ゴールデンゲートブリッジの色は赤ではない?
サンフランシスコのゴールデンゲートブリッジは、赤ではありません。正式な色は「インターナショナルオレンジ」。
赤みの強い、深い橙色です。この色は偶然決まったものではなく、霧の中での見えやすさと周囲の景色との調和を計算したうえで選ばれました。
正式な色は「インターナショナルオレンジ」
橋を管理するゴールデンゲート・ブリッジ・ハイウェイ&トランスポーテーション地区は、この色を印刷用の数値でも公開しています。CMYKでシアン0%、マゼンタ69%、イエロー100%、ブラック6%。
工事現場などで使う一般的な安全色のオレンジより深く、赤に寄った色です。航空宇宙の分野でも、周囲から浮き立たせたい機体や設備にこの色が使われます。
塗料の色ずれはASTM D2244という規格で管理されていて、開通から現在まで同じ色が保たれています。
色のきっかけは錆止めの下塗り
色を決めたのは、諮問建築家のアーヴィング・モローです。彼はイーストベイから建設現場へ通う途中、運ばれてきた鋼材に塗られた赤い錆止め塗料の色調に引き込まれました。
1935年4月、モローは「色彩と照明に関する報告書」を主任技師ジョセフ・B・ストラウスに提出し、灰色や黒ではなくこの橙色を採用するよう求めます。本来は下塗りにすぎなかった色が、そのまま本番の色になったわけです。
霧に映え、丘となじむ
モローは色を、好みの問題ではなく「橋と周囲の環境との関係」として考えました。季節ごとに色を変えるマリン半島の丘となじみ、なおかつ海と空には対比して浮かび上がること。
それを満たしたのがインターナショナルオレンジでした。黒は橋を実際より小さく見せ、アルミ色は塔を貧弱に見せる。
灰色は比較検討の結果、橙色に次ぐ2番手どまりでした。濃い霧の中で見つけやすいことと、風景に溶けこむこと。相反しそうな二つを同時に満たす色だったのです。
「塗り続けている」は誤り
「端まで塗り終わったらまた反対の端から塗り直し、作業は永遠に終わらない」という話が知られていますが、事実ではありません。橋の管理者は、塗装は日常的な維持作業であり、塗膜が傷んだ箇所を見つけて部分的に塗り直す方式だと説明しています。
全面的な塗り替えは一度だけ。1965年、当初の鉛系塗料が腐食で機能を失ったため、無機ジンクシリケートの下塗りとビニル系の上塗りに置き換える作業が始まり、完了したのは30年後の1995年でした。
塗装は見た目のためだけではなく、潮風の塩分から鋼材を守るためのものです。現在は塗装工28人、塗装作業員5人、主任塗装工1人の34人体制で維持されています。
「ゴールデンゲート」は海峡の名
名前の由来も誤解されがちです。ゴールデンゲートはもともと、サンフランシスコ湾と太平洋をつなぐ海峡の呼び名でした。
1846年7月1日、ジョン・C・フリーモントがこの海峡を「東洋との交易における金の門だ」と評し、1848年に議会へ提出した地理報告書に「この門に私はクリソピュライ、すなわちゴールデンゲートという名を与えた」と記しています。カリフォルニアで金が発見されたのは1848年。
命名のほうが先ですから、ゴールドラッシュとも橋の色とも関係がありません。
橋が歩行者に開放されたのは1937年5月27日です。巨大な鋼の構造物を海と丘の風景になじませるために、一人の建築家が色から考え直した結果が今も残っています。
次に写真を見るときは、背後の丘の色と橋の色を見比べてみてください。同じ系統の色であることに気づくはずです。
参考にした資料