血を吸う蚊は、実はメスだけだと知っていますか
血を吸う蚊がメスだけ、というのは事実です。ただし「オスは花の蜜、メスは血」という覚え方は正確ではありません。
メスも普段は花の蜜や果汁から糖分をとって飛んでいます。血が必要になるのは、卵を産むときだけです。
オスは一生血を吸わない
アメリカ蚊防除協会(AMCA)は「オスの蚊は刺さず、花の蜜などの糖分を餌にする」と説明しています。理由は単純で、オスは卵を産まないからです。
吸血は繁殖のための作業であり、オスにはその仕事がありません。一方でメスも、日々のエネルギー源は植物の糖分です。
オスとメスで主食が違うのではなく、メスにだけ「産卵前の特別食」が加わる、と考えると正確になります。
血は、卵そのものの材料になる
メスが血を求めるのは、卵をつくる材料が花の蜜では足りないからです。糖分は飛ぶためのエネルギーにはなりますが、卵の中身をつくるタンパク質にはなりません。血は栄養ドリンクではなく、卵の材料なのです。
一度の吸血で最大250個
血を吸えた量は、そのまま産卵数に響きます。米国国立衛生研究所(NIH)が公開する専門書によれば、メスは1回の産卵で最大250個ほどの卵を産みます。
産みつける先は水面や水辺で、幼虫のボウフラは水の中でしか育ちません。家のまわりの植木鉢の受け皿や古タイヤの水たまりが問題になるのは、このためです。
ただし、水場から遠ければ安心とも限りません。AMCAによると、イエカの仲間は飛ぶ力が弱いものの、3キロほど移動した記録があります。
ヤブカの仲間はさらに強い飛翔力を持ち、発生源から何キロも離れた場所で見つかります。ちなみに熱帯地域でも、成虫が1か月を超えて生きることはめったにありません。
刺されてすぐ気づかない理由
メスの口は、単なる細い針ではありません。刃のような大顎、のこぎり状の小顎、唾液を送る管と血を吸い上げる管が束になった、精密な道具です。
刺すと同時に唾液が注ぎ込まれ、NIHの資料ではこの唾液に100種類を超えるタンパク質が含まれるとされています。働きは、血が固まるのを防ぐこと、血管を広げること、炎症を抑えることです。
あとから出るかゆみや腫れは、傷そのものではなく、残された唾液のタンパク質に体の免疫が反応した結果です。かゆくなるころには、蚊はとっくに飛び去っています。
血を吸わない蚊もいる
例外もあります。オオカ属(Toxorhynchites)という大型の蚊は、オスもメスも一生血を吸いません。
花の蜜や樹液などの糖分だけで卵まで産みます。蚊は世界に3500種以上おり、南極を除くほぼすべての大陸にいますが、人を刺して病気を運ぶのはそのごく一部です。
花を訪れる際に花粉を運ぶ蚊もいて、「蚊=血を吸う虫」という印象は、身近な数種類がつくったものだといえます。
次に刺されたときは、相手が産卵をひかえたメスだと分かります。刺される数を減らしたいなら、まず家のまわりにたまった水を捨てるところから始めてみてください。
参考にした資料