パスワードの使い回しはなぜ危ない?見直しが必要な5つの基準と、覚えられる作り方
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パスワードの使い回しが危ないのは、どこか1つのサービスから漏れただけで、同じIDとパスワードを使うほかのサービスにも入られてしまうからです。自分が気をつけていても、漏れるかどうかはサービス側の事情で決まります。
この記事では、盗まれたパスワードがどう使われるのかをまず説明します。そのうえで、今のパスワードを見直すべきかを判断する5つの基準と、覚えられる作り方・管理の方法をまとめます。
盗まれたパスワードは「リスト」にして試される
使い回しを狙う手口は「リスト型攻撃」と呼ばれます。総務省の説明では、不正に手に入れた他人のIDとパスワードを一覧表(リスト)のように使い、いろいろなサイトでログインを試す攻撃です。
たとえば、ある通販サイトから「メールアドレスとパスワードの組み合わせ」が漏れたとします。攻撃する側はその組み合わせを、SNSや別の通販サイト、メールのサービスに次々と入れてみます。同じ組み合わせを使っていれば、そこでログインが通ってしまいます。
IPA(情報処理推進機構)は、不正ログインの原因を3つに分けています。
- 単純なパスワードを推測される(意味のある単語や個人に関わる語句)
- パスワードを使い回していて、別のサービスから漏れた組み合わせで入られる
- 偽のメールやSMSから偽サイトに誘われ、自分で入力してしまう
このうち使い回しは、本人がどれだけ用心しても防げない漏えいの影響を、ほかのサービスにまで広げてしまう点がやっかいです。総務省がサイトの管理者に向けた対策集(2013年)でも、予防策の最初に「サービスごとに違うID・パスワードを設定するよう利用者に呼びかける」ことを挙げています。
どのくらい起きているか
警察庁の発表では、2025年に警察が把握した不正アクセスは7,190件でした。前の年より1,832件、約34%の増加です。
同じ年に検挙した事件のうち、他人のIDとパスワードを使ったものは399件ありました。IDやパスワードを手に入れた方法は、「パスワードの設定・管理の甘さにつけ込んだ」が84件、「フィッシングサイトから入手」が77件です。ただし、これは検挙した事件の内訳です。被害全体の割合を表す数字ではありません。
相談の現場でも増えています。IPAの相談窓口に寄せられた不正ログインの相談は、2025年7月に144件と、それまでで最も多くなりました。InstagramやFacebookに入られ、自分がログインできなくなった、という相談が目立ちます。IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」でも、個人向けの脅威に「インターネット上のサービスへの不正ログイン」が11年続けて入っています。
入られた後の被害は、IPAの資料によると次のようなものです。
- パスワードを変えられ、本人がログインできなくなる
- 登録したクレジットカードで勝手に買い物をされる
- 本人になりすましてSNSに投稿されたり、知り合いに偽メールを送られたりする
使い回していれば、これが複数のサービスで同時に起こります。
見直しが必要なパスワードの5つの基準
今のパスワードを変えるべきかは、次の5つで判断できます。1つでも当てはまれば、そのパスワードは見直しの対象です。IPAの「チョコっとプラスパスワード」と10大脅威のハンドブック、警察庁の呼びかけをもとに作りました。
| 基準 | 当てはまる例 | 危ない理由 |
|---|---|---|
| 1. ほかのサービスと同じ | 通販とSNSとメールで同じ組み合わせ | 1か所の漏えいで全部に入られる |
| 2. 個人の情報が入っている | 名前、誕生日、電話番号、IDと同じ文字 | 推測されやすい。SNSから分かることもある |
| 3. 単純な並び | 123456、qwerty、abcd | 真っ先に試される |
| 4. 短い・辞書の単語1つだけ | 8文字の英単語 | 総当たりや辞書を使った攻撃で破られやすい |
| 5. 保存場所が甘い・人に教えた | ネット上のメモアプリに書いた、家族以外に伝えた | 保存先や相手から漏れる |
やりがちなのが、末尾の数字だけ変えて「サービスごとに違うつもり」になっている例です。パスワード1とパスワード2のように規則が見えると、ほとんど同じものを使っているのと変わりません。
警察庁は、ネット上に保存するメモアプリが不正アクセスされ、そこに書いていたパスワードが盗まれたとみられる例もあると注意しています。書き留めるなら、置き場所も含めて考える必要があります。
覚えられる強いパスワードの作り方
強さを決めるのは、まず長さです。IPAは、数字と英字の大文字・小文字を組み合わせ、目安として15桁程度にすることを勧めています。記号を加えればさらに安全になります。そのうえでサービスごとに変えます。
長いパスワードをいくつも暗記するのは無理があります。公的機関が紹介している方法は、大きく3つです。
| 方法 | やり方 | 向いている人 |
|---|---|---|
| コアパスワード+識別子(IPA) | 好きなフレーズをローマ字にして一部を大文字・数字にし(例:terebiGAdaisuki06)、サービス名の略などを前後に付ける | 自分の頭で管理したい人 |
| 関係のない3つの単語(英国NCSC) | つながりのない単語を3つ並べて長くする | 短く覚えやすい形にしたい人 |
| 管理ソフトに任せる(IPA 10大脅威) | ソフトに長いパスワードを作らせて保存し、自動で入力する | サービスの数が多い人 |
IPAのコアパスワード方式では、暗記するのはコアの部分だけです。サービスごとに付ける識別子は、紙や電子ファイルに書き、コアとは別に管理します。英国のNCSC(国家サイバーセキュリティセンター)は、oを0に変えるような置き換えは効き目が小さく、覚えにくくなるだけだとしています。家族やペットの名前、好きなチームのような、SNSから分かる言葉も避けます。
