災害用伝言ダイヤルは、なぜ「171」なのか
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災害用伝言ダイヤルが「171」なのは、総務省が緊急性や公共性の高い用途に限って割り当てる、三桁の「1XY番号」の1つだからです。110番や119番と同じ枠に入っていて、両隣の170と172は今も空き番号のままです。
よく聞く「い・な・い」の語呂合わせは、NTTや総務省の公式の説明には見当たりません。この記事では、171をほかの三桁番号や文字で伝言を残すサービスと並べ、何が違うのかを整理します。
171は、阪神・淡路大震災から生まれた「声の伝言板」
災害用伝言ダイヤル171は、NTT東日本とNTT西日本が運営しています。被災地の人の電話番号を住所がわりにして、そこへ音声の伝言を預けたり、預けられた伝言を聞いたりする仕組みです。NTTコミュニケーションズの資料は、これを「声の伝言板」と呼んでいます。
始まりは1995年の阪神・淡路大震災です。被災地へ安否を確かめる電話が集中し、繋がりにくくなった教訓から開発され、1998年3月に提供が始まりました。2015年8月の時点で、運用は52回、利用は録音と再生の延べで約494万件に達しています。
いつでも掛けられるサービスではありません。大きな災害で被災地への電話が混み合い、繋がりにくい状態になると、NTTが開設します。総務省によると、東日本大震災の直後には、携帯電話会社によっては平常時の約50〜60倍以上の通話が一時的に集中しました。171は、こうした状況のための窓口です。
なお、総務省は、通信会社に災害用伝言サービスを提供する法令上の義務はないと説明しています。171もweb171も、NTT東西が自主的に運用しているものです。
ほかの三桁番号と並べて比べる
三桁の番号は、電話会社が自由に決められるものではありません。総務省の「1XY番号利用指針」は、番号をA分類とB分類に分けています。A分類に入るのは、次のような用途です。
- 緊急性・公共性・安全性の観点から重要な用途
- 基本的な電気通信サービスを使ううえで、すぐに認識できる必要がある用途
- すでに三桁の統一番号として広く知られている用途
- 事業者に共通のプレフィックス(番号の頭に付ける数字)としての用途
171は、このA分類に入っています。同じ一覧から、A分類の主な番号を抜き出したのが次の表です。
| 番号 | 使い道 |
|---|---|
| 110 | 警察機関への緊急通報 |
| 117 | 時報 |
| 118 | 海上保安機関への緊急通報 |
| 119 | 消防機関への緊急通報 |
| 171 | 災害用伝言ダイヤル |
| 177 | 天気予報 |
| 188 | 消費生活相談受付 |
| 189 | 児童虐待通告・児童相談受付 |
一覧で171の前後を見ると、170と172から176までは「保留」、つまり使われていない番号です。171は、空き番号の並びの中にぽつんと置かれています。
では、なぜ171という数字になったのか。NTT東日本・西日本の公式ページにも、総務省の資料にも、番号の由来を説明した記述は見つかりませんでした。「い(1)な(7)い(1)」の語呂合わせは覚え方としては便利ですが、由来として確認できる根拠はありません。
声の171、文字のweb171、携帯の伝言板
災害用伝言サービスは171だけではありません。総務省は、固定電話・携帯電話・インターネットを使う3つのサービスをまとめて紹介しています。仕組みを並べると、違いがはっきりします。
| 災害用伝言ダイヤル(171) | 災害用伝言板(web171) | 携帯各社の災害用伝言板 | |
|---|---|---|---|
| 運営 | NTT東日本・西日本 | NTT東日本・西日本 | 携帯電話各社 |
| 伝言の形 | 音声 | 文字 | 文字(「無事です。」などの選択肢+コメント) |
| 1件の長さ | 30秒以内 | 全角100文字まで | コメントは100文字以内 |
| 1つの番号に残せる数 | 1〜20件 | 20件 | 最大10件 |
| 保存期間 | 提供期間の終了まで | 提供終了まで(最大6か月程度) | その災害での提供終了まで |
