雑学

子どもの名前はリストから選ぶ?デンマークの命名ルール

2026年7月公開 · 2026年9月更新 · 読了7分
子どもの名前はリストから選ぶ?デンマークの命名ルール

デンマークでは、子どものファーストネームを国が公開している承認済みリストから選びます。リストに載っている名前は5万件を超え、その中から選ぶかぎり審査はありません。

リストにない名前も、申請して認められれば使えます。認められた名前はリストに加わり、以後は誰でも自由に使えるようになります。名前を「決めさせない」制度ではなく、認められた名前を全員で共有していく制度です。届け出の期限から、実際に却下された名前、日本の決まりとの違いまでを順に見ていきます。

生後6か月までに名前を届け出る

デンマークの家族法庁(Familieretshuset)は、すべての子どもが生まれてから6か月以内にファーストネームと姓を持たなければならないと定めています。名前を決めるのは親権を持つ人です。

届け出は、行政の電子窓口borger.dkから本人確認用のMitIDを使って行います。受け付けるのは子どもが住む地域の教区で、南ユトランド地方だけは市町村が担当します。

命名の届け出に手数料はかかりません。一方で、6か月の期限を過ぎると罰金の対象になると伝えられています。

ファーストネームはいくつ付けても構いません。姓は1つだけと決まっていて、2つの姓をハイフンでつなぐ形なら認められます。名前の「数」はかなり自由なのに、名前の「種類」は管理されている。この組み合わせがデンマークの制度の特徴です。

名前は公開リストから選ぶ

家族法庁は承認済みファーストネームの一覧をウェブで公開しています。この中から選ぶかぎり、審査は必要ありません。

リストの規模は年々ふくらんでいます。デンマークの英語ニュースサイトThe Localによると、2022年の時点で承認済みの名前は合計4万7218件でした。内訳は男子名2万618件、女子名2万5316件、男女どちらでも使える名前1284件です。同じサイトは2024年に、承認済みの名前が5万件を超えたと伝えています。

公式サイトでは名前を1つずつ検索でき、男子名・女子名・男女共用で絞り込んだり、文字数や使われている文字で探したりできます。親はまずここで候補を調べ、載っていればそのまま届け出るという流れです。

リストには意外な名前も並びます。The Localの2024年の記事によると、スマイリー(Smiley)は女子名として、ヨーダ(Yoda)やガンダルフ(Gandalf)は男子名として承認済みです。10月を意味するオクトーバー(Oktober)は、男女どちらにも使えます。

リストにない名前は申請できる

ここが誤解されやすい点です。リストは決して閉じていません。

使いたい名前が載っていない場合は、承認を求めて申請します。家族法庁の公式ページには、承認された名前はリストに書き込まれて誰でも自由に使えるようになる、と明記されています。

つまり誰かが一度認めさせた名前は、それ以降は審査なしで使えます。リストは固定された名簿ではなく、申請のたびに少しずつ増えていく共有財産のような存在です。

申請の数も少なくありません。米NBCの情報番組TODAYのサイトが家族法庁のデータとして伝えたところでは、2024年に処理された名前の申請は約4500件でした。そのうち74%が承認され、12%が却下、残る14%は手続きが進まず打ち切りになっています。申請すれば、おおむね4件に3件は通る計算です。

今の制度は2006年の法改正で緩められたもので、それ以前より幅広い名前が認められるようになっています。

却下された名前と理由

審査で見られるのは、主に次の点です。実際にファーストネームとして使われている名前か。デンマークで名前として使うのに不向きでないか。不適切だったり、子どもに不利益になったりしないか。

加えて、ファーストネームは子どもの性別に合っている必要があります。姓として使われている語や、ふつうでない綴りも認められにくくなります。

TODAYが家族法庁から得た却下例を見ると、基準の中身がよくわかります。

男の子に申請されたFagerとAnkjærは、保護されている姓とまったく同じだったため却下されました。同じく男の子のRidderbaldは、ファーストネームに向かないうえ、複数の姓と言葉の形が似ているという理由です。

