テントウムシはどうやって身を守っているのか
テントウムシの守りは、苦い体液と目立つ赤色の二段構えです。指でつまむと、脚の関節から黄色い液がにじみ出てきます。
これは特別に用意された毒液ではなく、人でいう血液にあたる体液そのものです。鮮やかな赤い色は、その体液のまずさを敵に思い出させる看板として働いています。
脚の関節からにじむ黄色い液
テントウムシは強い刺激を受けると、脚の関節から黄色い液をにじませます。この反応は反射出血と呼ばれます。
出てくるのは分泌物ではなく、体の中を流れている体液です。この体液には強い異臭と苦味があり、口に入れた鳥やカマキリは思わず放してしまいます。
テントウムシの仲間の体液からは50種類以上のアルカロイドが確認されており、ナナホシテントウからはコクシネリンという成分が見つかっています。体液を出すのは成虫だけではありません。
幼虫も同じ方法で身を守ります。さらに強い刺激を受けると、脚を縮めて動かなくなる擬死、いわゆる死んだふりもします。
赤い色は「まずい」を知らせる看板
鮮やかな赤と黒の模様は警戒色と呼ばれます。目立つことそのものが防御になっています。
一度まずい思いをした鳥は、その色と味を結びつけて覚え、次からは手を出しません。テントウムシは飛ぶのが特別に速いわけでも、硬い殻で身を固めているわけでもありません。
それでも昼間の葉の上を堂々と歩けるのは、この看板が先に効いているからです。
効かない相手もいる
この守りは万能ではありません。テントウムシにはクモやカマキリ、寄生する菌類といった天敵がいます。
カリフォルニア大学の研究者は、家の中にすむユウレイグモがテントウムシを平気で食べてしまう場面を報告しました。研究者はこのクモの味の好みが違うのだろうと述べています。
苦味を嫌わない相手には、化学的な防御はそのまま通用しません。警戒色にしても、色を見て学習する鳥のような相手にこそ効く仕組みです。
星の数でわかるのは年齢ではなく種類
星の数で年齢がわかるという話を聞くことがありますが、根拠のない俗説です。斑紋は種ごとの特徴で、成虫になった時点で決まっています。
日本には約180種のテントウムシがいて、その半数以上は体長5ミリに届きません。和名の「天道虫」も、模様ではなく行動に由来します。
枝の先まで登りつめると空へ飛び立つ姿が、お天道様へ向かっていくように見えたからです。
同じ種類でも模様が違うナミテントウ
種類が決まれば模様まで一通りに決まる、というわけでもありません。ナミテントウは、黒地に赤い紋が二つのものから赤地に黒い紋が並ぶものまで、同じ種でありながら200以上の斑紋が知られています。
基礎生物学研究所などの研究チームは2018年、この違いを生み出しているのがパニアという一つの遺伝子であることを突き止め、Nature Communications誌に発表しました。一つの遺伝子の働き方の差が、これだけの多様さを作っていたのです。
テントウムシは戦う道具を持たないかわりに、まずさを覚えさせて敵を遠ざけています。庭で見つけたら、つまみ上げる前に葉の上を歩く姿をしばらく眺めてみてください。脅かさなければ、黄色い液が出ることもありません。
参考にした資料