飛行機雲はなぜできる?空の水の秘密
飛行機雲の正体は、氷の粒でできた細長い雲です。エンジンの排気にふくまれる水蒸気が、マイナス40度前後の上空で、排気のすすを芯にして凍りついたものです。
煙ではありません。同じ空でも、すぐ消える日と何時間も残る日があるのは、上空の湿り具合が違うからです。
水はエンジンが作っている
飛行機のジェット燃料は、灯油に近い油です。主な成分は炭素と水素で、これが燃えると二酸化炭素と一緒に水ができます。
アメリカ環境保護庁も、ジェット排気は水蒸気と二酸化炭素などでできていると説明しています。つまり飛行機雲の材料は、どこかから吸い込んだものではありません。燃やせば必ず出てくる、燃焼の産物です。
必要なのは水蒸気・低温・小さな粒
イギリス気象庁は、飛行機雲ができるには3つそろう必要があると説明しています。水蒸気、氷点下をはるかに下回る低い気温、そして水がくっつく小さな粒です。
この粒を凝結核と呼び、排気にふくまれるすすがその役目を果たします。旅客機の巡航高度である1万メートル前後は、気温がマイナス40度を下回ります。
低く飛ぶ飛行機に白い線が出ないのは、そこの気温が高すぎるからです。
順番も決まっています。高温の排気が冷たい外気と混ざると、ごく短い間だけ水蒸気が飽和し、すすの粒に凝結して細かな水滴になります。
その水滴が瞬時に凍って氷の粒になるのです。冬に吐く息が白く見えるのと同じ現象が、けた違いの低温で起きていると考えると分かりやすいでしょう。
すぐ消える日と何時間も残る日
差を決めるのは、その高さの空気の湿り具合です。乾いていれば氷の粒は昇華し、固体から直接気体に変わって数秒から数分で見えなくなります。
逆に氷に対して湿度が100パーセントを超えていると、氷の粒は消えるどころか周りの水蒸気を吸って成長します。風に流されて横に広がり、1日以上残ることもあります。
広がりきったものは高い空の巻雲と見分けがつかなくなります。
天気の手がかりになるのか
アメリカ国立気象局は、飛行機雲の残り方を天気の目安にする言い伝えを紹介しています。すぐ消えれば好天が続き、長く残るなら天気が変わる兆し、というものです。
ただし、飛行機雲そのものが地上の天気を左右するわけではありません。イギリス気象庁は、地上に天気をもたらすほど大きな雲ではないと明言しています。
あくまで上空が湿っているかどうかを教えてくれる目印です。
条件が式になったのは1941年
飛行機雲は、飛行機が高く飛べるようになって初めて人の目にふれた現象です。最初の研究論文は1941年、ドイツのエルンスト・シュミットが発表しました。
その後1953年に、アメリカ軍の気象部門にいたハーバート・アップルマンが、発生を予測する手法をまとめます。2人の名前をとったシュミット・アップルマン条件は、80年以上たった今も、飛行機雲がいつできるかを判断する基準として使われています。
空をよぎる白い線は、飛行機が置いていった氷の粒の帯でした。次に見上げたら、線が何分で消えるかを数えてみてください。すぐ消えたその日の上空は、乾いています。
参考にした資料