生き物

タコの心臓は3つもあるって知っていますか?

2026年7月 · 読了3分
タコの心臓は3つもあるって知っていますか?

私たちの心臓は1つ。ところがタコには3つあります。

1つは全身へ、残る2つはえらへ血を送るための心臓です。血の色は青。

ただし、いつでも青いわけではありません。青くなるのは、血が酸素と結びついているときだけです。

3つの心臓の役割分担

3つの心臓には、はっきりした分担があります。2つは「鰓心臓(さいしんぞう)」と呼ばれ、えらへ血を押し出す係です。

血はえらで二酸化炭素を捨て、海水から酸素を受け取ります。その酸素を含んだ血を受け取り、全身へ送り出すのが3つめの「体心臓」です。

血は全身から鰓心臓へ、えらを通って体心臓へ、そしてまた全身へと、決まった順路をめぐります。

青い血の正体

タコの血が青いのは、ヘモシアニンという銅を含むタンパク質のためです。酸素をつかむ部分に銅の原子が2個あり、そこに酸素が結びつくと青色になります。

酸素を手放すと、色はほぼ無色に戻ります。人間の血が赤いのは、鉄を使うヘモグロビンを持っているからです。

なぜ心臓が3つも必要なのか

ヘモシアニンは、赤血球の中に収まっていません。血液にそのまま溶けて漂っています。

分子はヘモグロビンよりずっと大きく、1個で酸素70個を結びつけられるほどです。人間のヘモグロビン1個が運べる酸素は4個ですから、けたが違います。

それでも、血液全体で運べる酸素の量ではヘモグロビンにおよびません。そこでタコやイカは、血管が閉じた循環のしくみに3つの心臓と収縮する静脈を組み合わせ、無脊椎動物としては高い血圧を保っています。

心臓の数は、酸素を運びにくい血をやりくりするための工夫なのです。なお、銅で酸素を運ぶ血はタコだけのものではありません。

カタツムリやイカ、エビやクモ、カブトガニも同じヘモシアニンを使っています。

泳ぐと心臓が止まる

この循環には、意外な弱点があります。水を吹き出して進む「ジェット推進」の最中、体心臓が止まってしまうのです。

1987年に発表されたマダコの研究で確かめられました。体を強く縮めると外套膜(がいとうまく)の中の圧力が上がり、血が静脈から心臓へ戻れなくなります。

多くのタコが泳ぎ続けず、海底を這って移動するのには、こうした事情があります。

南極のタコがとった対策

冷たい海では、ヘモシアニンは酸素を放しにくくなります。運べても、必要な場所で渡せなければ意味がありません。

南極にすむタコ、パレレドネ・カルコティを調べた研究では、血液1ミリリットルあたり78.9ミリグラムのヘモシアニンが見つかりました。暖かい海のタコより約40パーセント多い量です。

濃度を上げ、さらに酸素を手放しやすい性質のヘモシアニンを使うことで、氷点に近い海でも体のすみずみへ酸素を届けています。この研究は0度から20度までの水温で酸素の受け渡しを比べ、南極のタコと暖かい海のタコの違いを確かめました。

3つの心臓、青い血、泳ぐと止まる心臓。ばらばらに見えるタコの特徴は、じつは1本の線でつながっています。

銅で酸素を運ぶ血を選んだことが、心臓の数まで決めたのです。次に水族館でタコを見かけたら、その体の中を青い血がめぐっていることを思い出してみてください。

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