栗の渋皮はなぜむきにくい?日本の栗が果肉にくっつく理由と、むきやすくする下ごしらえ
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栗の渋皮がむきにくいのは、実が熟すにつれて渋皮の中に「重合型フェノール」という成分がたまり、渋皮と果肉をくっ付けてしまうからです。農研機構の研究報告は、日本の栗(ニホングリ)の渋皮がむけにくい原因をこう説明しています。
天津甘栗が簡単にむけるのは、中国の栗ではこの成分が少ないためと考えられています。日本の栗でも、加熱のしかたと、むくタイミングで手間は大きく変わります。
渋皮と果肉をくっつける成分
栗は外側から順に、硬い「鬼皮」と薄い「渋皮」、食べる部分の3層になっています。鬼皮は包丁で外せても、渋皮は果肉に張り付いて離れません。
農研機構の果樹研究所が2006年に出した研究報告によると、原因は渋皮の組織にたまる重合型フェノールです。果実が成熟していく過程でこの成分が蓄積し、渋皮と果肉を癒着させます。薄い皮が果肉に貼り付いた状態なので、皮だけをきれいに剥がせないのです。
たまる量は、栗の種類や品種によって違います。この差が「むきやすい栗」と「むきにくい栗」を分けています。
天津甘栗はなぜ簡単にむけるのか
日本で主に作られている栗は、日本原産のニホングリです。一方、天津甘栗に使われるのは中国原産のチュウゴクグリ。同じ栗でも、渋皮のはがれ方がまったく違います。
| 種類・品種 | どんな栗か | 渋皮 |
|---|---|---|
| ニホングリ | 日本原産。国内で主に栽培される | むきにくい。重合型フェノールがたまりやすい |
| チュウゴクグリ | 中国原産。天津甘栗に使われる | むきやすい。成分の蓄積が少ないためと推定されている |
| ぽろたん | ニホングリ同士の交雑から育成。2007年に品種登録 | 切れ目を入れて加熱すると、むきやすい |
チュウゴクグリがむけやすい理由について、研究報告は「推定される」という言い方をしています。断定ではない点に注意してください。
それなら中国の栗を日本で育てればよいのでは、と思うかもしれません。実際に昭和初期から各地で栽培試験が行われました。しかしチュウゴクグリはクリタマバチという害虫に弱く、実もニホングリより小粒です。そのため日本では、経済的に成り立つ栽培は難しいと考えられてきました。
ニホングリは、研究報告の時点で栽培面積が果樹の中で3位でした(カンキツ類、リンゴに次ぐ。報告が引用した2005年の統計)。それほど作られていながら、渋皮のむきにくさが加工の妨げとなり、消費が伸びない要因の1つとも書かれています。
日本の栗でもむきやすい「ぽろたん」
この問題を品種改良で解いたのが、農研機構の「ぽろたん」です。ニホングリ同士を掛け合わせて育成され、2007年に品種登録されました(登録番号 第15658号)。
ぽろたんは、鬼皮に切れ目を入れて加熱すると、渋皮が楽にむけます。農研機構は実演の条件として、果肉に届く長さ約2cm・深さ約3mmの傷を鬼皮の上から入れ、オーブントースターで7分加熱する方法を示しています。
関東での収穫期は9月上旬から中旬の早生で、1粒の重さは30gほどです。さらに約1週間早く収穫できる「ぽろすけ」が2016年に出願公表され、むきやすい栗を出荷できる期間が広がりました。店で探すときは「ぽろたん」「ぽろすけ」と品種名が書かれた袋が目印です。
生のままむくと、いちばん時間がかかる
ふつうのニホングリでも、加熱すれば渋皮は剥がれやすくなります。農研機構が品種選びのために考えた方法では、同じ栗でも下ごしらえによって、渋皮をむき終えるまでの時間がこれだけ違いました。
| 栗の状態 | むく時間 |
|---|---|
| 生の栗 | 13.3分 |
| 焼いた栗 | 11.2分 |
| 190℃の食用油で2分揚げた栗 | 3.1分 |
揚げた栗は、生の栗の約4分の1の時間でむけています。ただしこれは、品種の性質を比べるための研究用の方法です。家庭で殻つきの栗を油に入れるのは、油はねややけどの危険があるため勧めません。
この表から読み取りたいのは、「生の栗をむくのが、いちばん時間がかかる」という点です。家庭では、次に紹介する熱湯を使った手順が現実的です。
農林水産省が紹介する下ごしらえの手順
