雑学

死を明るく祝う?メキシコの死者の日

2026年7月 · 読了3分
死を明るく祝う?メキシコの死者の日

死者の日は、亡くなった家族を悲しみではなく笑顔で迎えるメキシコの行事です。11月1日と2日、各家庭には祭壇が組まれ、オレンジ色の花と砂糖菓子の骸骨が並びます。

町にも陽気な骸骨の飾りがあふれます。なぜ死をこれほど明るく迎えるのか、順に見ていきます。

1日は子ども、2日は大人

死者の日の中心は11月1日と2日です。メキシコ政府(INAFED)の解説では、1日は「小さな死者」と呼ばれる子どもの魂を、2日は大人の魂を迎える日とされています。

この2日はカトリックの諸聖人の日と死者の日にあたり、日付はここから来ています。多くの家庭は10月31日ごろから支度を始め、数日がかりで祭壇をととのえます。

地域差も大きく、ユカタン半島ではマヤの言葉で「魂の食事」を意味するハナル・ピシャンの名で呼ばれます。

祭壇に並ぶもの

祭壇はオフレンダと呼ばれます。故人の写真、ろうそく、水、切り絵の飾り(パペル・ピカド)、砂糖でできた骸骨、そして「死者のパン」と呼ばれる菓子パンが定番です。

生前に好きだった料理やモレを供える家庭も多くあります。水は長い旅で渇いた魂のため、ろうそくは帰り道を照らすため。

飾りの一つひとつに役割が決まっていて、ただの装飾ではありません。

マリーゴールドが道しるべになる

いちばん目を引くのが、センパスチルと呼ばれるオレンジ色のマリーゴールドです。メキシコ原産のこの花は、強い香りと鮮やかな色で魂を家まで導くと信じられてきました。

そのため花びらは飾るだけでなく、玄関から祭壇まで、あるいは墓地から家までまいて道を作ります。祭壇や墓地が一面オレンジ色に染まるのは、この花のためです。

骸骨が笑っている理由

骸骨の飾りには、もとになった一枚の版画があります。ホセ・グアダルーペ・ポサダが1910年代に発表した「ラ・カラベラ・ガルバンセラ」です。

ヨーロッパ風の大きな帽子をかぶった骸骨の女性で、先住民の出自を隠して着飾る人々や、当時の特権階級への風刺でした。1947年にディエゴ・リベラが壁画へ描いたことで「カトリーナ」の名が定着します。

着飾っても骨は骨、死は誰にも平等に訪れる。その皮肉が、笑う骸骨の出発点です。

この行事の主役は涙ではありません。悲しむのではなく、故人と過ごした時間を明るく思い出す日です。

骸骨の飾りには愉快な表情が描かれ、墓地でも家族が食事をしながら語り合います。

古代からそのまま続く祭りではない

「何千年も前から変わらず続く先住民の祭り」と語られることがありますが、これは俗説です。メキシコ政府の説明では、メシカ(アステカ)やミシュテカ、サポテカなど先住民が死者を敬う習慣を、スペインから入ったカトリックの暦に移し替え、形を変えながら今の姿になったとされています。

ユネスコも2003年に宣言、2008年に無形文化遺産の一覧へ記載し、先住民の信仰とヨーロッパの世界観という二つの世界が溶け合った行事だと説明しています。トウモロコシの収穫が終わる時期と重なることも、記載理由に挙げられています。

死者の日は、死を忘れないための仕組みでもあります。名前を呼び、好物を供え、写真を飾る。

今年の11月、身近な誰かの好きだった食べ物を一つ思い出してみてください。この行事が何を守ってきたのかが、少し近く感じられるはずです。

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