雑学

悪魔の仮面で町を練り歩く、ボリビアの祈りの踊り

2026年7月 · 読了2分
悪魔の仮面で町を練り歩く、ボリビアの祈りの踊り

ボリビアのオルロで、悪魔の仮面をかぶった2万8千人以上が町を踊り歩きます。ディアブラーダと呼ばれるこの踊りは、大天使ミカエルが悪魔を打ち負かす物語を演じるものです。

行列が向かう先は、鉱夫を守るソカボンの聖母の聖堂。ユネスコが無形文化遺産に登録した祭りの、中心となる行事です。

4キロの道を20時間

オルロは標高およそ3700メートルの高地にある町です。カーニバルの本番は「エントラーダ」と呼ばれる入場行列で、道のりは4キロあります。

踊り手たちはこの道を、20時間途切れることなく進み続けます。ユネスコの登録資料によれば、参加するのは2万8千人を超える踊り手と1万人の楽師で、およそ50の団体に分かれています。

祭り全体がユネスコの傑作宣言を受けたのは2001年、無形文化遺産の代表一覧表に載ったのは2008年です。

なぜ悪魔が主役なのか

オルロは銀とスズを掘る鉱山町として栄えました。アンデスの人々にとって、地下は死者の神スパイが治める領域です。

鉱夫たちは坑道の奥にこの神の像を置き、「ティオ(おじさん)」と呼んで供え物をしてきました。恐ろしい姿の悪魔は、追い払うべき敵であると同時に、鉱山の富を握る相手でもあります。

悪魔が主役になったのは、そこが暮らしの現場だったからです。

禁じられても消えなかった

この踊りのもとをたどると、先住民ウル人の祭りに行き着きます。ユネスコの説明では、ウルの神ティウをたたえる「リャマ・リャマ」という踊りがディアブラーダになったとされています。

17世紀、スペインの植民地当局は先住民の儀礼を禁じました。それでも祭りは消えず、キリスト教の典礼の形を借りて続きます。

アンデスの神々を聖像の陰に置く形で生き延びたのです。2月2日の聖燭祭に合わせた行事になったのは、この経緯によります。

音楽と振り付けを定めた最初のディアブラーダの団体が生まれたのは1904年でした。

大天使ミカエルと七つの大罪

踊りは中世ヨーロッパの神秘劇の形を残しています。剣を持つ大天使ミカエルが善を、ルシファーとサタンが悪を担当します。

周りの小悪魔たちは傲慢・強欲・色欲・憤怒・暴食・嫉妬・怠惰という七つの大罪を演じ分け、どの罪かは仮面の作りで見分けられます。結末は毎年同じで、ミカエルが勝ちます。

坑道に現れた聖母の言い伝え

祭りがささげられるソカボンの聖母には、こんな話が伝わります。1756年、オルロで最も豊かな銀鉱の坑道に、聖母の絵が突然現れたというものです。

ソカボンとは坑道を指す言葉で、坑道の聖母という意味になります。ただしこれは言い伝えで、実際に何が起きたかを確かめられる記録はありません。

踊り手たちは行列の終わりにこの聖堂へ上り、踊りそのものを願いとしてささげます。カーニバルが開かれるのは、灰の水曜日の前の金曜からその水曜の昼までです。

次にオルロの映像を見る機会があれば、仮面より足元を追ってみてください。彼らが20時間かけて向かっているのは、鉱山の神と聖母が重なった一つの聖堂です。

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