ストローが水で曲がって見えるのはなぜ?光の屈折
水に差したストローが折れて見えるのは、光が水と空気の境目で進む向きを変える「屈折」が原因です。光は水に入ると速さが落ち、その分だけ進む道すじが曲がります。
曲がって届いた光を、目はまっすぐ来たものとして受け取ります。そのため、水の中の部分が実際より浮き上がった位置に見え、ストローが水面で折れたように見えます。この記事では、光が曲がる理由・曲がり方の決まり・液体による違い・家で確かめる方法を順に説明します。
光は水の中では遅くなる
光の速さは、どこでも同じではありません。真空中では秒速およそ30万キロですが、水の中では秒速およそ22.5万キロまで落ちます。
真空中の光の速さを、物質の中での速さで割った値が屈折率です。水はおよそ1.33なので、水の中の光は真空中の約4分の3の速さで進みます。
斜めに入った光は、先に水に触れた側から順に遅くなります。行進する列の右端だけが急に歩幅を狭めると、列全体の向きが変わる。それと同じ理屈で、光は境目で進む向きを変えます。
反対に、光がまっすぐ垂直に水面へ入るときは、列の全員が同時に遅くなるので向きは変わりません。屈折で向きが変わるのは、光が斜めに境目を通るときだけです。
曲がり方には決まった比がある
曲がる角度は、でたらめではありません。オランダの数学者ヴィレブロルト・スネルが1621年に、入射角と屈折角のあいだにいつも一定の比が成り立つことを見つけました。
水の場合、その比はおよそ4対3、ガラスではおよそ3対2です。ストローの傾きを変えても、この比は変わりません。
空気から水へ入る光は境目に立てた垂線に近づく向きに、水から空気へ出る光は垂線から離れる向きに曲がります。
今の言い方では「入射角の正弦(サイン)と屈折角の正弦の比が、屈折率の比に等しい」となります。水で計算すると、垂線から30度で入った光は約22度に曲がります。45度なら約32度、60度なら約40.5度です。斜めに入るほど、曲がる角度の差が大きくなります。
スネル自身は、この法則を記録に残しただけで発表しませんでした。スネルは三角測量で遠く離れた町の距離を測ったことでも知られる学者で、1626年に亡くなっています。法則が広く知られるようになったのは70年近く後、オランダの科学者クリスティアーン・ホイヘンスが著書で紹介してからです。イギリスの天文学者トーマス・ハリオットもスネルより先に同じ法則に気づいていましたが、やはり発表しなかったため埋もれてしまいました。
折れて見せているのは目のほう
ここまでは光の話で、まだストローは折れません。折れて見せているのは、私たちの目と脳です。
人の目には、光はまっすぐ進んでくるという前提が組み込まれています。そのため、水面で曲がって届いた光を、曲がる前の方向へまっすぐさかのぼって位置を判断します。
ストローの水中部分から出た光は、水面を出るときに垂線から離れる向きに曲がります。目はその光を延長した先にストローがあると判断するので、水中部分は実際より浅い位置にあるように見えます。空気中の部分は曲がらずに届くため、ちょうど水面のところで段差ができるのです。
物質ごとの屈折率
屈折率は物質ごとに決まっていて、値が大きいほど光は遅くなり、境目で強く曲がります。身近な物質の値を並べると次のとおりです。
| 物質 | 屈折率 | 光の速さ(秒速) |
|---|---|---|
| 空気 | 約1.0003 | 約30万km |
| 氷 | 1.31 | 約22.9万km |
| 水(20℃) | 1.333 | 約22.5万km |
| エタノール | 1.361 | 約22.0万km |
| 植物油(サラダ油など) | 約1.47 | 約20.4万km |
| アクリル樹脂 | 約1.49 | 約20.1万km |
| クラウンガラス | 1.50〜1.54 | 約19.5万〜20.0万km |
| ダイヤモンド | 2.417 | 約12.4万km |
ストローが折れて見える強さを決めるのは、境目をはさむ2つの物質の屈折率の差です。空気と水の差より、空気とサラダ油の差のほうが大きいので、油に差したストローはより強く折れて見えます。
