世界一高いビルでは日の入りの時刻がずれる?ブルジュ・ハリファ
同じ建物の中で、日の入りの時刻が変わります。舞台はドバイに立つ高さ828メートルのビル、ブルジュ・ハリファです。
上層階の住人は、地上の人より2分から3分ほど遅く太陽が沈むのを見ます。このずれは、断食月の食事の時刻を決める公式の見解にまでなりました。
高さ828メートル、2010年開業
ブルジュ・ハリファは、アラブ首長国連邦のドバイに立つ超高層ビルです。高さは828メートル。
ギネス世界記録が「世界一高い建物」として登録しています。工事が始まったのは2004年9月で、外装は2009年10月に仕上がり、2010年1月4日に開業しました。
設計はアメリカの建築設計事務所スキッドモア・オーウィングス・アンド・メリル、開発はドバイのエマール・プロパティーズです。開業から16年たった今も、この高さを超える建物はありません。
高いほど地平線が遠のく
日の入りの時刻が変わる理由は、地球が丸いことにあります。平らな土地に立つと、視線は数キロ先の地平線でさえぎられます。
ところが高い場所へ登ると、その地平線が遠くへ退きます。見わたせる範囲が広がるぶん、太陽が地平線の下に隠れるまでの時間も延びるのです。
地上の人が夕日を見送ったあとも、上層階の窓にはまだ光が残っています。
ブルジュ・ハリファでは、上層階と地上とで日の沈む時刻が2分から3分ずれます。同じ住所に立つ1つの建物の中に、少しずつ違う日没時刻が同居しているわけです。
2011年に出た公式の見解
2011年、ドバイのイスラム問題・慈善活動局がこのずれについてファトワ(宗教上の公式見解)を出しました。断食月ラマダンの断食は、日没とともに終わります。
ところがこのビルでは階によって日没の見え方が違うため、時刻が三つに分けられました。1階から79階までは街と同じ時刻。
80階から150階は2分待つ。150階より上は3分待つ。
ファトワを出したアフマド・アル・ハッダード師は、太陽が沈むのを実際に目で確かめるまで断食を終えてはならない、と説明しています。
夜明けの側では逆に早まる
ずれは夕方だけの話ではありません。高い場所ほど、朝日も早く見えます。
そのため上層階の住人は、夜明け前の食事を地上の人より早く切り上げます。日没後と夜明け前の礼拝の時刻も、同じように階ごとにずらします。
つまり上層階では、断食する時間が両側から数分ずつ長くなる計算です。
高い山でも起きている
この現象はビルに限りません。地平線までの距離は、目の高さが上がるほど伸びます。
山の頂上や飛行機の窓から見る夕日が、ふもとより長く残るのも同じ理由です。違うのは、ブルジュ・ハリファならエレベーターで上下するだけでその差を体験できる点にあります。
高さは、景色だけでなく1日の長さも少し変えていました。
たった数百メートルの高さが、暮らしの時刻表を書き換えました。夕日を長く見たい日は、いつもより少し高いところへ登ってみてください。
参考にした資料