サメには骨が1本もない?体のヒミツ
サメの体には、私たちが持っているような硬い骨が1本もありません。背骨も、あごも、頭の骨も、すべて軟骨です。
ただし「全身がぐにゃぐにゃ」というわけではありません。骨を持たないサメは、まったく別のやり方で体を支え、海に浮かんでいます。
サメは「軟骨魚類」というグループ
魚は大きく2つに分けられます。タイやマグロのように硬い骨を持つ硬骨魚類と、サメ・エイ・ギンザメが属する軟骨魚類です。
軟骨は、私たちの耳たぶや鼻の先にもある、少し弾力のある組織のこと。人間は硬い骨と軟骨を組み合わせて体を作りますが、サメは骨格のすべてを軟骨だけで組み立てています。
骨がないのは進化に取り残されたからではなく、硬骨魚とは別の道を進んだ結果です。
軟骨は、やわらかいだけではない
全身が軟骨といっても、体がふにゃふにゃなわけではありません。力のかかるあごや背骨は「テッセラ」という小さなタイル状の粒で、びっしり覆われています。
学術誌ジャーナル・オブ・アナトミーに載った2016年の研究によると、大人のサメの粒は幅75〜350マイクロメートル。髪の毛の太さと同じくらいです。
やわらかい軟骨の芯を、石灰化した硬い粒の鎧が包んでいる。しかも粒と粒のすき間は硬くならないので、そこが曲がります。硬さとしなやかさを同時に手に入れた構造です。
浮き袋がない代わりに、油づめの肝臓
硬骨魚は「浮き袋」という気体の入った袋を持ち、そこで浮き沈みを調整します。サメにはこれがありません。
代わりにサメは巨大な肝臓を持ち、そこに海水より軽い油をたっぷりため込んでいます。ハワイ州の資料によれば、外洋を泳ぐサメほど肝臓が大きく、軽い油を多く抱えているそうです。
それでもサメの体は海水よりわずかに重く、泳ぐのをやめれば沈みます。軽い軟骨と油の肝臓は、その沈む力を打ち消すための組み合わせなのです。
カルシウムは歯とウロコに回されている
サメの体からカルシウムが消えているわけではありません。骨に使わない分は、歯と皮膚に回されます。
サメの歯はベルトコンベアのように後ろから前へ送り出され、生きているあいだ何度でも生え変わります。体表を覆う「楯鱗(じゅんりん)」というウロコは、この歯とほぼ同じつくりです。
サメ肌がヤスリのようにざらつくのはそのためで、身を守るだけでなく、泳ぐときに水の抵抗を減らす働きもあります。
サメの化石が歯ばかりな理由
軟骨は骨に比べて分解されやすく、化石として残りにくい組織です。そのため大昔のサメについて見つかるのは、硬い歯ばかりになります。
歯は一生のあいだ抜け落ち続けるので数が多く、成分も硬いので地層に残るのです。骨を捨てたことは、生きるサメにとっては有利に働き、その過去を知りたい私たちにとっては不利に働いた。同じ一つの特徴が、正反対の結果を生んでいます。
サメの強さは、丈夫な骨ではなく「骨を持たない設計」から来ています。次に水族館でサメを見るときは、胸ビレを水平に張ったまま進む姿に注目してみてください。
あれは沈まないための揚力を、翼のように作り出している最中です。
参考にした資料