1メートルはどう決めた?地球の大きさが基準だった
1メートルの長さは、地球を実際に測って決められました。北極から赤道までの距離の1000万分の1、それが出発点です。
1791年にフランスで方針が決まり、二人の天文学者が7年近くをかけて測量しました。いまの定義は光の速さに変わっていますが、長さそのものはこのときの測量を受け継いでいます。
単位がばらばらで、取引が成り立たなかった
18世紀のフランスでは、長さの単位が地方ごとに違っていました。同じ布を買っても、町が変われば数字が変わります。
土地の売買や税の計算でも争いが絶えません。そこで求められたのが、どの国のものでもない基準でした。
1791年3月19日、フランス科学アカデミーは地球の子午線の4分の1の1000万分の1を1メートルとする案を採用します。王の腕の長さのような人にひもづく基準をやめ、地球そのものをものさしにしたのです。
7年近くかけて、ダンケルクからバルセロナまで測った
測量を任されたのは、天文学者のドランブルとメシャンです。1792年に出発し、フランス北端のダンケルクからスペインのバルセロナまで、三角形を数珠つなぎにする三角測量で子午線の長さを求めました。
作業は7年近くに及びます。革命直後の混乱の中、見慣れない機材を運ぶ二人は反革命派の疑いをかけられて拘束されました。
スペインとの戦争で足止めも受けています。それでも測量はやり遂げられ、結果は1799年、白金でつくられた「アルシーブのメートル原器」という金属の棒にまとめられました。
その1メートルは、0.2ミリ足りなかった
後の精密な測定で、この1メートルが本来の定義よりわずかに短いことが分かりました。その差は0.197ミリメートル、割合にして約0.02パーセントです。
原因は地球の形にあります。地球はきれいな球ではなく、山や地下の密度のむらによって重力の向きがわずかに傾きます。
この傾き(鉛直線偏差)を当時の計算に入れられなかったのです。ただし1メートルあたり0.2ミリのずれは、布や土地を測る用途には影響しません。
金属の棒から、光へ
1875年のメートル条約を受け、1889年に国際メートル原器がつくられます。白金90パーセントとイリジウム10パーセントの合金で、曲がりにくいX字形の断面をもつ棒でした。
しかし金属である以上、傷や温度の影響からは逃れられません。1960年、定義はクリプトン86という原子が出す光の波長1650763.73個分に置きかわりました。
物ではなく、自然そのものを基準にする方針への転換です。
いまの1メートルは光が進む距離
1983年に決まった現在の定義は、光が真空中を2億9979万2458分の1秒に進む距離です。国際度量衡局(BIPM)は、光の速さを毎秒299792458メートルという値に固定することでメートルを定めています。
光速はもう測る対象ではなく、決められた数値になりました。原器がパリに1本しかなかった時代と違い、いまは装置さえあれば世界のどこでも同じ1メートルをつくり出せます。
手元の30センチ定規も、たどれば1791年のフランスと、2億9979万2458分の1秒という時間につながっています。単位の由来を1つ知ると、身の回りの数字の見え方が変わります。次はマイルやヤードの由来をたどってみてください。
参考にした資料