科学

これ以上下がれない温度がある?絶対零度の話

2026年7月 · 読了3分
これ以上下がれない温度がある?絶対零度の話

温度には下限があります。マイナス273.15度、絶対零度と呼ばれる点です。

ここより低い温度は存在しません。なぜ底があるのか、そこで何が起きているのかを順に見ていきます。

温度の正体は粒の動き

温度は「熱い・冷たい」という感覚を数値にしたものではありません。物質をつくっている原子や分子が、どれだけ激しく動いているかを表す量です。

暖かい空気の中では、空気の粒が速く飛び回っています。冷やすという作業は、この動きを鈍らせることにほかなりません。

そして動きの遅さには行き止まりがあります。だから温度にも底ができるのです。

マイナス273.15度という底

絶対零度はマイナス273.15度です。この点をゼロとして数え直したものがケルビン目盛で、絶対零度が0ケルビンにあたります。マイナスのケルビン温度というものは存在しません。

限界があると最初に考えたのは、1703年のフランスの物理学者ギヨーム・アモントンです。空気の圧力が消える点として、およそマイナス240度と見積もりました。

今日の目盛の骨格をつくったのは1848年のケルビン卿(ウィリアム・トムソン)です。2019年からは、ケルビンはボルツマン定数を1.380649×10のマイナス23乗ジュール毎ケルビンと定めることで決められています。

動きが完全に止まるわけではない

「絶対零度ではすべての運動が止まる」という説明を見かけますが、これは正確ではありません。アメリカ国立標準技術研究所(NIST)は、絶対零度でも物質には零点運動と呼ばれるゆらぎが残ると説明しています。

量子力学の不確定性原理により、位置と速さを同時に完全には決められないためです。ヘリウムがふつうの圧力ではいくら冷やしても固体にならないのは、この残ったゆらぎが理由です。

消えるのは、熱として数えられる分の動きだけなのです。

近づけても、たどり着けない

絶対零度は目標にはできますが、到達はできません。熱力学第三法則が、有限の回数の操作では絶対零度に達せないことを示しています。

冷たくなるほど次の一段を下りるのが難しくなり、階段の幅がどこまでも細かくなっていくためです。研究の現場では「到達したか」ではなく「どこまで近づけたか」を競うことになります。

人類が出した記録

その記録は、想像よりずっと底に迫っています。2014年にはイタリアのCUORE実験が銅の容器を約0.006ケルビンまで冷やしました。

2015年にはマサチューセッツ工科大学がナトリウムとカリウムの分子を500ナノケルビンまで下げ、2018年にはドイツのブレーメン大学の実験が38ピコケルビン、つまり1兆分の38ケルビンを記録しています。自然界に目を向けると、宇宙を満たすマイクロ波背景放射の温度はNASAのCOBE衛星の観測で2.725ケルビン、ブーメラン星雲は約1ケルビンで、これが宇宙で最も冷たい場所として知られています。

冬の朝のマイナス10度も、絶対零度から数えれば263ケルビンです。私たちが寒いと感じている場所は、温度の底からずいぶん高いところにあります。

次に氷点下の予報を見たとき、この数字を思い出してみてください。

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