農林水産省の広報誌「aff」は、生の栗の皮をむく手順を次のように紹介しています。
- 生の栗を熱湯に10分つける
- 座(栗の底の部分)の側から頭に向けて、包丁で切り込みを入れて鬼皮をむく
- 鬼皮をむいた栗を、沸騰した湯で1〜2分ゆでる
- 火を止めて栗を取り出し、手で触れる温度まで冷ます
- 手で渋皮をむく
鬼皮を熱湯につける時間は、資料によって幅があります。農林水産省は10分、JAグループの解説は約1時間です。10分で鬼皮が硬いと感じたら、時間を延ばしましょう。
⚠ 鬼皮のついた栗を、そのまま電子レンジで加熱する方法は破裂の恐れがあるため、この記事では勧めません。
むきにくくなる3つの失敗
熱湯で加熱したあとの扱いについては、農研機構の「ぽろたん」の栽培・利用ガイドに、茨城県工業技術センターが調べた結果が載っています。業務用の加工を想定した、ぽろたんでの試験です。ふつうの品種にそのまま当てはまるとは書かれていませんが、作業の目安になります。
- 冷ましすぎる:熱湯で2分加熱すると十分むけるが、冷めると再びむきにくくなる
- 加熱しすぎる:5分以上の加熱でもむきやすいが、果肉の色が悪くなる
- 湯がぬるい:湯の温度が95℃を下回ると、むけにくくなる
同じ試験では、3分加熱すると、むきやすい状態が長く続きました。湯から上げた栗は一度に全部を冷まさず、手で持てる温度になったものから順にむいていくと、冷めてしまう前に作業を進められます。
数が多いなら栗むき器
栗ごはん用に何十個もむくなら、栗むき器を使う方法もあります。刃を栗に当てて、鬼皮と渋皮を削り取る道具です。価格は2026年10月時点の楽天市場の表示です。
定番:SUWADA 新型栗くり坊主(替刃1枚付き) 約2,680円。諏訪田製作所の製品です。全長約170mm・約140gで、刃はドライバーで付け替えられます。生栗と固ゆでの栗用で、サビるため水洗いはできません。
向いている人:毎年たくさんむく人、替刃で長く使いたい人。向かない人:使ったあと丸洗いして片づけたい人。
洗える型:SUWADA 栗くり坊主II 約2,680円。全長約170mmで、重さは約60gと軽めです。刃はステンレス刃物鋼、本体はABS樹脂(耐熱70℃)で、丸洗いできると記載されています。
注意:替刃を交換できるかは商品ページに明記がありません。刃の交換を重視するなら、購入前に確認してください。
手ごろな価格:渋木製作所 栗の皮むき器 約1,680円。長さ約185mmで、刃はステンレス鋼です。鬼皮と渋皮を一度にむく作りで、刃は左右を入れ替えられます。
向いている人:年に数回だけ使う人、まず安く試したい人。注意:無理な力をかけると破損のおそれがあると記載されています。
どれも刃はとても鋭く、SUWADAは剃刀並みの切れ味と案内しています。栗を持つ手の指先は刃の進む方向に置かず、使い終わったら子どもの手の届かない場所に保管してください(新型栗くり坊主はストッパーをかけて収納)。SUWADAの2種は、慣れるまで練習が要るとも書かれています。
よくある疑問
- むきやすい栗はどこで買えますか?
- 品種名で探すのが確実です。「ぽろたん」「ぽろすけ」と表示された栗を選んでください。ぽろたんは関東で9月上旬から中旬に収穫される早生なので、出回るのは秋の早い時期です。
- 生の栗はどのくらい保存できますか?
- 農林水産省によると、ポリ袋に入れて口は結ばずに折り、冷蔵庫のチルド室(約0℃)で最大1週間ほどです。できれば買った日のうちに食べるよう勧めています。
- よい栗の選び方は?
- 鬼皮にハリがあって深い茶色をしていて、押しても緩みのないものです。底の座に白い斑点や黒ずみがなく、ベタつきがないものを選びます(農林水産省)。
- 皮をむかずに丸ごとゆでるなら何分ですか?
- 農林水産省は、中火で40〜50分ゆでる目安を示しています。
まとめ
日本の栗の渋皮がむきにくいのは、熟す過程でたまる重合型フェノールが、渋皮と果肉を癒着させるからです。天津甘栗に使われる中国の栗はこの成分が少なく、日本の品種でも「ぽろたん」は加熱すると楽にむけます。
ふつうの栗は、熱湯につけてから鬼皮を外します。渋皮は1〜2分ゆでて、手で触れる温度になったら手でむきましょう。数が多い年は、栗むき器を1本用意しておくと作業が早く終わります。
参考にした資料