イルカは脳を半分ずつ眠らせているって本当?
イルカは本当に、脳を半分ずつ眠らせています。水中で暮らしていても呼吸は肺で行い、しかも息継ぎは人のような自動運転ではありません。
完全に意識を失えば呼吸が止まってしまうため、右脳と左脳を交代で休ませる「半球睡眠」という眠り方をしています。脳波の記録によって、1977年に確かめられました。
息継ぎは自分で決めている
イルカがぐっすり眠れない理由は、呼吸のしくみにあります。人は眠っていても勝手に息をしますが、鯨類の保護団体WDCの解説によれば、イルカの呼吸は自動ではありません。
自分で「息をしよう」と決めて行うものです。眠っている間も水面へ上がり、頭の上にある噴気孔を空気中に出して息を吸う必要があります。
深く意識を失えば、そのまま呼吸が止まってしまいます。だからイルカは、脳のどこかを起こしたまま休まなければならないのです。
半分ずつ眠る脳
イルカは右脳と左脳を交代で休ませ、半分ずつ眠ります。片方の脳が深い眠りの波形を出しているとき、もう片方は起きているときと同じ波形のままです。
目も左右で状態が違い、右脳が眠っているときは左目が閉じ、左脳が眠っているときは右目が閉じます。
確かめられたのは1977年
この眠り方が明らかになったのは1977年です。旧ソ連のムハメトフらの研究チームが、9頭のハンドウイルカに電極を付けて脳波を記録したところ、6頭で左右の脳の波形がはっきり食い違いました。
片側だけが眠るという、それまで知られていなかった睡眠の形です。結果は学術誌ブレイン・リサーチに発表されました。
その後、シロイルカやオットセイなど、水中で休むほかの生き物でも同じ眠り方が見つかっています。
1回の眠りは平均42分
半分ずつとはいえ、眠る量は少なくありません。鯨類の睡眠をまとめた総説によると、ハンドウイルカの片側睡眠は1回あたり平均42分ほど続き、短いものは3分半、長いものは2時間を超えます。
1日のうち34〜57パーセントを、この徐波睡眠と呼ばれる眠りで過ごします。しかも眠る側は入れ替わるので、休みが片方に偏りません。
一方で、人が夢を見るレム睡眠にあたる波形は、脳波を測った鯨類からいまだに確認されていません。眠りの形そのものが、陸の哺乳類とは違うのです。
15日間、休みなく見張れる
眠りを半分に分けられる強みは、警戒を切らさずに済む点にあります。アメリカで行われた実験では、イルカが水中の目標をエコーロケーション(音波による探知)で見張り続け、15日間にわたって成績を落とさなかったことが報告されています。
人なら数日で判断力が鈍る場面でも、イルカは片側ずつ休むことで力を保てます。外敵の接近も仲間との距離も、眠っている間に確かめられるわけです。
「眠っているのに起きている」。イルカの脳は、そんな状態を毎日くり返しています。
水族館でイルカがゆっくり泳いでいたら、目に注目してみてください。片目だけが閉じていたら、そのとき反対側の脳は眠っています。
参考にした資料