ウミガメの性別は砂の温度で決まるって本当?
ウミガメの性別は、卵が砂の中で育つときの温度で決まります。染色体ではなく、砂の温度が決め手です。
分かれ目はおよそ29度で、それより高いとメス、低いとオスになります。生まれる前の砂浜が、そのまま性別を決めているのです。
決めているのは染色体ではない
人の性別は、受精した瞬間に染色体の組み合わせで決まります。ウミガメは違います。
産み落とされた時点では、その卵がオスになるかメスになるかはまだ決まっていません。砂の中で温められている間に、体の中の器官が精巣になるか卵巣になるかが分かれていきます。
この仕組みを温度依存型性決定と呼びます。ウミガメだけの特殊な話ではなく、ほとんどのカメやワニのなかまも同じ方式です。
温度によってはたらき方が変わる遺伝子がいくつも見つかっており、その差が精巣か卵巣かを分けていると考えられています。
分かれ目はおよそ29度
オスとメスがちょうど半分ずつになる温度をピボット温度と呼び、多くのウミガメでおよそ29度です。27.7度を下回る巣はほぼすべてオス、31度を超える巣はほぼすべてメスになります。
幅にすると、わずか3度ほどしかありません。同じ砂浜でも、日かげに掘られた巣と日なたの巣では結果が変わります。
砂の色が黒っぽいか白っぽいか、雨が降ったかどうかでも温度は動きます。ひとつの巣の中でも中心と外側で温度差があるため、同じ巣からオスとメスが混ざって生まれることも珍しくありません。
効くのは「まん中の3分の1」だけ
卵がかえるまでの期間は45日から70日ほどです。性別が決まるのは、その全期間ではありません。
まん中の3分の1にあたる時期だけです。この時期に生殖腺がつくられ、温度に応じて体内のはたらきが変わります。
裏を返せば、産みたてのころや、かえる直前にどれだけ暑い日が続いても、性別そのものは変わりません。巣の温度を測って性別を推定するときも、この中間期の平均が目安になります。
気づかれたのは1966年
この仕組みが知られるようになったのは、そう昔のことではありません。1966年、シャルニエ(M. Charnier)がアフリカのトカゲ、アガマの卵を育てる適温を調べていて、温度によって生まれる性別が偏ることに気づきました。
カメで確かめたのはフランスのピュー(C. Pieau)です。1970年代にリクガメやヌマガメの卵を温度を変えて育て、高い温度ではメス、低い温度ではオスが増えることを示しました。
長い間、性別は生まれる前から決まっているものと信じられてきたので、これは常識をくつがえす報告でした。
温暖化でメスばかりになる砂浜
この仕組みが今、保護の現場で問題になっています。オーストラリアのグレートバリアリーフ北部の砂浜で生まれたアオウミガメを調べたところ、若い個体の99%以上がメスでした。
2018年に発表された調査結果です。同じ海でも、砂が涼しい南部の砂浜生まれのグループはメスが65〜69%で、ここまでの偏りはありません。
メスが増えれば、生まれる卵の数は一時的に増えます。問題はその先です。
オスが足りなくなれば受精しない卵が増え、群れそのものが続かなくなります。
ウミガメは大人になると、自分が生まれた砂浜に戻って産卵します。海岸ごとに違う地磁気を手がかりに、生まれた場所を覚えているという研究があります。
夏の砂浜で立入禁止のロープや、夜間の消灯のお願いを見かけることがあります。あれは巣の温度と光を守るための線です。
次に見かけたら、砂の下でこれから性別が決まる卵のことを思い出してみてください。
参考にした資料