なぜ「円」というの?日本のお金の名前の由来
円という名前の由来は、実ははっきりしていません。財務省は、明治時代に円が採用されたときの経緯を裏づける資料が残っていないため正確にはわからない、と説明しています。
硬貨が丸いから円になった、という話は有名ですが、それは並び立つ説のうちのひとつです。残っている記録から、たどれるところまでたどってみます。
円が生まれたのは1871年
円という単位は、明治4年(1871年)5月の新貨条例で定められました。1円の100分の1が銭、銭の10分の1が厘という十進法です。
それまでの両・分・朱は四つ割りで数える仕組みで、計算が面倒でした。ちなみに今の円を支えているのは新貨条例ではありません。
財務省によると、「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」の第2条第1項が、通貨の額面価格の単位は円だと定めています。
由来には三つの説がある
日本銀行金融研究所の貨幣博物館は、円という名前の由来として三つの説を挙げています。ひとつ目は、貨幣の形をすべて円形に統一したから。
ふたつ目は、中国で西洋の円形銀貨を「銀円」「洋円」と呼んでいたことが幕末の日本に伝わり、金の単位である「両」を円と呼ぶことがあったから。三つ目は、英国香港造幣局の造幣機械を日本が譲り受けた縁で、香港銀貨の「一円」という名称をそのまま採用したから、というものです。
決め手がない理由
三つの説が並んだままなのは、当時の担当者がなぜその字を選んだのかを書き残した文書が見つかっていないからです。新貨条例そのものには「円」と書かれていますが、その理由までは書かれていません。
大隈重信が、日本人が指で丸をつくってお金を表すことから名づけた、という話も広く語られます。ただし公的機関はこれを裏づけておらず、俗説として扱うのが正確です。
由来がわからないのは、記録が失われたからではありません。当たり前に使う言葉ほど、生まれた瞬間の理由は書き残されないのです。
ローマ字でYENと書くわけ
円は1872年から、ローマ字でENではなくYENと書かれてきました。日本銀行によると、この根拠も明確ではなく、やはり説が三つあります。
ENでは外国人の発音が「イン」に近くなるためYを足したという説。ENがオランダ語で「〜と」、フランス語やスペイン語で「〜の中に」を意味する日常語で紛らわしいという説。
中国の紙幣にあったYUANが転じたという説です。江戸をYEDOと書いた記録も残っており、当時の表記の癖がうかがえます。
銭と厘は今どこにいるのか
円の下にあった銭と厘は、姿を消したわけではありません。日本銀行によると、1円未満の紙幣と貨幣は1953年(昭和28年)に発行が止まり、同年12月31日限りで使えなくなりました。
小額通貨整理法によるものです。ただし計算のための単位としては今も生きていて、利息の計算や外国為替の取引では銭が使われています。
円という一文字が選ばれた理由は、まだ確定していません。次に硬貨を手にしたら、その丸い形は答えそのものではなく、有力な手がかりのひとつなのだと思い出してみてください。
参考にした資料