科学

津波の前に潮が引くのはなぜか そして、それを待ってはいけない理由

2026年7月 · 読了3分
津波の前に潮が引くのはなぜか そして、それを待ってはいけない理由

海の水がすうっと沖へ引いていく。津波の話になると、決まってこの光景が語られます。では、この「潮が引く」現象はなぜ起きるのでしょうか。そして気象庁は、津波は引き波から始まるとは限らない、とはっきり書いています。仕組みと、そこから導かれる大事な注意点を整理します。

津波は、海の水全体が動く現象

普段、海岸に打ち寄せている波は「波浪」と呼ばれます。松江地方気象台の解説によると、波浪は海域で吹いている風によって生じる海面付近での現象で、波長は数メートルから数百メートルほどです。動いているのは、海の表面近くの水だけです。

いっぽう津波は、海底から海面までの海水全体が短い時間で変動する現象です。波長は数キロメートルから数百キロメートルにもなります。同じ「波」という言葉を使っていても、動いている水の量がまるで違うわけです。

潮が引くのは、海底が沈み込んだから

気象庁は、海底下で大きな地震が発生すると断層運動により海底が隆起もしくは沈降し、これにともなって海面が変動して大きな波となり、四方八方に伝わるものが津波だと説明しています。

つまり津波のかたちは、海底の動きをそのまま海面に写したものです。海底が持ち上がった真上では海面も盛り上がり、海底が沈み込んだ真上では海面がへこみます。このへこんだ部分が先に海岸へ届くと、海水が沖へ吸い寄せられるように見えます。これが、津波の前に潮が引く正体です。

「引いてから逃げる」は成り立たない

気象庁は「津波の前には必ず潮が引く」という言い伝えについて、必ずしもそうではないと述べています。断層の傾きや方向、津波が発生した場所と海岸との位置関係によっては、潮が引くことなく最初に大きな波が押し寄せることがあります。津波は引き波で始まるとは限らないのです。

ということは、「潮が引いたのを見てから逃げればいい」という考え方は、そもそも成り立ちません。押し波から始まる津波では、引き波という合図自体が現れないからです。気象庁も、潮が引くのを待って避難すればよいというのは大きな間違いだとしています。

そして、海を見に行くこと自体が危険です。気象庁は、強い揺れを感じたときや津波警報が発表されたときは、実際に津波を目で確かめるのを待たず、ただちに海辺から離れて高い場所へ避難するよう呼びかけています。

高さ数十センチでも危ない

津波は海が深いほど速く伝わり、沖合ではジェット機に匹敵する速さで進みます。陸に近づいて水深が浅くなると速度は落ちますが、減速した波の前方部に後方部が追いつくため、こんどは波が高く積み上がっていきます。

高さについても油断はできません。気象庁は、高さ0.2〜0.3メートル程度の津波でも人は速い流れに巻き込まれてしまうおそれがあり大変危険だとしています。0.2メートル以上の津波が予想される場合には津波注意報が発表されます。浸水が0.5メートル程度であっても、船舶や木材などの漂流物の直撃によって被害が出る場合があります。

最初の波が最大とは限らない

もうひとつ覚えておきたいのは、第一波で終わりではないということです。気象庁は、後から来る津波のほうが高くなることもあると説明しています。地形によって波が集まり、あとの波が大きくなる場合もあります。

だからこそ、一度波が来て海が静かになったからといって戻ってはいけません。津波警報が出ている間は絶対に戻らない。これが気象庁の呼びかけです。

潮が引く理由は、海底が沈み込んだぶん海面が下がるから。仕組みとしては素直な話ですが、これを避難の合図として使うことはできません。引くこともあれば、引かずにいきなり押し寄せることもあるからです。合図を待つのではなく、揺れを感じたら、あるいは警報を聞いたら、海から離れて高いところへ。海の様子を確かめるのは、そのあとで十分です。

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