選ぶ決め手は、自分が続けられるかどうかです。登録しているサービスが10を超えるなら、管理ソフトに任せるほうが現実的です。
管理の方法を選ぶ基準
パスワードの管理は、無料の標準機能から始められます。Googleパスワードマネージャーには「パスワード チェックアップ」があります。保存したパスワードについて、漏えい・推測されやすさ・複数アカウントでの使い回しの3点を調べられます。Chromeなら「パスワードと自動入力」から開けます。ほかのブラウザでは passwords.google.com から使えます。
まずはこれで、今の状態を確かめてみてください。使い回しが見つかったら、大事なサービスから順に変えていきます。
- 標準機能で足りる人:ふだんChromeやスマホの標準機能でログインしている人
- 専用の管理ソフトが向く人:WindowsとiPhoneのように、メーカーの違う端末を行き来する人
- セキュリティソフト付属の管理機能が向く人:ウイルス対策も一緒に入れたい人
パスワードを強くしても、フィッシングで自分から入力してしまえば意味がありません。IPAは、パスキーや二段階の認証が使えるサービスでは積極的に使うこと、よく使うサイトはブックマークから開くことも勧めています。どこかのサービスから漏えいの知らせが来たら、そのサービスだけでなく、同じパスワードを使っていたほかのサービスも変えます。
パスワード管理つきのソフト
ここまでの見直しは、ソフトがなくてもできます。管理を1か所にまとめたい人向けに、パスワード管理の機能を持つ製品を3つ選びました。ソフトは対策の1つで、入れれば安全になるわけではありません。Windowsには標準でMicrosoft Defenderが入っているので、ウイルス対策だけが目的なら、まずそれが有効かを確かめてください。価格は台数・年数や時期で変わるので、リンク先の公式ストアで確かめてください。
ノートン 360 デラックス(ノートン公式ストア)。Windows・Mac・iPhone・Androidに対応し、3台まで使えます。ウイルス対策に加えて、パスワード管理・ダークウェブモニタリング・VPNが入っています。
向いている人:パソコンとスマホのウイルス対策とパスワード管理をまとめたい人。向かない人:パスワード管理だけが欲しい人(機能が多すぎます)。
注意:自動更新の有無は購入前に公式ストアで確認してください。自動更新の場合、更新時に自動で課金されます。止め方はメーカーの案内を確認してください。
公式ストア:定番のセキュリティソフト ノートン 360![]()
ZERO スーパーセキュリティ(ソースネクスト)
Windows・Mac・iPhone・Androidに対応し、3台まで使えます。パスワード管理の機能があり、ソースネクストの説明では毎年の更新料はかかりません。
向いている人:更新料を払い続けたくない人。向かない人:パスワード管理の細かい機能(対応ブラウザなど)を先に確かめたい人(商品ページに詳しい説明がありません)。
1Password 3年版(ソースネクスト)
パスワード管理の専用サービスで、Windows・Mac・Android・iPhoneで使えます。1つのマスターパスワードで全体を守るしくみです。ブラウザはChrome・Edge・Firefox・Operaが必要で、サポートは開発元のAgileBits社が行います。
向いている人:メーカーの違う端末をまたいで、パスワード管理を専用ソフトで固めたい人。向かない人:ウイルス対策も欲しい人(別に用意が必要)。
注意:3年たった後の扱いと価格は、購入前にソースネクストの商品ページで確認してください。
よくある疑問
- パスワードは定期的に変更すべきですか?
- 米国標準技術研究所(NIST)のサービス提供者向けの基準は、定期的な変更を求めないとしています。漏えいの知らせが届いた時点で変えれば十分です。それより、長くしてサービスごとに変えるほうが効きます。
- 紙のメモに書いても大丈夫ですか?
- 英国のNCSCは、安全な場所に書き留めるのは構わないとしています。IPAのコアパスワード方式でも、識別子は紙などに記録し、コアとは別に保管します。家の外に持ち歩く手帳やネット上のメモは避けます。
- 使い回しに気づいたら、全部を一度に変えるべきですか?
- 一度に変える必要はありません。IPAの資料にあるとおり、入られるとカードの不正利用やなりすましにつながります。クレジットカードを登録した通販サイトや、よく使うSNS・メールから先に変えていきます。
まとめ
パスワードの使い回しが危ないのは、どこか1つから漏れた組み合わせが、リストにして別のサービスで試されるからです。2025年の不正アクセスは7,190件で、前の年より約34%増えました。
今日のうちに、Googleのパスワード チェックアップなどで使い回しがないかを調べてみてください。見つかったら、通販サイトやメールから順に、15桁程度のサービスごとに違うパスワードへ変えていきます。
参考にした資料
- 総務省 — リスト型攻撃対策集について
- 警察庁 — 不正アクセス行為の発生状況(令和8年3月公表)
- IPA 情報処理推進機構 — 安心相談窓口だより(不正ログインの相談)
- IPA — 情報セキュリティ10大脅威 2026
- IPA — 情報セキュリティ10大脅威 2026 個人編ハンドブック
- IPA — チョコっとプラスパスワード
- IPA — 安心相談窓口だより(コアパスワード)
- IPA — 安心相談窓口だより(個人情報が漏えいしたときの対処)
- 英国 NCSC — Three random words
- NIST — SP 800-63B-4
- Google アカウント ヘルプ — 保存したパスワードを確認する(パスワード チェックアップ)