| 登録できる人 | 電話番号が分かればだれでも | 電話番号が分かればだれでも | 被災地域内の携帯電話からのみ |
171とweb171は連携していて、片方で登録した伝言をもう片方で確かめられます。web171と携帯各社の伝言板も、2012年8月30日から相互に検索できるようになりました。一方で、総務省は、171と携帯各社の伝言板は別々のサービスだと注意しています。携帯の伝言板に文字で残した内容は、171に電話しても聞けません。
携帯各社の伝言板は、登録こそ被災地域内の携帯電話に限られますが、確認は全国のパソコンなどからも行えます。利用料とパケット通信料は無料で、他社の伝言板を見るときだけパケット通信料がかかります。171のほうは、録音した伝言を自分で消すことができません。保存期間が過ぎて消去されるのを待つだけです。
web171には、事前に利用者登録をしておくと、伝言が登録されたときにメールや人工音声の電話で知らせてくれる機能もあります。総務省は、この設定はいつでも行えると案内しています。
電話が混んでいても伝言が繋がる理由
被災地への電話が繋がらないのに、171が繋がるのは、なぜか。総務省の説明では、171は全国に分散したシステムで運用されています。伝言を預かるのは、電話が混み合っている被災地ではない地域です。
web171と携帯の伝言板は、別の道を使います。混み合いやすい音声通話の回線ではなく、インターネットなどのデータ通信で伝言をやり取りします。同じ「繋がりやすい」でも、171は場所を、伝言板は回線の種類を分けているわけです。
総務省は、電話を掛ける場合も短く済ませ、不要不急の電話やかけ直しを控えるよう呼びかけています。被災地の中で、救助などの急ぎの電話を通すためです。
本番の前に練習できる日
操作の流れは、総務省とNTT東日本の説明では次のとおりです。171に掛けると音声の案内が流れ、録音なら1、再生なら2を押します。暗証番号を付ける場合は、録音が3、再生が4です。続けて、連絡を取りたい人の電話番号を市外局番から入力します。
本番に近い形で試せる「体験利用」の日もあります。NTT東日本の案内では、次の期間です。
- 毎月1日と15日の0時から24時まで
- 正月三が日(1月1日0時から1月3日24時まで)
- 防災週間(8月30日9時から9月5日17時まで)
- 防災とボランティア週間(1月15日9時から1月21日17時まで)
体験利用でも、伝言は30秒まで、1つの番号に20件までです。NTT東西の固定電話や公衆電話から掛ける場合、通話料はかかりません。携帯電話やほかの会社の電話から掛けるときの通話料は、各社に確かめる必要があります。NTTコミュニケーションズの2011年の資料によると、前年の防災週間の体験利用は全国で約29万件でした。
番号を覚えることと、家族がばらばらの場所にいるときにどう動くかを決めておくことは、別の話です。後者の考え方は、防災教育を扱った新書で詳しく論じられています。
比べて分かる171の立ち位置
110番と119番が「助けを呼ぶ番号」なら、171は「無事を残しておく番号」です。音声で30秒、1つの番号に20件まで。文字で残したいならweb171、携帯の画面で確かめたいなら各社の伝言板と、道具が分かれています。
総務省は、体験利用日に家族や職場の人と使い方を確かめ、安否確認の方法を前もって決めておくよう呼びかけています。だれの電話番号に伝言を集めるか。この1点を決めておくだけでも、171の使い方はぐっと具体的になります。
参考にした資料
- NTT東日本 — 災害用伝言ダイヤル(171)概要とご提供のしくみ
- NTT東日本 — 災害用伝言ダイヤル(171)体験利用のご案内
- NTT東日本 — 災害用伝言ダイヤル(171)伝言の録音方法
- NTT東日本 — 災害用伝言ダイヤル(171)伝言の再生方法
- 総務省 — 電気通信番号制度 1XY番号利用指針
- 総務省 — 安全・信頼性の向上 災害用伝言サービス
- NTTコミュニケーションズ — 「防災週間」における災害用伝言ダイヤル(171)の体験利用について 別紙1(2015年8月26日)
- NTTコミュニケーションズ — 「防災週間」における災害用伝言ダイヤル(171)の体験利用について 別紙1(2011年8月29日)