現地の人が雷とどろく水煙と呼ぶ、ビクトリアの滝
ビクトリアの滝の本当の名前は、モシ・オ・トゥニャといいます。現地の言葉で「雷鳴とどろく水煙」という意味です。
アフリカ南部を流れるザンベジ川にあり、落ちた水が生む水煙は最大で約500メートルの高さまで立ち上ります。その白い柱は、50キロ離れた場所からでも見えます。
雷鳴とどろく水煙
モシ・オ・トゥニャは、ザンビア側で話されるロジ語の呼び名です。ザンベジ川の流域に暮らすトンガの人々は、シュング・ナムティティマ(沸き立つ水)とも呼んできました。
どちらも、遠くから見える白い水煙と、地面に響く落水の音を言い当てた名前です。滝を目にする前に、音と煙で場所が分かる。それがこの呼び名の意味です。
高さ108メートル、幅1708メートル
滝の落差は、いちばん深いところで108メートルあります。幅は1708メートルで、これはザンベジ川の川幅がまるごと落ちているということです。
ただし世界一高い滝でも、世界一幅が広い滝でもありません。それでも「世界最大の落水のカーテン」と呼ばれるのは、高さと幅を掛け合わせた水の面積が世界一だからです。
1本の細い裂け目に、大河が横一列で落ちていきます。
水煙は最大で約500メートルの高さまで立ち上り、50キロ先からでも見えます。滝つぼの周りには、この水煙が降り続けることでできた「しぶきの森」が広がっています。
雨がほとんど降らない乾季でも、この一帯だけは霧雨のような環境が保たれます。
季節で水の量が10倍変わる
ビクトリアの滝は、いつ行っても同じ姿ではありません。ザンベジ川の流量は4月ごろに最大となり、最も少ない11月ごろにはその10分の1程度まで減ります。
年間の平均流量は毎秒およそ1088立方メートルです。水が多い時期は水煙が濃すぎて滝そのものが見えにくく、水が少ない時期は黒い岩肌がむき出しになります。
写真で見る姿が人によって違うのは、この差のせいです。
なぜ峡谷がジグザグなのか
滝の下流は、上から見るとジグザグに折れ曲がった峡谷が続いています。この一帯は、約2億年前のジュラ紀にできた玄武岩の台地です。
玄武岩には縦横に割れ目が走っていて、水は硬い岩ではなく、その弱い割れ目を選んで削っていきます。削れた場所が新しい滝になり、古い滝は峡谷として残ります。
下流に並ぶ8本の峡谷は、かつてビクトリアの滝があった場所そのものです。滝は今も少しずつ上流へ後退しています。
名づけたのはリビングストン
ヨーロッパ人として初めてこの滝を見たのは、探検家デビッド・リビングストンです。1855年11月16日のことで、彼は当時のイギリス女王ビクトリアにちなんで「ビクトリアの滝」と名づけました。
1989年には、ザンビアとジンバブエにまたがる世界遺産に登録されています。その登録名は「モシ・オ・トゥニャ/ビクトリアの滝」。現地名と英語名が、並んで正式名称になっています。
次にこの滝の写真を見るときは、落ちる水そのものより、上に立ち上る白い煙のほうを探してみてください。名前の由来が、そこに写っています。
参考にした資料