雑学

1円玉は作るのに1円以上かかる?お金の裏話

2026年7月 · 読了3分
1円玉は作るのに1円以上かかる?お金の裏話

「1円玉は作るのに1円以上かかる」。有名な話ですが、これを証明する公式な数字は存在しません。

造幣局が貨幣の製造原価を公表していないからです。それでも、公開されている材料と製造枚数をたどっていくと、コストの正体はかなりのところまで見えてきます。

造幣局は原価を公表していない

まず出発点をはっきりさせます。造幣局の公式サイトにある「貨幣Q&A」には、こう書かれています。

貨幣の製造原価については、国民の貨幣に対する信任を維持するためや、貨幣の偽造を助長するおそれがあると考えられることから、公表していません。つまり世の中で語られる「1枚2円」「3円」という数字は、すべて誰かの推計か、報道による推定値です。

国が認めた確定額ではない、という前提で読む必要があります。

わかっているのは材料と重さ

一方で、材料と大きさは公開されています。造幣局によると、いまの1円玉は昭和30年(1955年)に流通が始まったアルミニウム製で、直径20ミリ、重さはちょうど1グラムです。

表の図案は公募で決まったもので、2500点を超える応募から選ばれました。造幣局はこの木を「若木」と呼んでいて、特定の樹種ではありません。

アルミの地金はここ数年、1キログラムあたり500〜700円ほどで取引されています。1グラムなら0.5〜0.7円。

額面の半分を超えますが、材料費だけなら1円には届きません。

高いのは材料ではなく手間

ここが肝心なところです。1円玉のコストを押し上げているのは、アルミ代ではなく加工の手間です。

金属を薄い板に延ばし、円形に打ち抜き、縁を立て、模様を刻み、検査して数える。工場の設備費も人件費もかかります。

しかもこうした費用の多くは、作る枚数が1枚でも1億枚でも大きくは変わりません。だから製造枚数が減るほど、1枚あたりの負担は跳ね上がります。

この10年の1円玉は、まさにその状態にありました。

10年間、流通用はほぼ作られなかった

財務省が公表している貨幣製造計画を見ると、状況がはっきりします。令和6年度に予定された1円玉の製造枚数は、わずか100万枚でした。

同じ年の100円玉は1億5000万枚ですから、150分の1です。この時期に作られていたのは、コレクター向けの貨幣セットに入れる分がほとんどで、店やレジに出回る流通用はほぼゼロ。

電子マネーやコード決済が広がり、現金でおつりをやり取りする場面そのものが減ったためです。

2026年度、11年ぶりに量産が復活

ところが流れが変わりました。財務省の令和8年度(2026年度)の計画では、1円玉の製造枚数が1億3200万枚に設定されています。

当初は2000万枚の予定でしたが、5月の改定で6倍以上に積み増されました。1円玉の量産は平成27年度以来、11年ぶりです。

財務省は、貨幣の流通状況と摩耗した1円玉の回収状況を踏まえ、新たに製造しなければ市中で1円玉が不足しかねないためだと説明しています。消費税で生じる1円単位の端数は、現金払いがある限りなくなりません。

1円玉が赤字かどうかに、公式な答えはありません。確かなのは、10年近くほとんど作られなかった1円玉が、2026年度に1億枚単位で戻ってくることです。

これから手に入る1円玉は年号を見てみてください。「令和8年」と刻まれた1枚は、11年ぶりの量産で生まれた硬貨です。

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