食べ物

果物は熟すとなぜ甘くなる?でんぷんの変身

2026年7月 · 読了3分
果物は熟すとなぜ甘くなる?でんぷんの変身

果物が熟して甘くなるのは、実の中のでんぷんが糖に変わるからです。引き金を引くのは、エチレンという植物ホルモン。

ただし、この変化が起きるのは一部の果物だけです。イチゴやブドウは、収穫したあとどれだけ待っても甘くなりません。

バナナの中身は数日で入れ替わる

日本植物生理学会の解説によると、青いバナナはでん粉が約20%を占め、糖分は約1.5%しかありません。それが熟すと、でん粉は約2%まで減り、糖分は約20%まで増えます。

ふたつの数字がそっくり入れ替わる形です。かたくて甘くないバナナが、数日でやわらかく甘くなる理由がここにあります。

引き金はエチレンという気体

でん粉はひとりでに糖へ変わるわけではありません。合図を出すのがエチレンです。

クライマクテリック型と呼ばれる果実では、熟すときにエチレンの発生量が1000倍以上に増えます。するとその果実の呼吸量は2〜5倍になり、風味も色もやわらかさも急激に変わります。

エチレンが酵素のはたらきを促し、蓄えられていたでん粉が分解されて糖になるのです。

エチレンは気体です。だから、ある果実が出したエチレンは、そばにある果実にも届きます。

かたいキウイフルーツをリンゴと一緒にポリ袋へ入れると早く食べごろになるのは、リンゴの出すエチレンがキウイの追熟を進めるからです。バナナや洋なしを未熟なうちに収穫できるのも、この性質があってこそ。

輸送のあいだは傷まず、店や家庭で食べごろを迎えられます。

待っても甘くならない果物

すべての果物が追熟するわけではありません。ミカン、ブドウ、イチゴ、サクランボは非クライマクテリック型と呼ばれ、エチレンをほとんど出しません。

収穫した時点の甘さが、そのまま上限です。置いておいても甘くはならず、鮮度が落ちていくだけ

一方、リンゴ、桃、アボカド、トマト、洋ナシ、バナナはクライマクテリック型で、待つほど食べごろに近づきます。

黒い斑点は糖のしみ出しではない

熟したバナナの皮に出る茶色い斑点は「シュガースポット」と呼ばれます。名前のせいで糖がしみ出した跡だと思われがちですが、違います。

日本植物生理学会の解説では、細胞が老いて液胞が破れることで、皮に含まれるポリフェノール類がポリフェノール酸化酵素と出会い、酸化して褐色の物質に変わったものだと説明されています。食べごろの目安にはなりますが、斑点そのものは糖ではありません。

証明されたのは1934年

果実が自分でエチレンを作っていると証明されたのは1934年です。19世紀から、街灯用のガスが近くの植物に影響を与えることは知られていました。

その後、ゲイン(R. Gane)が熟したリンゴの出すガスを集め、植物自身がエチレンを生み出している化学的な証拠を示しました。果物が自分で成熟のスイッチを入れていると分かってから、まだ100年ほどしかたっていません。

かたい桃やアボカドは、常温で数日待てば甘くなります。イチゴやブドウは待っても変わりません。

買った果物がどちらの型かを覚えておくだけで、食べごろを逃さずにすみます。

← 記事一覧へ戻る