万里の長城は宇宙から見える?よく聞く話のウソ・ホント
万里の長城が宇宙から肉眼で見える、というのは誤りです。NASAは「月からは見えず、高倍率レンズなしでは地球周回軌道からも見分けるのは難しい」と明言しています。
全長は2万キロを超えますが、幅は広い所でも6メートルほど。長いことと、見えることは別の話です。
全長は2万1196キロ
2012年6月、中国の国家文物局が初の全国調査の結果を発表しました。万里の長城の総延長は2万1196.18キロメートル。
それまで公表されていた8851.8キロの2倍以上に伸びました。数字が跳ね上がったのは、明の時代の城壁だけでなく、秦や漢の時代の遺構まで調査対象を広げたからです。
壁や塹壕などの遺構は4万3721か所で確認され、15の省・自治区・直轄市にまたがっていました。地球1周が約4万キロですから、その半分を超える長さです。
今も観光地として残る城壁の多くは14世紀以降の明の時代に築かれたもので、高さは平均7〜8メートルほどあります。
幅は6メートルほどしかない
ところが幅はごくわずかです。明の時代に築かれた区間で、土台の幅がおよそ6.5メートル、上部が約5.8メートル。
長さと幅の比は、およそ300万対1です。長いだけでは、宇宙からは見えません。
見えない本当の理由は「色」
細さだけが理由ではありません。もう一つの理由は、周囲との色の差、つまりコントラストです。
長城はその土地でとれる石や土を積んで築かれたため、周りの地面とほとんど同じ色をしています。NASAの宇宙飛行士ジェフリー・ホフマンは「壁の色は、その両側の地面とたいして変わらない」と説明しています。
都市や空港の滑走路、大きなダムが軌道から見えるのは、周囲と色や形がはっきり違うからです。
宇宙飛行士たちの証言
2003年、中国初の宇宙飛行士である楊利偉は、帰還後に長城は見えなかったと明言しました。2004年には国際宇宙ステーションのリロイ・チャオ司令官が長城らしきものを撮影しましたが、本人も何を写したのか確信が持てないと述べています。
NASAはこの写真について、高倍率レンズを使ったから写せたのだと説明しました。月から見えないことも、はっきりしています。
月面に立ったニール・アームストロングは、大陸や湖、青の上の白い斑点は見えたが、人工の建造物は見分けられなかったと語りました。ただし証言は割れています。
ジーン・サーナンやエド・ルーのように、低い軌道からなら見えたと述べる飛行士もいます。光の当たり方や天候の条件がそろえば見える場合もある、というのが実際のところです。
宇宙時代より前に生まれた話
この俗説は、人類が宇宙へ行くよりずっと前からありました。1754年、イギリスの好古家ウィリアム・ステュークリーが、長城は月から見分けられるかもしれないと手紙に書いています。
1895年にはヘンリー・ノーマンが「月から見える唯一の人工物」と記しました。決定打は1932年、人気コラム「リプリーズ・ビリーブ・イット・オア・ノット」が同じ話を紹介したことです。
誰も確かめようのない時代に生まれた話が、確かめられる時代になっても生き残ってしまったわけです。
数字の大きさと、見えやすさは別物です。次に「宇宙から見える」という話を聞いたら、長さではなく幅と色を思い出してみてください。
参考にした資料