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死海で体が勝手に浮くのは塩分のせい?その正体とは

2026年7月公開 · 2026年9月更新 · 読了7分
死海で体が勝手に浮くのは塩分のせい?その正体とは

死海で体が勝手に浮くのは、塩が水を重くしているからです。死海の水は1リットルあたり約1.24キログラムあり、人の体よりはっきり重くなっています。

重い水ほど、中に入ったものを強く押し上げます。この記事では、浮く力の計算、塩がそこまで濃くなった理由、水位が下がり続けている現状、それでも生き物がいる不思議までを数字で説明します。

「海」と名のつく出口のない湖

死海はヨルダンとイスラエルにまたがる湖です。北側の湖盆は長さ約50キロ、いちばん広いところで幅約15キロ。最も深いところは約304メートルあり、塩分の極端に濃い湖としては世界一の深さです。

流れ込む主な川はヨルダン川で、流れ出す川はありません。夏の平均気温は32〜39度、年間の雨は50ミリに届きません。強い日ざしで水だけが蒸発し、溶けていた塩は湖に残ります。

この繰り返しで、2011年の塩分濃度は34.2パーセントに達しました。海水の約3.5パーセントと比べて9.6倍の濃さです。

体が浮くのは水が重いから

水に入った物には、押しのけた水の重さと同じ力が上向きに働きます。アルキメデスの原理です。

塩は水に溶けても体積をあまり増やさず、重さだけを足します。だから死海の水は1リットルで約1.24キログラム。

人の体は、息を吸った状態で1リットルあたり0.97キログラムほどです。押しのけた水のほうが体より重くなり、体は水面へ押し上げられます。

どれくらい浮くのかを計算する

浮いている物が水面の下に沈む割合は、「物の密度÷水の密度」で求められます。米国の大学向け物理教科書オープンスタックスが示している式です。

同じ教科書では、息を吸った状態の女性の体の密度を1立方メートルあたり約970キログラムとしています。この値を3種類の水に当てはめると、浮き方の差が数字で見えます。

水の種類と体の浮き方(密度はOpenStax・Wikipedia「Seawater」「Dead Sea」、体の密度0.97は息を吸った状態の例として計算)
水1リットルの重さ塩分濃度体が水面下に沈む割合水面から出る割合
真水(プール・川)約1.00キロほぼ0パーセント約97パーセント約3パーセント
海水約1.025キロ約3.5パーセント約95パーセント約5パーセント
死海の水約1.24キロ約34パーセント約78パーセント約22パーセント

プールや海では、浮いていても体の9割以上が水の中にあります。顔を出すには手足を動かす必要があります。

死海では体の2割強が水面から出ます。体重60キロの人なら、13キロ分ほどの体が水の上に持ち上がる計算です。何もしなくても頭と足先が水面に出るのは、この差のためです。

脂肪が多い人ほど体の密度は小さく、筋肉や骨の多い人ほど大きくなります。真水では沈みがちな人でも、死海なら確実に浮きます。

呼吸も浮き方を変えます。息を吸うと肺がふくらんで体の体積が増えますが、重さはほとんど増えません。押しのける水が増えるので、そのぶん浮きやすくなります。プールでも、大きく息を吸ったときと吐ききったときで、体の浮き方が変わるのを確かめられます。

中身は食塩ではない

死海の塩は、台所の食塩とは中身がまるで違います。海水に溶けている塩は約85パーセントが塩化ナトリウムです。死海では塩化ナトリウムが30.4パーセントにすぎず、塩化マグネシウムが50.8パーセントと半分を占めます。残りは塩化カルシウム14.4パーセント、塩化カリウム4.4パーセントです。

塩化マグネシウムは豆腐を固める「にがり」の主成分です。そのため死海の水は、塩辛さより苦みが立ちます。

ヘブライ語での昔からの名前は「塩の海」。古代ギリシャ人は湖岸に天然のアスファルトが出ることから「アスファルト湖」と呼びました。

この鉱物の多い水と泥を目当てに、湖岸には保養地が並んでいます。海面よりずっと低いため気圧が高く、紫外線が弱まることも理由に挙げられています。乾癬という皮膚の病気などへの効果を示す研究もありますが、科学的な評価はまだ定まっていません。

