フグはなぜ体をふくらませるのか、身を守る工夫
フグがまん丸になるのは、水を飲み込んでいるからです。空気ではありません。
体の中には膨張嚢という伸びる袋があり、口から送り込んだ水がここにたまります。飲む量は種類によって違い、多いものでは自分の体重の7倍を超えます。
水を飲んでふくらむ
フグは口の筋肉をポンプのように使い、胃とつながった膨張嚢へ水を送り込みます。送り終えると入り口の筋肉を締めて閉じるため、水は逆流しません。
ふつうの魚にある肋骨や腹ビレをフグは持たず、体が外へ広がるのをじゃまする骨がないのです。皮膚も伸び縮みしやすくできています。
ふくらんだ体は、口の大きさが決まっている捕食者にとって飲み込みにくい大きさになります。とげを立てる種なら、飲み込むこと自体が危険です。
飲み込む水の量
下関市の水族館「海響館」が調べたところ、飲み込む水の量は種類で大きく違いました。最も多いモヨウフグは体重の7.6倍、ハリセンボンは2.3倍、食用でおなじみのトラフグ属は約2倍です。
ふくらみ方も一様ではありません。トラフグはおなかだけがふくらみます。
一方コクテンフグなどのモヨウフグ属は体全体がふくらみ、ひれまで巻き込んでほぼ球の形になります。
ふくらんでいる間も息をしている
フグはふくらむ間だけ息を止めている、と長く考えられてきました。2014年、オーストラリア海洋科学研究所とジェームズクック大学のチームがシマキンチャクフグで実際に測り、ふくらんでいる間もえらで酸素を取り込み続けていることを示しました。
この結果は英国王立協会の学術誌に発表されています。ただし負担は小さくありません。
酸素の消費量は休んでいるときの5倍に増え、元の状態に戻るまで平均5.6時間かかりました。ふくらむのは何度も繰り返せる技ではなく、最後の手段なのです。
毒は自分で作っていない
フグの毒テトロドトキシンは、フグ自身が作り出したものではありません。国立科学博物館の解説によると、毒はえさをたどって体にたまると考えられています。
毒を持つ海の細菌を巻貝などが取り込み、それをフグが食べる。この流れで肝臓や卵巣、腸に毒が集まります。
だから毒のないえさだけで育てれば毒を持たないフグができ、無毒のトラフグを養殖する研究も進んでいます。なお、フグ自身がなぜ毒で死なないのかは、まだ完全には解明されていません。
日本では食べてよいフグの種類と部位が厚生労働省の通知で決められており、トラフグなら筋肉と皮と精巣に限られます。肝臓はどの種類でも食用が認められていません。
空気でふくらむこともある
水のない場所ではどうなるのか。名古屋市科学館の解説では、空気中では水の代わりに空気を吸い込んでふくらむこともあります。
ただし前の章のとおり、ふくらむこと自体がフグの体力を大きく使います。釣り上げたフグをおもしろがってふくらませるのは、フグを弱らせる行為です。
ふくらんだ姿はかわいらしく見えますが、フグにとっては体力を削る非常手段です。水族館でその姿を見かけたら、元に戻るまで5時間以上かかることを思い出してみてください。
参考にした資料