逆に、植物油とガラスやアクリルはほぼ同じ値です。この組み合わせでは境目で光がほとんど曲がらず、反射も起きにくくなります。
プールの底が浅く見えるのも同じ理由
真上から水中をのぞくと、物は実際の深さのおよそ4分の3の位置に浮き上がって見えます。4分の3は、水の屈折率1.33の逆数です。水深1メートルなら、底は75センチほどのところにあるように見えます。
川の石に手を伸ばしても届かない、魚が思ったより手前にいるように見える。これらはすべて同じ屈折で説明できます。斜めから見るほど浮き上がり方は大きくなるので、水辺で深さを目で測ると、実際より浅く見積もってしまいます。
水の中から外を見るときにも屈折が効きます。水から空気へ出る光は、境目に対する角度が一定より浅くなると外へ出られず、すべて水中へ跳ね返ります。これを全反射といい、水では垂線から約49度より傾いた光で起こります。プールにもぐって見上げると、水面の一部が鏡のように光って見えるのはこのためです。
色によって曲がり方が少し違う
屈折率は、同じ物質でも光の色(波長)によってわずかに変わります。目に見える光の範囲では、波長の短い青や紫のほうが屈折率が大きく、赤より強く曲がります。この性質を分散といいます。
表の数値の多くが「波長589ナノメートル」という黄色い光で測られているのはこのためで、色を決めないと値が1つに定まりません。プリズムに白い光を通すと虹色に分かれるのも、雨上がりの虹も、この分散によるものです。
水の場合、色による屈折率の差はごく小さいため、コップのストローが色づいて見えることはふつうありません。雨粒の中で光は曲がり、奥で反射して、また曲がって出てきます。そのあいだに色ごとの角度の差が積み重なり、虹として見えるようになります。
家で確かめる3つの実験
ニコンや大阪科学技術センターが子ども向けに紹介している実験は、台所にある物だけでできます。
1つめは、ストローの見比べです。透明なコップを3つ用意し、空・水入り・サラダ油入りのコップにストローを差します。空のコップでは折れず、水では折れ、サラダ油ではさらに強く折れて見えます。
2つめは、十円玉です。水を入れたコップと空のコップに十円玉を沈めて、見え方を比べます。水に入れた十円玉は形が変わって見え、サラダ油に入れるとさらに大きく変わります。
3つめは、コップが消える実験です。大きなコップの中に小さなガラスのコップを入れ、静かにサラダ油を注ぎます。油とガラスの屈折率がほぼ同じなので、光が境目でほとんど曲がらず、中のコップが見えなくなります。水で同じことをしても、コップは見えたままです。
よくある疑問
- 屈折と反射は何が違うのですか?
- 反射は光が境目で跳ね返る現象で、屈折は光が境目を通り抜けながら向きを変える現象です。水面では両方が同時に起きていて、水面に景色が映るのが反射、水中のストローが折れて見えるのが屈折です。
- コップを真横から見るとストローがずれて見えるのはなぜですか?
- 丸いコップに入った水は、横から見ると凸レンズのようにはたらくからです。水の円柱で光が曲げられ、ストローが太く見えたり、水面より上の部分と横にずれて見えたりします。水面で起きる屈折とは別に、コップの丸い側面での屈折が加わっています。
- 光の屈折はほかにどこで見られますか?
- 眼鏡やカメラ、顕微鏡のレンズは、屈折を利用して光を集めたり広げたりしています。虹も、雨粒の中で光が屈折し、色ごとに曲がり方が少しずつ違うことで生まれます。プールや川の底が浅く見えるのも屈折です。
まとめ
ストローが折れて見えるのは、光が水の中で遅くなって境目で曲がることと、目が光をまっすぐ来たものとして受け取ることが重なった結果です。曲がり方にはスネルが1621年に見つけた一定の比があり、折れ方の強さは2つの物質の屈折率の差で決まります。水ならおよそ4分の3の深さに浮き上がって見えます。コップを3つとサラダ油を用意して、空・水・油でストローの折れ方を見比べてみてください。
参考にした資料