落ちる途中で水が消える?世界一のアンヘルの滝
落ちる水の多くが、地面に届く前に霧になってしまう滝があります。南アメリカのベネズエラにあるアンヘルの滝です。
落差は979メートルで、世界でいちばん高い滝として知られています。ただし、水が消えて見えるのは蒸発のせいではありません。
落差979メートル、一気に落ちるのは807メートル
アンヘルの滝の総落差は979メートルです。そのうち、途中でどこにも触れずに一気に落ちる部分が807メートルあります。
残りは岩肌を流れ下る急な流れです。この高さが測られたのは1949年でした。
アメリカのジャーナリスト、ルース・ロバートソンが率い、ナショナルジオグラフィック協会が資金を出した調査隊が現地に入ります。測量士のペリー・ローリーが記録したのが、3212フィート、つまり979メートルという数字でした。
なぜ水が霧に変わるのか
落ちる距離が長いほど、水の柱は空気の抵抗でこまかい水滴にちぎれていきます。さらに、落ちる水そのものが下向きの気流をつくり、崖にぶつかって舞い上がります。
この乱れた空気が水滴を吹き上げるため、滝の下半分は白い霧のようになります。
ここで大事なのは、水が蒸発して消えているわけではないという点です。目に見えないほど細かい水滴に分かれ、風に散らされているだけです。
散った水は下でふたたび集まり、川になって流れていきます。乾季にあたる2月から3月ごろは水の量が減るため、滝つぼまで届く水はさらに少なくなります。
舞台はテーブルのような形の山
水が落ちるのは、アウヤンテプイと呼ばれる山の砂岩の崖です。テプイとは、頂上が平らな台地になっている山のことをいいます。
水は砂岩の地層のすき間にある空洞からわき出し、そのまま崖を落ちていきます。落ちた水はケレパ川からチュルン川、カラオ川へと合流し、最後は南アメリカの大河オリノコ川に入ります。一帯はカナイマ国立公園にふくまれています。
名前の由来は一人の飛行士
滝の名前は、アメリカ人の飛行士ジミー・エンジェルにちなみます。彼が上空からこの滝を確認したのは1933年11月16日でした。
ベネズエラ政府の地図に「サルト・デル・アンヘル」と載ったのは1939年12月です。1937年10月9日には山頂への着陸に挑みましたが、車輪が湿地にはまり、飛行機は動かなくなりました。
一行は11日かけて、なだらかな裏側の斜面を歩いて下りています。残された機体は33年後にヘリコプターでつり上げられ、今はベネズエラの空港前に展示されています。
先住民ペモンの人たちは、この滝をケレパクパイ・メルと呼んできました。
「世界一」はまだ確定していない
じつは世界一という肩書きには、議論が残っています。2016年、チェコの調査隊が南アフリカのツゲラ滝を測り、983メートルという数値を報告しました。
ツゲラ滝の公式な落差は948メートルです。新しい数値は世界の滝のデータベースに送られましたが、確認は終わっていません。
どちらが世界一の高さかは、まだ決着していないのが現状です。ただし「途切れずに一気に落ちる部分の長さ」なら、807メートルのアンヘルの滝がほぼ共通して世界一と認められています。
写真を見るときは、滝つぼではなく崖の中ほどに注目してみてください。水の筋が白くぼやけ始めるあたりが、水が霧に変わる境目です。
参考にした資料