雑学

ゴールデンゲートブリッジの色は赤ではない?

2026年7月公開 · 2026年9月更新 · 読了7分
ゴールデンゲートブリッジの色は赤ではない?

サンフランシスコのゴールデンゲートブリッジは、赤ではありません。正式な色は「インターナショナルオレンジ」。

赤みの強い、深い橙色です。この色は偶然決まったものではなく、霧の中での見えやすさと周囲の景色との調和を計算したうえで選ばれました。この記事では、色の正体と選ばれた理由、候補になったほかの色、塗装の実態、そして「金色ではないのになぜゴールデン」という疑問まで、橋の管理者の資料をもとに答えます。

正式な色は「インターナショナルオレンジ」

橋を管理するゴールデンゲート・ブリッジ・ハイウェイ&トランスポーテーション地区は、この色を印刷用の数値でも公開しています。CMYKでシアン0%、マゼンタ69%、イエロー100%、ブラック6%。

管理者によれば、既存の色見本でいちばん近いのはパントンの173番と174番、180番です。塗料は現在シャーウィン・ウィリアムズ社が橋専用の配合で作っていて、同社の市販色では「ファイアウィード(SW 6328)」が最も近い色だとされています。家の壁や模型で同じ色を再現したい人は、この番号を塗料店で伝えれば近い色を作ってもらえます。

工事現場などで使う一般的な安全色のオレンジより深く、赤に寄った色です。塗料の色ずれはASTM D2244という規格で管理されていて、開通から現在まで同じ色が保たれています。

色のきっかけは錆止めの下塗り

色を決めたのは、諮問建築家のアーヴィング・モローです。彼はイーストベイから建設現場へ通う途中、運ばれてきた鋼材に塗られた赤い錆止め塗料の色調に引き込まれました。

1935年4月6日、モローは「色彩と照明に関する報告書」を主任技師ジョセフ・B・ストラウスに提出し、灰色や黒ではなくこの橙色を採用するよう求めます。本来は下塗りにすぎなかった色が、そのまま本番の色になったわけです。

モローは色だけでなく、塔の形にも手を入れました。塔の長方形の開口部を上へ行くほど小さくして高さを強調し、歩道の手すりや斜めに立つ街灯をすっきりしたデザインにまとめています。管理者はこれをアールデコ様式と説明しています。

霧に映え、丘となじむ

モローは色を、好みの問題ではなく「橋と周囲の環境との関係」として考えました。季節ごとに色を変えるマリン半島の丘となじみ、なおかつ海と空には対比して浮かび上がること。

それを満たしたのがインターナショナルオレンジでした。陸地の暖かい色と同じ系統で、空と海の冷たい色とは反対側にある色です。

管理者は、この色には通りかかる船から橋が見えやすくなる効果もあると説明しています。濃い霧の中で見つけやすいことと、風景に溶けこむこと。相反しそうな2つを同時に満たす色でした。

ほかの候補色と海軍の案

インターナショナルオレンジは、ほかの色と比べたうえで選ばれています。モローの報告書と管理者の説明から、候補と評価を並べるとこうなります。

ゴールデンゲートブリッジの色の候補と評価(Golden Gate Bridge, Highway & Transportation District の資料をもとに作成)
候補の色評価・提案者結果
インターナショナルオレンジモローが推薦。丘となじみ、海と空には映える採用
暖かい灰色モローの比較で2番手不採用
戦艦の灰色・鋼の灰色検討されたが退けられる不採用
黒(カーボンブラック)魅力がなく、橋を実際より小さく見せる不採用
アルミ色塔の存在感が失われ、貧弱に見える不採用
黒と黄色のしまアメリカ海軍が、船からさらに見えやすくするため希望不採用

もし海軍の案が通っていたら、橋は踏切の遮断機のような黒と黄色のしま模様になっていました。海軍の狙いは、橙色よりもさらに見えやすくすることでした。それでも最終的に選ばれたのは、見えやすさと風景との調和を両方満たす橙色です。

