泥を肌に塗って遊ぶ、韓国ポリョンの夏のお祭り
韓国の保寧(ポリョン)市では、毎年夏に泥まみれで遊ぶお祭りが開かれます。始まりは1998年。
地元の泥から作った化粧品が売れず、それを知ってもらうために開いた宣伝イベントでした。今では年におよそ200万人が訪れる、韓国を代表する夏の行事です。
会場は大川海水浴場
舞台は忠清南道の保寧市にある大川(テチョン)海水浴場です。ソウルからは南に約200キロ離れています。
保寧の海岸線は136キロにおよび、その干潟がお祭りに使う泥の産地です。2026年の会期は7月24日から8月9日までで、17日間続きます。
混み合うのは最終週の週末です。会場は本格的に泥で遊ぶ一般ゾーン、小さな子ども向けの家族ゾーン、水遊び中心のウォーターパークゾーンに分かれています。泥が苦手な人でも居場所がある作りです。
始まりは売れない化粧品
きっかけは1994年です。当時の大川市長が映画の泥風呂の場面から着想を得て、地元の干潟の泥を調べさせました。
円光(ウォングァン)大学の研究チームが化粧品の原料になる可能性を確かめ、市と大手化粧品会社が共同研究に入ります。1996年6月には、泥パック・ボディクレンザー・石けん・シャンプーの4種類が発売されました。
ところが知名度がなく、売れ行きは伸びませんでした。
四日間の宣伝から始まった
そこで市は、泥そのものを体験してもらう催しを企画します。第1回の保寧泥祭りは1998年7月16日から4日間、大川海水浴場で開かれました。
人出は主催者の予想を上回り、翌年以降も続くことになります。
背景には地域経済の落ち込みもありました。1990年代前半に炭鉱が閉山し、保寧は新しい産業を必要としていたのです。観光は、その立て直しの柱でした。
泥に含まれるもの
西海岸の遠浅の海では、潮が引くと広い干潟が現れます。そこにたまった細かい粒が保寧の泥です。
ケイ素・カルシウム・ナトリウム・マグネシウムといったミネラルを含み、ゲルマニウムや鉄、カリウムも報告されています。この成分に注目して作られたのが、先ほどの泥化粧品でした。
韓国観光公社は保寧の泥を、粒が細かく、古い角質を落として肌をうるおす素材だと紹介しています。祭りで使う泥も干潟から採取して会場へ運び込まれ、泥風呂やすべり台に使われます。
泥まみれで何をするのか
会場には泥のすべり台や泥風呂が並び、「泥の監獄」もあります。色をつけた泥で体に絵を描くコーナーや、泥のスキー大会も人気です。
化粧品の直売所が出るのは、始まりが宣伝イベントだった名残でしょう。昼はDJの音楽に合わせて、参加者が泥を掛け合う時間帯もあります。
夜には公演や海上のドローンショー、花火が続きます。人出は増え続け、2007年には220万人が訪れました。
海外からの参加者も多く、いまや世界に知られた行事です。
売れない化粧品をどう知ってもらうか。その悩みから生まれた四日間の催しが、30年近くかけて二週間を超える国際的な行事に育ちました。
泥は宣伝の道具から、町の看板そのものになったのです。
参考にした資料