを守る。
かさからはみ出した周りはどんどん削れて低くなり、かさをかぶった柱だけが取り残されるのです。この硬さの差による削られ方の違いを、差別侵食と呼びます。
柱の本体は硬い岩ではなく、あくまで守られた柔らかい岩です。
1000年で数センチという速さ
削られる速さは実際に測られています。研究チームが岩に含まれる塩素36という原子を手がかりに調べたところ、平らな台地の表面は1000年あたり0.58〜0.93センチ、きのこ岩の頭にあたる部分では1000年あたり3.21〜3.39センチ、台地が刻まれ始めた場所では1000年あたり4.5センチほど削られていました(2015年、地形学の専門誌Geomorphology)。
1年に直せば0.05ミリ以下です。人が一生見ていても変化に気づけません。
それでも100万年たてば30メートル。あの景色は、その積み重ねでできています。
柔らかいから、掘って住めた
同じ柔らかさが、人の暮らしも生みました。凝灰岩は道具で掘りやすく、空気に触れるとほどよく硬くなります。
人々は岩をくり抜いて住居や教会をつくり、地下深くまで通路を伸ばしました。最も規模の大きいデリンクユの地下都市は、深さ85メートルほどに達します。
世界有数の岩窟住居群がここに生まれたのは、景色をつくったのと同じ岩の性質があったからです。
きのこ岩は完成した作品ではなく、途中の姿です。首が細くなりすぎたり頭の岩が落ちたりすると、守りを失った柱は削られて消えていきます。
パシャバー地区では、実際に落石の危険が調査されています。現地を訪ねたら、頭に黒っぽい板をのせた柱と、それを失って崩れかけた柱を見比べてみてください。その差こそが、この景色の仕組みそのものです。
参考にした資料