雲はなぜ落ちてこない?空に浮かぶしくみ
雲が落ちてこないのは、雲をつくる水の粒が1ミリの100分の1ほどしかなく、1秒に1センチしか沈まないからです。この遅さなら、下から吹き上がる空気の流れに簡単に押し戻されます。
雲ひとつで500トン近い水を抱えていても、粒の一つひとつは空気に負けるほど軽いのです。
雲ひとつ分の水は約500トン
アメリカ地質調査所(USGS)は、1辺1キロメートルの立方体ほどの積雲を例に重さを計算しています。雲の中の水の量は1立方メートルあたり約0.5グラム。
体積は10億立方メートルなので、水の総量は約50万キログラム、およそ500トンになります。乗用車500台分ほどの水が頭上に浮いている計算です。
それでも落ちてこないのは、雲が「かたまり」ではなく「粒の集まり」だからです。
粒の大きさは1ミリの100分の1
名古屋大学の解説によると、雲粒の半径は0.001〜0.01ミリメートルです。1ミリの100分の1以下しかありません。
ここまで小さいと空気の抵抗が強く効いて、落ちる速さは1秒あたり約1センチメートルにとどまります。高さ1000メートルの雲底からまっすぐ落ちたとしても、地面に届くまで28時間近くかかる計算です。
雲は落ちていないのではなく、落ちるのが遅すぎて落ちて見えない、というのが正確な言い方です。
上昇気流が落下を打ち消す
大気の中では、地面で温められた空気があちこちで立ちのぼっています。この上昇気流の速さは、雲粒の落下速度である毎秒1センチをかんたんに上回ります。
落ちる速さより押し上げる速さが大きい限り、粒は下がるどころか持ち上げられます。雲ができている場所は、たいてい上昇気流のある場所です。
さらにUSGSは、雲を含んだ湿った空気のかたまり自体が、下にある乾いた空気より密度が小さい点も挙げています。油が水に浮くのと同じで、まわりより軽いものは沈みません。
ちりがなければ雲はできない
水蒸気は、冷えれば勝手に水の粒に変わるわけではありません。空気中にちりがまったくない状態だと、湿度が300〜400パーセントに達しないと粒ができないことが知られています。
実際の空にはちりや海塩の微粒子が漂っていて、これが粒の芯になります。おかげで湿度101パーセント以下でも雲粒が育ちます。
空に浮かぶ水は、目に見えない小さな汚れに助けられて形になっているのです。
100万個集まると雨になる
雲粒どうしがぶつかって合体すると、粒はだんだん大きくなります。雨粒の直径はおよそ0.5ミリから数ミリ。
直径0.02ミリの雲粒と直径2ミリの雨粒では、長さで100倍の差があり、体積では100万倍の差になります。雨粒1個をつくるのに、雲粒がおよそ100万個必要という計算です。
ここまで太ると空気の抵抗も上昇気流も支えきれず、粒は地上へ落ちてきます。雨とは、浮かんでいられなくなった雲のことなのです。
次に空を見上げたら、その白いかたまりが1秒に1センチずつ沈みながら、同じだけ押し戻されている最中だと思い出してみてください。雲の形が刻々と変わるのは、粒が生まれては消えている証拠です。
雲のふちが立ちのぼるように盛り上がっていれば、そこに上昇気流があります。
参考にした資料