千円が1円になる?お金の桁をまとめる仕組み
デノミとは、通貨の呼び方の桁を一律に切り下げることです。トルコは2005年に100万旧リラを1新リラに置き換え、ゼロを6つ消しました。
千円が1円になるような大きな変化ですが、給料も物価も同じ倍率で書き換わるため、買えるものの量は変わりません。
桁が増えると計算が追いつかない
インフレが長く続くと、値段の桁は増え続けます。国際通貨研究所は、デノミの目的を「財・サービス価格の表示桁数が大幅に減ること等による経済活動の円滑化」と説明しています。
レジも帳簿も会計システムも、扱う桁が多いほど手間と打ち間違いが増えます。桁をまとめるのは、景気対策というより事務を回すための手当てなのです。
「デノミ」は日本語だけの言い方
英語の denomination は、通貨の呼称単位そのもの、つまり「円」「ドル」といった額面の呼び名を指します。切り下げるという意味は含みません。
桁の切り下げを表す英語は redenomination です。日本では denomination を略した「デノミ」が切り下げの意味で定着していますが、これは日本語の中だけで通じる用法です。
海外の記事で denomination を見かけても、桁を削る話とは限りません。
トルコが消した6つのゼロ
トルコ共和国中央銀行によると、2004年1月28日の法律第5083号にもとづき、2005年1月1日にトルコリラから6つのゼロが取り除かれました。100万旧リラが1新トルコリラに置き換わったのです。
新紙幣は1、5、10、20、50、100の6種類。移行期間を経て、2009年1月1日には名前から「新」が外れ、通貨名は再びトルコリラに戻りました。
桁を消すだけでも、法律の制定から名称の整理まで5年がかりの作業でした。
財産の実質価値は変わらない
切り替えの対象は現金だけではありません。国内のすべての資産と負債、つまり預金も給料も借金も家賃も、そして外貨との交換レートまでが同じ比率で読み替えられます。
1000分の1のデノミなら、100万円の預金は1000円になり、30万円の給料は300円になり、150円のパンは0.15円になります。数字は小さくなりますが、パンを何個買えるかは1個も変わりません。
デノミで財産が目減りするという話は、仕組みの上では成り立たないのです。
桁を削ってもインフレは止まらない
桁を減らしても、値上がりそのものが止まるわけではありません。ジンバブエは2006年から2009年にかけて3回のデノミを行い、合計で25桁を削りました。
3回目の2009年2月2日には、1兆ジンバブエドルが1新ドルに置き換わっています。それでも物価は上がり続け、同年4月に政府は自国通貨の使用を停止し、米ドルなどの外貨に切り替えました。
デノミは数字を読みやすくする処置であって、原因を治す薬ではありません。
円そのものの桁を切り下げるデノミは、日本では行われていません。ただし桁の整理なら経験があり、1円未満の銭と厘は1953年12月31日限りで通用力を失いました。
財布の中に「銭」の硬貨がないのは、その名残です。海外のニュースで「新〇〇」という通貨名を見かけたら、直前に何桁削られたのかを調べてみてください。
その国が通ってきたインフレの深さが、桁数から読み取れます。
参考にした資料