1とその数でしか割れない、素数という不思議
2、3、5、7と続く数字には、1とその数自身でしか割り切れないという共通のルールがあります。これが素数です。
素数がどこまで数えても尽きないことは、紀元前300年ごろにはすでに証明されていました。それでも人は、いまだに新しい素数を探し続けています。
素数とは何か、なぜ1は入らないのか
素数とは、1より大きい整数のうち、1とその数自身でしか割り切れない数です。2、3、5、7、11と続き、100までに25個あります。
偶数の素数は2だけ。ほかの偶数は必ず2で割れてしまうからです。
ここで気になるのが、いちばん小さい1が素数に入っていないこと。理由は「どんな整数も素数のかけ算に1通りだけ分解できる」という決まりを守るためです。
もし1が素数なら、6は2×3とも1×2×3とも1×1×2×3とも書けて、分解の仕方が無限に増えてしまいます。1を外せば、分解の形はいつでも1通りに決まります。
見つけ方は古代ギリシャ生まれ
素数を洗い出す古典的な方法が「エラトステネスの篩(ふるい)」です。古代ギリシャの科学者エラトステネスが考案したとされています。
数を順に並べ、2を残して2の倍数を消す。次に3を残して3の倍数を消す。
これを繰り返すと、消し残った数が素数の一覧になります。調べたい範囲の平方根までの素数で消せば終わるので、120までなら7の倍数を消した時点で完了です。
単純な手順ですが、いまもコンピュータで使われています。
尽きない素数
素数がどこまでも続くことは、紀元前300年ごろの数学書『原論』第9巻・命題20で示されました。証明はこう進みます。
素数が有限個だと考えて全部かけ合わせ、積に1を足す。この数はどの素数で割っても1が余るので、手持ちのどれでも割り切れません。
つまりリストの外に必ず素数があります。いくら大きな素数を見つけても、その先にはまだ素数があるのです。
最大の素数を探す競争
素数に終わりがない以上、「いちばん大きい素数」も存在しません。それでも記録の更新は続きます。
2024年10月12日に見つかった、2を136279841回かけて1を引いた数は10進法で4102万4320桁。世界中の参加者が計算を分担するGIMPSの成果で、発見者のルーク・デュラントさんは17か国のデータセンターにあるGPUを動員しました。
この形の素数はメルセンヌ素数と呼ばれ、いまだ52個しか知られていません。
暗号を支える素数
素数は、毎日の通信も守っています。2つの素数をかけ算するのは簡単でも、逆に積から元の素数を突き止めるのは、桁が増えるほど難しくなります。
インターネットで広く使われるRSA暗号は、この一方通行の性質を利用しています。国の暗号評価プロジェクトCRYPTRECによれば、2048ビット(10進で約600桁)の数を量子コンピュータで素因数分解するには、誤りのない理想的な環境でも4098量子ビットが必要です。近い将来に解かれる可能性は低い、という評価です。
まだ答えの出ていない問題
素数の並び方には、未解決の謎が残っています。3と5、11と13のように差が2の素数の組を双子素数といい、これが無限にあるかは今も証明されていません。
2013年に張益唐(チャン・イータン)さんが「差が7000万以下の素数の組は無限にある」ことを示し、その後の共同研究で上限は246まで縮みました。あと244縮めば決着しますが、そこには別の考え方が必要とされています。
素数は、小学校で習う割り算だけで説明できる数です。それでいて4102万桁という記録と、246という未解決の数字を同時に抱えています。
今日もどこかで新しい素数が探されている、と思って数字を眺めてみてください。
参考にした資料