夜に氷の城が輝く、中国ハルビンの祭りとは
氷でできた城や塔が、内側から色とりどりに光る。中国東北部のハルビンで毎年冬に開かれる氷雪祭の夜景です。
材料は街を流れる松花江の天然の氷で、多い日には1日1万立方メートルが切り出されます。ただし始まりは、公園に並べられた小さな氷の明かりでした。
川から切り出す1.6メートルの氷
採氷が始まるのは、12月初めの「大雪」の節気を過ぎたころです。このころになると松花江の氷は厚さ30センチを超え、切り出しに適した状態になります。
作業に加わるのは約1000人。長さ1.6メートル、幅0.8メートルとサイズをそろえて切り出し、多い日で1万立方メートルを会場へ運びます。
わざわざ川まで採りに行くのは、人工の氷より川の天然氷のほうが気泡が少なく、密度がそろっていて彫っても欠けにくいからです。
水がそのまま接着剤になる
氷の建物にセメントもくぎも使いません。積み上げたブロックの合わせ目に水を流すと、氷点下の空気に触れた瞬間に凍りつきます。
この水がそのまま接着剤になり、壁も階段もアーチもつながっていきます。2025年末に開幕した第27回の会場では、いちばん高い主塔ひとつに3万9000立方メートルの氷が積み上げられました。
ハルビンの厳しい寒さは、氷を守る条件であると同時に、建てるための道具でもあるのです。
夜に光るのは氷の中に照明があるから
昼間はただの半透明のかたまりに見える建物が、日が暮れると青や緑や赤に変わります。氷のブロックの内側や足元に照明を仕込んであるからです。
氷は光をよく通し、しかも内部で光が散るため、外から当てるのとは違って表面全体がぼんやりと輝きます。だから氷雪祭は夜が本番で、写真で見る鮮やかな色はすべて人が仕込んだ光です。
始まりは1963年の氷灯展
今の巨大な会場は最初からあったわけではありません。出発点は1963年、ハルビン市が市内の公園で開いた氷灯展です。
日暮れが早く停電も多かったこの街では、住民が小さなバケツに水を張って凍らせ、できた氷の殻の中にろうそくを立てて明かりにしていました。その暮らしの工夫を並べて見せたのが最初の展示で、6日間に25万人が訪れます。
当時の市の人口のおよそ10分の1でした。文化大革命で中断しますが、1985年1月5日に正式な祭りとして復活します。
2か月で消える街
会場のハルビン氷雪大世界は、2024〜25年のシーズンで100万平方メートルまで広がり、68日間の会期に約356万人が訪れました。それでも春が来れば全部溶けてなくなります。
ハルビンの冬の平均気温はおよそマイナス16.8度で、マイナス25度まで下がる日も珍しくありません。展示が開くのは12月下旬から2月下旬まで。
この街が氷の城を建てていられるのは、1年のうち2か月ほどだけです。
ハルビンの氷雪祭がすごいのは、氷の大きさよりも「溶けてなくなるものを毎年一から建て直している」ことです。写真を見るときは、氷の色ではなく合わせ目の線を探してみてください。
1.6メートルのブロックが積み重なっているのが見えてきます。
参考にした資料