科学

氷に塩をかけるとなぜ冷える?温度のふしぎ

2026年7月 · 読了3分
氷に塩をかけるとなぜ冷える?温度のふしぎ

氷に塩をふりかけると、温度は0度で止まらず、マイナス20度近くまで下がります。塩が氷の溶ける温度を引き下げ、氷が溶けるときにまわりから熱を奪うからです。

冷やしているのは塩そのものではなく、「溶ける」という現象のほうです。この仕組みは、手作りアイスから冬の道路まで使われています。

塩が入ると氷は0度で溶けきらない

水は0度で凍り、氷は0度で溶けます。ところが水に何かが溶けていると、この境目の温度が下がります。

これを凝固点降下(ぎょうこてんこうか)といいます。氷の表面では、水分子が氷にくっつく動きと、氷からはがれる動きがつり合っています。

水に塩のイオンが混ざると、くっつこうとする水分子が減り、つり合いが「はがれる」側に傾きます。つり合いを取り戻すには、温度を下げるしかありません。

下がる幅は溶けている粒子の数で決まり、水1キログラムに1モルの粒子が溶けると約1.86度下がります。食塩はナトリウムイオンと塩化物イオンの2つに分かれるので、砂糖のように分かれない物質にくらべて、同じ量でおよそ2倍効きます。

冷やしているのは「溶ける」瞬間

氷が水に変わるには熱が要ります。1グラムの氷を溶かすのに必要な熱は約334ジュール。

同じ1グラムの水を1度あたためる熱の、およそ80倍です。塩をかけられた氷はマイナスの温度でも溶け続けるので、この大きな熱をまわりからひたすら奪い続けます

奪われた側、つまり氷と塩の混ざった部分やそのまわりが、どんどん冷たくなるのです。

下がる限界はマイナス21度

では塩をたくさん入れるほど冷えるかというと、そうではありません。食塩水の濃さが約23パーセントに達したところで温度は下限に届き、それがおよそマイナス21度です。

この点を共晶点(きょうしょうてん)と呼びます。ここを越えて塩を足しても、溶け残るだけで温度は下がりません。

もっと低い温度が必要な場面では、食塩ではなく塩化カルシウムが使われます。

冷凍庫がなくてもアイスができる

家庭用の冷凍庫はおよそマイナス18度です。氷と塩を混ぜた寒剤(かんざい)はそれより低い温度を作れるので、材料を入れた袋や容器をその中で振り続ければ、アイスクリームが固まります。

氷だけでは0度どまりで、砂糖や乳脂肪をふくむアイスの材料は凍り始めません。塩を加えて初めて、必要な冷たさが手に入るわけです。

氷と塩を使うアイス作りは、凝固点降下を学ぶ実験として大学の化学教育でも使われていて、塩の濃さを変えると固まる速さが変わるところまで観察できます。

冬の道路にまく塩も同じ理屈

凍結防止剤として道路にまく塩も、氷の溶ける温度を下げて凍りにくくしています。ただし万能ではありません。

路面がマイナス9度あたりを下回ると溶かせる氷の量は急に減り、マイナス18度より低いとほとんど溶けなくなります。しかも決め手になるのは気温ではなく路面の温度で、路面は気温より数度低いことがあります。

寒さのきびしい地域で食塩があまり使われないのは、このためです。

氷を溶かすはずの塩が氷を冷たくする——一見あべこべなこの現象は、「溶けるには熱が要る」という単純な事実の表れでした。氷と塩と温度計があれば、台所で15分ほどで確かめられます。

自由研究にするなら、塩の量を変えて何度まで下がるかを記録してみてください。

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