セミは土の中で17年?一生の大半を過ごす場所
セミの一生の大半は、土の中です。地上でにぎやかに鳴くのは数週間で、その手前に何年もの幼虫時代があります。
ただし「17年」という数字は、日本のセミの話ではありません。アメリカ東部にすむ、特別なセミの周期です。
17年ゼミは北アメリカのセミ
京都大学の説明によると、アメリカ東部に生息する周期ゼミ(素数ゼミ)は、17年または13年という厳密に決まった幼虫期を持ちます。この仲間がすむのはアメリカ東部で、日本にはいません。
日本の林で鳴くアブラゼミやクマゼミは、まったく別のグループです。「セミは17年間も土の中にいる」とひとまとめに言うと、この違いが消えてしまいます。
日本のセミは種によって数年
では日本のセミはどうでしょうか。産業技術総合研究所(産総研)の記事で、研究者は幼虫期間について「7年と決まっているわけじゃなくて2、3年のものから7、8年とかもっと長いものが混じっている」と説明しています。
同じ種類でも、育つ場所の栄養状態で年数は変わります。よく聞く「セミの一生は七年七日」という言い方は、裏づけのはっきりしない俗説です。
なぜ何年もかかるのか
理由は食べ物にあります。セミの幼虫は木の根に口を差し込み、道管を流れる液を吸って育ちます。
道管液はほとんどが水で、栄養分はごくわずかです。産総研によると、セミは腹部に共生器官という特別な組織を持ち、そこで飼っている微生物が、道管液に微量に含まれるアミノ酸を不足した栄養素に作りかえています。
それでも体を大きくするには時間がかかり、地中の年月が長くなるのです。
17年をどうやって数えているのか
周期ゼミが年数をどう数えているかは、長いあいだ謎でした。有力なのが「4年ゲート仮説」です。
終齢幼虫が羽化を決めるのは4の倍数の年で、その年に一定の体重(臨界体重)を超えていれば変態が決まり、越冬した翌年の春に地上へ出るという考えです。曽田貞滋・京都大学名誉教授らの研究チームは、11歳から17歳までの幼虫を野外で調べ、秋までに16歳のほぼ全個体と、12歳のうち体重の重い一部の個体で変態が決まっていることを確かめました。
成果は2025年8月27日、英国王立協会の学術誌に掲載されています。
成虫は一週間では死なない
「セミの成虫は一週間の命」という話も、正確ではありません。国立国会図書館のレファレンス協同データベースがまとめた回答では、屋外の調査でオスが約17日、メスが約30日生きた例が紹介されています。
網をかけた飼育下では30日以上の記録もあります。児童書に「1〜2週間」と書かれることが多いのは、条件のちがいによるものです。
地上に出たセミには、鳴いて相手を探し、卵を産むだけの時間があります。
次にセミの声を聞いたら、その一匹が地面の下で過ごした数年を思い浮かべてみてください。17年は北アメリカのセミの数字、日本のセミは数年。
そう区別できるだけで、夏の鳴き声の聞こえ方が変わります。
参考にした資料