「端から端まで塗り直し続ける」は誤り

「端まで塗り終わったらまた反対の端から塗り直し、作業は永遠に終わらない」という話が知られています。「7年に1度塗り直す」という話もあります。管理者はどちらも誤解だとしています。

実際には、塗装は毎日の維持作業として続いています。ただし端から順に塗るのではなく、点検で錆が進んでいる場所を見つけ、優先度の高い箇所から塗り直す方式です。

全面的な塗り替えは一度だけ。当初の鉛系塗料が腐食で機能を失ったため、古い塗装をはがして無機ジンクシリケートの下塗りとビニル系の上塗りに置き換える作業が始まり、完了したのは1995年でした。開始年は管理者のサイト内でも1965年と1968年の2通りの記述があります。上塗りは1990年に、大気汚染の規制に合わせてアクリル系に切り替えられました。

塗装は見た目のためだけではなく、潮風の塩分から鋼材を守るためのものです。現在は塗装工28人、塗装作業員5人、主任塗装工1人の34人に加え、錆びた鋼材や鋲を交換する鉄工16人が橋を守っています。

数字で見る橋の大きさ

色の話を離れて、橋そのものの大きさも確かめておきます。管理者の公表値では、取り付け道路を含む全長は2,737メートル、2本の塔のあいだの中央径間は1,280メートルです。

塔の高さは水面から227メートル、道路面は満潮時の水面から67メートルの高さにあります。橋を吊る2本のメインケーブルは直径約92センチで、1本に2万7,572本の鋼線が束ねられています。2本分の鋼線をつなぐと約12万9,000キロになり、地球を3周してもまだ余る長さです。

工事は1933年1月5日に始まり、1937年5月27日に一般に開放されました。橋のたもとにある公園プレシディオの公式サイトによると、開通した時点では世界で最も長く、最も高い吊り橋でした。建設費は3,500万ドルです。

同じサイトによると、開通した日には約20万人が歩いて橋を渡りました。全長を歩いて渡るには平均で約35分かかります。観光で訪れるなら、往復でおよそ70分を見ておくと安心です。

「ゴールデンゲート」は海峡の名

名前の由来も誤解されがちです。ゴールデンゲートはもともと、サンフランシスコ湾と太平洋をつなぐ海峡の呼び名でした。

1846年7月1日、陸軍大尉ジョン・C・フリーモントがこの海峡を「東洋との交易における金の門だ」と評しました。1848年6月5日に上院へ提出した地理報告書には「この門に私はクリソピュライ、すなわちゴールデンゲートという名を与えた」と記しています。ビザンティウム(今のイスタンブール)の港が「金角湾」と呼ばれたのと同じ理由だ、という説明つきでした。

カリフォルニアで金が発見されたのは1848年。命名のほうが先ですから、ゴールドラッシュとも橋の色とも関係がありません。

よくある疑問

ゴールデンゲートブリッジは何色ですか?
正式には「インターナショナルオレンジ」という、赤みの強い橙色です。管理者はCMYKでシアン0%、マゼンタ69%、イエロー100%、ブラック6%と公表しています。赤と呼ばれがちですが、管理者の呼び名はあくまでオレンジです。
名前がゴールデンなのに、なぜ金色ではないのですか?
「ゴールデンゲート」は橋ではなく、橋が架かる海峡の名前だからです。1846年にフリーモントがこの海峡を「東洋との交易の金の門」と呼んだのが始まりで、橋の完成より約90年早く名前がありました。
橋の塗装は何年に1回ですか?
決まった周期はありません。点検で錆が進んだ場所を見つけて塗り直す作業が、一年中続いています。全面的な塗り替えは、鉛系塗料を取り替えた1回だけで、1995年に終わりました。

まとめ

ゴールデンゲートブリッジの色は赤ではなく、建築家モローが1935年に選んだインターナショナルオレンジです。黒や灰色、海軍が望んだ黒と黄色のしまを退け、丘となじみ霧の中でも見える色として採用されました。名前の「ゴールデン」は1846年に名づけられた海峡の名で、金色とは関係ありません。次に写真を見るときは、背後の丘の色と橋の色を見比べてみてください。同じ暖かい系統の色であることがわかります。

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