自然

陸を深くえぐるフィヨルド、氷河がつくった絶景とは

2026年7月 · 読了3分
陸を深くえぐるフィヨルド、氷河がつくった絶景とは

陸地の奥深くまで、海が細く入り込んでいく地形があります。ノルウェーなどの海岸で見られるフィヨルドです。

この景色をつくったのは、かつてこの谷を流れ下っていた分厚い氷河でした。氷が谷を削り、そのあとに海が入り込む。二段構えでできあがった地形です。

陸に切り込む細長い入り江

フィヨルドは、海が陸地に深く切り込んだ細長い入り江です。両側には数百メートル級の崖がそびえ、水路は曲がりくねりながら奥へ続きます。

見られる場所はノルウェーだけではありません。グリーンランド、アラスカ、カナダ北極圏、チリ、ニュージーランドなど、かつて氷河におおわれた高緯度の海岸に共通して分布しています。

V字谷ではなくU字谷になる理由

川が削った谷は、断面がV字になります。細い流れが一本の線を、下へ下へと掘り下げていくからです。

氷河の削り方はまったく違います。谷の幅いっぱいを厚い氷が満たし、底と両側の壁を同時に削るのです。

壁はえぐられて急になり、底は平らに広がります。こうしてできるのがU字型の谷です。

フィヨルドは、このU字谷が海に沈んだ姿にほかなりません。

氷河が削った大地

氷河が谷を削り込む深さは、海面では止まりません。厚く積もった氷はきわめて重く、海面よりはるか下まで谷底を掘り下げます

氷が解けたあと、空になった谷に海水が流れ込みました。岸からわずかに離れただけで水深が数百メートルに達するのは、このためです。

入口に残された「敷居」

フィヨルドには、奥のほうが深く入口のほうが浅い、という変わった特徴があります。氷河の末端では運ばれてきた土砂が積もり、海底に低い堤を残しました。

シル(敷居)と呼ばれる地形です。ノルウェーのソグネフィヨルドは、最も深いところで水深1303メートルあります。

ところが外洋につながる入口の敷居は、水深100〜200メートルしかありません。奥の深い水が外洋の水と入れ替わりにくいのは、この敷居がふたの役割をするからです。

削るのにかかった時間

この谷は、一度の氷期でできたものではありません。氷河が谷を深く削り込むには1万年から10万年以上かかり、しかも何度もの氷期をまたいで進みました。

氷河は岩を引きはがし、氷に取り込んだ岩片で谷底をやすりのように磨いていきます。今わたしたちが見ている景色は、氷が前進と後退をくり返した末の姿なのです。

今も削られている入り江

フィヨルドは、氷河が去った跡地にだけ残る地形ではありません。南極半島のラルマン・フィヨルドやグリーンランドの入り江では、今も氷河が海へ流れ込んでいます。

アラスカのグレーシャーベイ国立公園にあるジョンズホプキンス入江も、その一つです。一方、ノルウェーのネーロイフィヨルドやニュージーランドのダウトフルサウンドには、もう氷河はありません。氷が去ったあとの谷だけが残されています。

ソグネフィヨルドの全長は205キロメートル。氷がこれだけの距離を削り、そこへ海が入り込みました。

地図でノルウェーやチリ、ニュージーランドの海岸線を拡大してみてください。同じ形をした細長い入り江がいくつも並んでいます。それが、氷河が通った跡です。

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