女の子に申請されたRuneは、デンマークではすでに男子名として承認されていたため通りませんでした。男の子のPotteは、幼児用のおまるを指す語に近いことから不向きとされています。

性別の決まりと、姓との区別の決まりが、実際の審査でしっかり効いていることがわかります。

ネット上で「デンマークで禁止された名前」としてよく挙がるAnus、Pluto、Monkeyは、2004年に研究者がニューヨーク・タイムズに語った古い例です。家族法庁がAnus、Føj、Puhを「認められない」例として挙げているのは、新しく作るミドルネームや姓についての説明の中です。ファーストネームのリストとは別の話なので、混同しないようにしてください。

名前の3つの部分と決まり

デンマークの名前は、ファーストネーム、ミドルネーム、姓の3つの部分でできています。リストで管理されているのはファーストネームだけで、ほかの2つには別の決まりがあります。

デンマークの名前の3つの部分(Familieretshuset の公開情報から作成)
部分数選べる範囲主な制限
ファーストネーム1つ以上、いくつでも承認済みリストから選ぶ。ない名前は申請性別に合うこと、不適切でないこと
ミドルネーム任意(なくてもよい)姓として使える名前、親や祖父母・曾祖父母などの名前、承認済みのファーストネームなど家族以外の名前は本人の同意が必要な場合あり
姓1つだけ(2つをハイフンでつなぐのは可)2000人を超える人が名乗る「自由な姓」、家族とのつながりがある姓、新しく作った姓2000人以下の姓は保護され、つながりの証明か全員の同意が必要

姓の決まりは、ファーストネームより厳しいくらいです。名乗っている人が2000人以下の珍しい姓は保護され、祖先とのつながりを書類で示すなどしないと名乗れません。

新しく姓を作る場合は、デンマーク語で発音できること、1文字だけや子音だけでないこと、数字や記号やラテン文字以外の文字を使わないことなどが条件になります。会社名や商標、有名な芸術家の名前と重なるものも認められません。

日本の決まりとの違い

日本にも名づけの決まりはありますが、管理しているのは名前そのものではなく、使える文字です。法務省によると、子の名には常用漢字表と人名用漢字表にある漢字、それにひらがなとカタカナを使えます。

2025年5月26日からは、戸籍に名前の振り仮名も載るようになりました。振り仮名は「一般に認められている読み方」でなければならず、法務省は認められない例として「高」をヒクシと読ませるもの、「太郎」をジョージと読ませるものを挙げています。

日本は文字と読み方の範囲を決め、その中なら組み合わせは自由です。デンマークは名前という単位で1つずつ認め、認めた名前を全員に開放します。子どもの不利益を防ぐという目的は同じでも、線を引く場所がまったく違います。

よくある疑問

デンマークでは本当に好きな名前を付けられないのですか?
リストにない名前でも、申請して承認されれば付けられます。2024年の申請は約4500件で、そのうち74%が承認されました。「自由がない」というより「新しい名前には審査がある」と考えるのが正確です。
承認済みの名前はいくつありますか?
2022年の集計で4万7218件、2024年には5万件を超えたと報じられています。承認された名前は随時リストに加わるため、数は増え続けています。
6か月の期限を過ぎたらどうなりますか?
期限までに届け出ないと、罰金の対象になると報じられています。届け出はborger.dkから行え、命名そのものに手数料はかかりません。候補が決まらない場合も、まずリストを検索しておくと手続きが早く済みます。

まとめ

デンマークでは、子どものファーストネームを5万件を超える承認済みリストから選び、生後6か月以内に届け出ます。リストにない名前も申請でき、2024年は約4分の3が承認されました。

認められた名前はリストに加わり、次の親からは自由に使えます。却下の理由は「性別に合わない」「姓と紛らわしい」「子どもに不利益」が中心です。気になる名前があれば、家族法庁の公式リストで実際に検索して、載っているかどうかを確かめてみてください。

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