タコは心臓が3つある?体の不思議
タコの心臓は3つあります。2つはえらに血を送る専用で、残る1つが全身へ送り出す係です。
血の色も赤ではなく青。この変わった体のつくりは、人間とはまったく違う方法で酸素を運んでいることから来ています。
2つはえら用、1つは全身用
3つの心臓には、はっきりした役割の分担があります。左右に1つずつある「えら心臓」は、酸素を使い終わった血液をえらへ押し込む係です。
えらで酸素を受け取った血液は、真ん中の「主心臓」に集まります。主心臓はそれを頭や8本の腕へ送り出します。
ポンプを2段構えにして、えらでの酸素の取り込みと、全身への配達を別々の力で担っているわけです。
血が青いのは銅のせい
人間の血が赤いのは、酸素を運ぶヘモグロビンに鉄が含まれているからです。タコが使うのは「ヘモシアニン」という別の物質で、鉄のかわりに銅を持っています。
この銅が酸素と結びつくと青くなります。つまりタコの血がいつも青いわけではありません。
酸素を手放した血液はほとんど無色で、えらで酸素を受け取ったときだけ青く色づきます。
名前がついたのは1878年
この物質を突き止めたのは、ベルギーの生理学者レオン・フレデリックです。1878年、フランス・ブルターニュ地方のロスコフにあった臨海実験所でタコを調べていた彼は、えらへ入る血とえらから出る血で色が違うことに気づきました。
分析しても鉄は見つからず、かわりに銅が出てきます。彼はこの色素を「ヘモシアニン」と名づけました。
ヘモシアニンは現在、ヘモグロビンに次いで2番目に広く使われている酸素の運び屋として知られ、多くの軟体動物や節足動物に見つかっています。
心臓が3つ必要な理由
ヘモシアニンには弱点があります。同じ量の血液で運べる酸素が、鉄を使うヘモグロビンより少ないのです。
人間のヘモグロビンは赤血球の中にぎっしり詰め込まれていますが、ヘモシアニンは血液そのものに溶けた状態で漂っています。積める量が少ないなら、そのぶん速く何度も回すしかありません。
海水にとけている酸素は空気中に比べてごくわずかです。その少ない酸素をかき集めて、獲物を追いかけたり岩の隙間に潜り込んだりする動きを支える。
心臓を3つに増やしたのは、運搬効率の低さを循環の力で補うためだと説明されています。
泳ぐと主心臓が止まる
この体には代償もあります。タコは水を吸い込んで噴き出す「ジェット推進」で泳ぎますが、このとき胴体の中の圧力が上がり、心臓へ戻る血液がせき止められてしまいます。
1987年に発表されたマダコの研究では、ジェット推進の最中に主心臓が停止することが確認されました。同じ研究は、この泳ぎ方では数メートルを超える移動が難しいと結論づけています。
歩き回っているときは血圧も血流もおよそ2倍に上がるのに、勢いよく泳いだ瞬間だけ循環が止まる。タコが海底をはうように移動することが多いのは、体のつくりから来た事情なのです。
3つの心臓、青い血、泳ぐと止まる心臓。ばらばらの雑学に見えて、すべて「銅で酸素を運ぶ」という一点でつながっています。
次にタコを見かけたら、その体の中で今どんな循環が起きているのか想像してみてください。
参考にした資料