水面は毎年1メートル以上下がっている

死海の水面は、氷や水に覆われていない陸地としては地球上で最も低い場所です。2025年の時点で、海面下約440メートルにあります。

ただしこの数字は毎年変わります。1970年には海面下395メートルでしたから、55年ほどで45メートル近く下がりました。NASAによると、1970〜80年代は年に約0.7メートル、ここ20〜30年は年に約1.2メートルのペースです。

原因は、唯一の大きな水源であるヨルダン川の水が、周辺の農業や生活に回されたことです。かつて年に12億〜13億立方メートルあった流れ込みは、1億立方メートルを切るまで減りました。湖水は鉱物を採る蒸発池にもくみ上げられています。

水面の面積は1930年の約1,050平方キロから3分の1ほど縮みました。湖底では、水から出てきた塩の層が年に約10センチずつ厚くなっています。

魚はいないが、生き物はいる

塩分が濃すぎて、魚や水草のような大きな生き物は暮らせません。ただし、まったくの無生物の湖ではありません。

主な住人は高度好塩菌と呼ばれる古細菌です。細胞の中に塩化カリウムを1リットルあたりモル単位という高い濃度でためこみ、外の塩水と濃さをつり合わせています。こうして水を吸い出されずにすみます。

1992年の夏、死海が赤く染まりました。前の冬の大雨で表面から深さ5メートルほどの水が薄まり、塩分がそれまでの約70パーセントまで下がったためです。

まずドナリエラという緑藻が増え、それを追うように古細菌が水1ミリリットルあたり最大3,500万個まで増えました。赤い色は、古細菌の持つ色素によるものです。

湖底にも生き物の拠点があります。2010年からの調査で、水深約30メートルの湖底に直径約10メートルのくぼみが30か所ほど見つかりました。そこから真水が湧き出し、周囲の岩は緑や白の微生物の膜で覆われていました。膜をつくる細菌は、日光と、湧き水に含まれる硫化物の両方を使って生きています。

浮きやすい水は、泳ぎやすい水ではない

体が強く押し上げられるぶん、うつ伏せで泳ごうとすると足が浮いて姿勢が崩れます。あお向けになって力を抜くのが、死海での自然な浮き方です。

水が目や口に入ると強く痛みます。顔を水につけず、飛び込んだり水しぶきを立てたりしないことが大切です。

家で浮力の差を確かめるなら、生卵を使う実験が手軽です。コップの水に卵を入れると沈みますが、塩を少しずつ溶かしていくと、ある濃さで卵が浮き上がります。死海で人が浮くのと同じ理屈です。

よくある疑問

死海の塩分濃度はどのくらいですか?
2011年の測定で34.2パーセント、海水の9.6倍です。湖水1キログラムのうち342グラムが塩という計算です。
海でも死海と同じように浮けますか?
海水も真水より少し重いので浮きやすくはなりますが、差はわずかです。計算すると、海では体の約95パーセントが水に沈みます。死海の約78パーセントとは大きな開きがあります。
なぜ「死海」という名前なのですか?
塩分が濃すぎて、魚や水草が生きられないことに由来します。英語の「デッド・シー」はアラビア語の呼び名を訳したもので、そのアラビア語も古いギリシャ語やラテン語の名前を訳したものです。ヘブライ語の古い名前は「塩の海」です。

まとめ

死海で体が浮くのは、1リットル約1.24キログラムという重い塩水が、体を強く押し上げるからです。計算すると体の約22パーセントが水面から出て、真水の約3パーセントとは比べものになりません。その塩は出口のない湖で水だけが蒸発し続けた結果で、水面はいまも年に1メートル以上下がっています。まずは台所で塩水に卵を浮かべて、水の重さが浮き方を変える様子を確かめてみてください。

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