現金お断りの国がある?キャッシュレス先進国スウェーデン
スウェーデンは、世界でもっとも現金を使わない国のひとつです。中央銀行の2025年の調査では、直前の店頭の買い物を現金で払った人はわずか5%でした。
ところが2026年7月、スーパーと薬局に現金の受け取りを義務づける法律が施行されました。キャッシュレスの先頭を走った国が、現金を残す方向へかじを切っています。
現金払いは20人に1人
スウェーデン中央銀行(リクスバンク)が2025年9月から10月に実施した調査では、直前の店頭の支払いを現金で済ませた人は5%でした。2023年の10%から半減しています。
支払い手段の約92%はカードで、スマートフォンに登録したカードも含みます。売り手の側でも、調査に答えた企業の3社に1社が現金を受け取っていません。
店頭はカード、送金はSwish
スウェーデンでよく使われるもう一つの手段が、送金アプリ「Swish(スウィッシュ)」です。リクスバンクの調査では、回答者の91%が過去1か月にSwishを使っていました。
2023年の82%から増えています。ただし、店頭の支払いにSwishを使ったという人は2%どまりです。
実店舗はカード、個人間の送金やネット通販はSwish、という住み分けができています。
現金の受け取りを義務づける法律
スウェーデン議会は2026年5月28日、スーパーマーケットと薬局、そして銀行に現金の受け取りを義務づける法案を全会一致で可決しました。施行は2026年7月1日です。
強盗の危険が高い場合など、限られた例外は認められます。銀行には、全国どこでも現金を預け入れられる体制を保つ義務も課されました。
なぜ引き返したのか
理由は2つあります。1つは、デジタルに取り残される人の存在です。
議会の審議では、高齢者や障害のある人など約50万人が「デジタル排除」の状態にあり、日々の暮らしを現金に頼っていると指摘されました。もう1つは有事への備えです。
スウェーデン民間防衛・レジリエンス庁(MSB)はリクスバンクと共同で、各家庭に1週間分の買い物ができる少額紙幣を用意するよう呼びかけています。停電やシステム障害で一つの支払い手段が止まっても、食料・薬・燃料を買えるようにするためです。
日本はどのあたりか
日本のキャッシュレス化も進んでいます。経済産業省によると、2025年のキャッシュレス決済比率は、国際比較に使う従来の指標で46.3%、新しい国内指標では58.0%でした。
内訳はクレジットカードが82.7%と大半を占め、コード決済が10.2%、電子マネーが3.7%、デビットカードが3.4%です。政府は国内指標で2030年に65%、将来的に80%を目標に掲げています。
現金払いが5%のスウェーデンとは、まだ距離があります。
キャッシュレスは便利さだけの話ではありません。停電や通信障害のとき、何で払うのか。
スウェーデンの方向転換は、その問いを先に突きつけています。財布に少しだけ現金を残しておく理由は、ここにあります。
参考にした資料