無数の明かりが闇を照らす、インドの光の祭り
秋の終わりの夜、インドの街が無数の明かりで埋め尽くされます。ディワリと呼ばれるこの祭りは5日間続き、宗教の違いを超えて10億人以上が祝います。
名前はサンスクリット語の「ディーパーヴァリ」、つまり「灯りの列」に由来します。並べられた明かりが表しているのは、闇に打ち勝つ光、悪に打ち勝つ善という考え方です。
毎年日付が変わる理由
ディワリの日付は、カレンダーの上で固定されていません。月の満ち欠けをもとにしたヒンドゥー暦で決まるからです。
基準になるのは、アシュヴィナ月とカールッティカ月の変わり目に来る新月の日。その前後5日間が祭りの期間になります。
グレゴリオ暦に直すと10月から11月のどこかに落ち着き、年によって日付が動きます。新月の夜には月明かりがありません。
一年でもっとも暗い夜を選んで、家じゅうを明かりで満たすわけです。
5日間、日ごとに役割が違う
ディワリは1日だけの行事ではありません。5日それぞれに名前と役割があります。
初日のダンテーラスは、健康と豊かさを願って買い物や掃除をする日。2日目のナラカ・チャトゥルダシーは、クリシュナが魔王ナラカースラを倒した日とされます。
3日目のラクシュミー・プージャが新月にあたる中心の日で、富と幸運の女神ラクシュミーを家に迎えます。4日目のゴーヴァルダン・プージャを経て、5日目のバーイー・ドゥージで兄弟姉妹の絆を祝い、祭りは幕を閉じます。
光が表す善の勝利
ディワリの明かりには、深い意味が込められています。闇を照らすその光は悪に打ち勝つ善の勝利を表しています。
だからこそ人々は、家じゅうを明るく照らして新しい季節を迎えるのです。
使われるのは、素焼きの小さなランプ「ディヤ」です。油と芯を入れて火をともし、玄関先や窓辺にずらりと並べます。
床には色のついた粉で「ランゴリ」と呼ばれる模様を描き、お菓子を配り、家族や友人と集まります。電飾に置き換わった家も増えましたが、灯を並べるという形そのものは変わっていません。
地域や宗教で物語が違う
同じディワリでも、祝う理由は一つではありません。北インドでは、14年の追放に耐えたラーマ王子が魔王ラーヴァナを倒し、妃シーターとともに都へ帰還した日として祝われます。
南インドでは、1万6000人の女性を捕らえていた悪王ナラカースラをクリシュナが打ち破った日と伝えられます。シク教徒にとっては、17世紀に第6代グル・ハルゴービンドが幽閉から解放された日。
ジャイナ教徒や仏教徒も、それぞれの物語を重ねて祝います。筋書きは違っても、光が闇に勝つという主題は共通しています。
花火と大気汚染という課題
華やかなディワリには、いま重い課題がついて回ります。花火の煙です。
首都デリーでは、ディワリ前の時期に大気質指数が300から400という「非常に悪い」水準で推移した年もあります。稲わらの野焼きや自動車の排気も重なり、風が弱まる季節のため煙が何日も居座ります。
そこでインドの最高裁判所は従来型の花火を規制し、化学物質の使用を減らした「グリーン花火」だけを認めました。使える時間帯も、夜の数時間に限られています。
暗い夜をどう迎えるか。ディワリはその問いに、灯りを並べるという答えを出し続けてきた祭りです。
10月から11月にインドの夜景を目にしたら、その光の一つひとつが手でともされたものだと思い出してみてください。
参考にした資料