紙は何回まで半分に折れる?記録は12回、限界を決めるもの
A4のようなふつうの紙は、6回か7回で折れなくなります。理由は「厚みが倍々に増えるから」と説明されがちですが、本当の壁は必要な紙の長さのほうです。
2001年、アメリカの高校生がこの限界を式にして解き、翌年に12回折って世界記録を作りました。その式を使うと、何回折るにはどれだけの紙が要るのかが計算できます。
折るたびに厚みは倍になる
半分に折ると厚みは2枚分、もう一度折れば4枚分、10回で1024枚分です。厚さ0.1mmのコピー用紙なら、10回で約10cmの束になります。
ただし、折れなくなる直接の原因は厚みそのものではありません。折り目のところで紙は曲がっていて、その曲がった部分は「折るために食われる長さ」になります。
束が厚くなるほど曲がりの半径も大きくなります。そのため、食われる長さが回数を重ねるごとに急激に増えていくのです。
たとえば7回折った束は、厚さ0.1mmの紙でも12.8mmあります。次に折るとき、いちばん外側の紙はこの束をくるむように大きな半円を描きます。いちばん内側の紙はほとんど曲がらずにすむので、外側ほど多くの長さを折り目に取られます。この差が積み重なって、紙の端がそろわなくなります。
高校生が導いた式
2001年12月、カリフォルニア州ポモナの高校生ブリトニー・ギャリバンが、同じ向きに折り続ける場合に必要な紙の長さを式にしました。L =(πt÷6)×(2ⁿ+4)×(2ⁿ−1)。
Lは必要な長さ、tは紙の厚さ、nは折る回数です。厚さ0.1mmで計算すると、7回折るには長さ約88cmの紙が必要になります。
10回なら約55m、12回なら約880m。A4の長辺は29.7cmですから、同じ向きに折り続けるやり方では7回に届きません。
この式のカッコの中を見ると、2ⁿが2回かけ合わされています。つまり折る回数が1つ増えるたびに、必要な長さはおよそ4倍になります。厚みは2倍ずつですが、長さは4倍ずつ。限界が早く来るのはこのためです。
式を回数ごとに計算すると、必要な長さはπt(円周率×厚さ)の1倍・4倍・14倍・50倍・186倍・714倍と増えていきます。科学誌サイエンス・ニュースも、ギャリバンが示した「折るたびに失われる量」としてこの並びを紹介しています。
回数ごとの厚さと必要な長さ
厚さ0.1mmの紙を同じ向きに折り続けた場合を、ギャリバンの式で計算しました。
| 折る回数 | 重なる枚数 | 束の厚さ | 必要な紙の長さ |
|---|---|---|---|
| 5回 | 32枚 | 3.2mm | 約6cm |
| 6回 | 64枚 | 6.4mm | 約22cm |
| 7回 | 128枚 | 12.8mm | 約88cm |
| 8回 | 256枚 | 25.6mm | 約3.5m |
| 9回 | 512枚 | 51.2mm | 約14m |
| 10回 | 1024枚 | 約10cm | 約55m |
| 12回 | 4096枚 | 約41cm | 約880m |
| 13回 | 8192枚 | 約82cm | 約3.5km |
6回目までは手のひらに収まる長さですが、7回目で1m近く、8回目で教室の幅ほどに跳ね上がります。A4の長辺29.7cmが6回と7回のあいだに入っていることも、表から読み取れます。
A4で試すと何回折れるか
家で試すなら、同じ向きに折り続ける方法では6回が計算上の上限です。実際には紙の縁がそろわなくなるので、6回目でもかなり固くなります。
縦と横を交互に折ると、もう1回ほど伸ばせます。サイエンス・ニュースは、紙の縦と横の両方を使って交互に折れば、さらに1回折れる可能性があると解説しています。「紙は7回か8回まで」という通説は、この交互に折るやり方での感覚に近い数字です。
回数を伸ばしたいなら、薄くて長い紙を選ぶのが近道です。厚さ0.1mmで計算すると、8回に必要なのは約3.5m、9回でも約14m。トイレットペーパーを廊下に伸ばせば、計算上は届く長さです。
折れなくなった紙の縁をよく見てください。まっすぐな折り目ではなく、丸くふくらんだ部分ができているはずです。それが式にある「食われた長さ」の正体です。
記録は12回、そして13回
ギャリバンは2002年1月27日、長さ1219m(4000フィート)の薄紙を使って12回折り、ギネス世界記録に認定されました。それまでは「紙は8回より多く折れない」というのが通説で、9回・10回・11回・12回を最初に達成したのは彼女です。
