クラゲに脳も心臓もないって知っていますか?
クラゲの体は、およそ95パーセントが水分です。アメリカ海洋大気庁(NOAA)によれば、固形の部分は全体の5パーセントほどしかありません。
しかも脳も心臓も血液もありません。それでも体じゅうに広がる神経のネットワークで、獲物を捕らえ、上手に泳いでいます。
体のつくりはたった3層
クラゲの体は、外側の表皮、内側の胃層、そのあいだにはさまれたゼリー状の中間層(メソグレア)という3層でできています。厚みの大部分を占める中間層は、そのほとんどが水です。
つかもうとすると崩れてしまうのは、支える骨も殻もないためです。口と肛門の区別もなく、たった1つの穴で食べて出します。
イソギンチャクやサンゴと同じ、刺胞動物という仲間です。
脳のかわりは「神経網」
クラゲには脳がありません。かわりに体の表面全体に神経細胞が網の目のように広がる「神経網」があります。
多細胞の動物で知られているかぎり、もっとも単純な神経系です。司令塔がないので、光や水の化学変化、触れられた感触を、感じ取った場所の近くで処理して反応します。
体が中心から放射状に広がる形をしているため、どの方向から来た刺激にも同じように応じられるのです。
24個の目を持つクラゲもいる
脳がないのに、目を持つ種類がいます。ハコクラゲの一種トリペダリア・キストフォラは、傘のふちにある4つの感覚器(ロパリア)に6個ずつ、合わせて24個の目を備えています。
レンズのある目が2種類、くぼみ型の目とすき間型の目が1対ずつという構成です。実験では、暗い方向を感じ取ると、その側の傘の収縮を遅らせて向きを変え、暗がりから泳ぎ去ることが確かめられました。
脳を持たないまま、目からの情報だけで舵を取っているのです。
心臓がなくても酸素が届く
心臓も血管も、えらも肺もありません。それでも困らないのは、生きた細胞の層がとても薄いからです。
酸素は海水から体の表面を通って直接しみこみ、二酸化炭素は同じ経路で外へ出ていきます。血液で運ぶ必要がないため、心臓もいらないという仕組みです。
傘を規則正しく打つ動きが、新しい海水をたえず体の表面に触れさせています。
5億年前から海を泳いでいた
クラゲの歴史は5億年を超えます。2023年、カナダのバージェス頁岩で見つかった化石が、最古の泳ぐクラゲとして発表されました。
バージェソメドゥーサ・ファスミフォルミスという名前で、およそ5億500万年前のカンブリア紀のものです。ロイヤル・オンタリオ博物館が約200点を所蔵し、大きいものは20センチを超えます。
傘の形も触手も、現代のクラゲとほとんど変わりません。この時代にすでに、泳いで獲物を捕らえるクラゲがいたことになります。
脳も心臓も持たないまま、クラゲは5億年を生き延びてきました。複雑な器官を増やすかわりに、水とわずかな細胞で足りる体を選んだ結果です。
次に水族館へ行ったら、傘のふちを見てみてください。ぽつぽつと並ぶ小さな粒が、光や傾きを感じ取る感覚器です。
参考にした資料