氷に塩をかけるとなぜ冷える?温度のふしぎ
氷に塩をふりかけると、温度は0度で止まらず、マイナス20度近くまで下がります。塩が氷の溶ける温度を引き下げ、氷が溶けるときにまわりから熱を奪うからです。
冷やしているのは塩そのものではなく、「溶ける」という現象のほうです。この仕組みは、手作りアイスから冬の道路まで使われています。
塩が入ると氷は0度で溶けきらない
水は0度で凍り、氷は0度で溶けます。ところが水に何かが溶けていると、この境目の温度が下がります。
これを凝固点降下(ぎょうこてんこうか)といいます。氷の表面では、水分子が氷にくっつく動きと、氷からはがれる動きがつり合っています。
水に塩のイオンが混ざると、くっつこうとする水分子が減り、つり合いが「はがれる」側に傾きます。つり合いを取り戻すには、温度を下げるしかありません。
下がる幅は溶けている粒子の数で決まり、水1キログラムに1モルの粒子が溶けると約1.86度下がります。食塩はナトリウムイオンと塩化物イオンの2つに分かれるので、砂糖のように分かれない物質にくらべて、同じ量でおよそ2倍効きます。
冷やしているのは「溶ける」瞬間
氷が水に変わるには熱が要ります。1グラムの氷を溶かすのに必要な熱は約334ジュール。
同じ1グラムの水を1度あたためる熱の、およそ80倍です。塩をかけられた氷はマイナスの温度でも溶け続けるので、この大きな熱をまわりからひたすら奪い続けます。
奪われた側、つまり氷と塩の混ざった部分やそのまわりが、どんどん冷たくなるのです。
下がる限界はマイナス21度
では塩をたくさん入れるほど冷えるかというと、そうではありません。食塩水の濃さが約23パーセントに達したところで温度は下限に届き、それがおよそマイナス21度です。
この点を共晶点(きょうしょうてん)と呼びます。ここを越えて塩を足しても、溶け残るだけで温度は下がりません。
もっと低い温度が必要な場面では、食塩ではなく塩化カルシウムが使われます。
冷凍庫がなくてもアイスができる
家庭用の冷凍庫はおよそマイナス18度です。氷と塩を混ぜた寒剤(かんざい)はそれより低い温度を作れるので、材料を入れた袋や容器をその中で振り続ければ、アイスクリームが固まります。
氷だけでは0度どまりで、砂糖や乳脂肪をふくむアイスの材料は凍り始めません。塩を加えて初めて、必要な冷たさが手に入るわけです。
氷と塩を使うアイス作りは、凝固点降下を学ぶ実験として大学の化学教育でも使われていて、塩の濃さを変えると固まる速さが変わるところまで観察できます。
冬の道路にまく塩も同じ理屈
凍結防止剤として道路にまく塩も、氷の溶ける温度を下げて凍りにくくしています。ただし万能ではありません。
路面がマイナス9度あたりを下回ると溶かせる氷の量は急に減り、マイナス18度より低いとほとんど溶けなくなります。しかも決め手になるのは気温ではなく路面の温度で、路面は気温より数度低いことがあります。
寒さのきびしい地域で食塩があまり使われないのは、このためです。
氷を溶かすはずの塩が氷を冷たくする——一見あべこべなこの現象は、「溶けるには熱が要る」という単純な事実の表れでした。氷と塩と温度計があれば、台所で15分ほどで確かめられます。
自由研究にするなら、塩の量を変えて何度まで下がるかを記録してみてください。
参考にした資料