ギネス世界記録の紹介記事によると、長い廊下のある建物に紙を広げ、8時間床をはい回って12回を達成しました。紙の前には、一辺約10cm・厚さ約0.28マイクロメートルの金箔でも12回折っています。
記録はその後さらに更新されました。2011年12月4日、マサチューセッツ州にあるセント・マークス校の生徒たちが13回を達成します。指導したのは数学教師のジェームズ・タントンで、会場はMITの全長825フィート(約250m)の廊下「インフィニット・コリドー」でした。
使った紙は5万4000フィート、約16kmです。それが13回折ると、長さ5フィート(約1.5m)の束になりました。
NPRの報道によると、一行は紙を最初から64枚重ねで並べ、6回分の折り目を先に作ってから本番に臨みました。同じ年の4月にも13回に届いていましたが、折った束が自立しなかったため記録として申告しなかったといいます。
「42回で月に届く」の正体
「42回折れば月に届く」という話も有名です。これは実験ではなく計算の話です。
厚さ0.1mmの紙を42回折ると2の42乗、約4兆4000億枚分が重なり、厚さは約44万kmになります。月までの平均距離38万4400kmを超える数字です。
途中の数字も見ておくと、25回で約3.4km、26回で約6.7kmです。富士山の高さ3776mを追い越すのは26回目。たった1回で、束の高さが3kmあまり伸びます。
ところが同じ紙を42回折るのに必要な長さをギャリバンの式で求めると、約10万光年になります。光の速さで進んでも10万年かかる長さです。
倍々の増え方を実感するための思考実験と、実際に折れる回数は分けて考える必要があります。
限界を決めるのは紙ではなく長さ
一連の記録が示しているのは、7回という限界が紙の材質ではなく寸法の問題だということです。じゅうぶんに長くて薄い紙を用意できれば、12回でも13回でも折れます。
ただし薄さの効き目は意外に小さいものです。式では必要な長さが厚さに比例するので、厚さを半分にしても長さは半分になるだけ。1回増やすには長さが4倍要るので、半分の薄さで稼げるのは0.5回分ほどです。回数を決めるのは、結局のところ長さのほうです。
逆に、A4を何枚集めたところで、1枚のA4は7回前後で止まります。同じものが2倍ずつ増える指数関数的な伸びに、現実の材料の側がついていけなくなる。その境目が、身近な紙ではたまたま7回前後だったということです。
よくある疑問
- A4のコピー用紙は何回まで折れますか?
- 同じ向きに折るなら6回、縦と横を交互に折れば7回が目安です。厚さ0.1mmで計算すると、同じ向きに7回折るには約88cmの長さが必要で、A4の長辺29.7cmでは足りません。
- 紙の世界記録は何回ですか?
- ギネス世界記録に認定されたのは、2002年にブリトニー・ギャリバンが達成した12回です。2011年にはアメリカの高校生たちが約16kmのトイレットペーパーを13回折ったと、NPRが報じています。
- 紙を42回折ると本当に月に届きますか?
- 厚さの計算上は約44万kmになり、月までの距離を超えます。ただし必要な紙の長さは約10万光年で、現実には折れません。倍々の増え方を示すための思考実験です。
まとめ
紙が7回前後で折れなくなるのは、厚みが2倍ずつ増えるうえに、必要な紙の長さが1回ごとに約4倍に増えるからです。ギャリバンの式で計算すると、厚さ0.1mmの紙で7回折るには約88cm、12回なら約880mの紙が要ります。
記録は12回、そして13回まで伸びました。手元のA4で、同じ向きに折る方法と縦横交互に折る方法の両方を試し、何回で止まるかを比べてみてください。
参考にした資料
- Guinness World Records — Most times to fold a piece of paper
- Wolfram MathWorld — Folding
- NPR(KBIA配信) — Record Folders: 54,000 Feet Of Paper; 13 Folds; One New Standard
- Science News — Folding Paper in Half—Twelve Times
- Guinness World Records — How many times can you actually fold a piece of paper? Student busts myth