無限にも大きさの違いがあるという驚きの事実
無限より大きいものはない、と感じます。ところが数学には大きさの違う無限があり、しかもそれは証明ずみの事実です。
1874年、ドイツの数学者ゲオルク・カントールが、整数の無限より実数の無限のほうが大きいことを示しました。使った道具は、小学校で習うレベルのくらべ方です。
無限はペアで比べる
無限は数え終わらないので、個数を数えて比べることができません。そこでカントールは、一対一の対応を使いました。
二つの集まりの要素をもれなくペアにできれば同じ大きさ、どうやってもペアにできなければ大きさが違う。数を知らなくても、椅子と人が余らずに埋まれば同数だと分かるのと同じ考え方です。無限どうしを比べる方法は、これしかありません。
偶数は整数と同じ大きさ
この方法を使うと、直感に反する結果が出ます。1、2、3…と2、4、6…は同じ大きさです。
nに2nを当てれば、もれも余りもなくペアになるからです。分数も同じで、整数と一対一に対応させられます。
「整数のすきまを埋める数のほうが多いはず」という感覚は、ここで外れます。
この性質を言い直したのが、数学者ヒルベルトが1924年の講演で使った「無限ホテル」です。部屋が無限にあるホテルが満室でも、各部屋の客を1つ隣へ移せば1号室が空きます。
有限の世界では起きないことが、無限では平気で起こります。
対角線論法で崩れる
では、無限に続く小数まで含めた実数はどうでしょうか。すべての実数を一列に並べた表が作れたと仮定します。
1番目の数の小数第1位、2番目の数の第2位と対角線をたどり、その数字を全部別の数字に置き換えた小数を作ります。この数は1番目とは第1位が、2番目とは第2位が違います。
表のどの行とも一致しません。並べ尽くしたはずの表に漏れがあるので、最初の仮定が誤りだったことになります。
カントールが1891年に発表したこの証明を、対角線論法と呼びます。1874年の最初の証明よりも手順が短く、実数以外の集合にもそのまま応用できる形になっています。
無限の階段に天井はない
整数と一対一に対応できる無限を可算無限と呼び、カントールはその大きさをアレフゼロと名づけました。実数のように対応できない無限は非可算です。
ただし無限は2種類では終わりません。カントールの定理により、どんな集合でも、その部分集合を全部集めた集合はもとの集合より真に大きくなります。より大きい無限は、いつでも作れます。
答えが出ないと証明された問い
整数の無限と実数の無限のあいだに、中くらいの無限はあるのか。カントールは「ない」と予想しました。
これが連続体仮説です。1938年にゲーデルが「ないとしても矛盾は起きない」ことを示し、1963年にコーエンが「あるとしても矛盾は起きない」ことを示しました。
現在の標準的な集合論の公理からは、証明も反証もできません。解けないのではなく、決着がつかないと分かっている問いです。
無限は一つきりではなく、上へ伸びる階段でした。次に「無限」という言葉を見かけたら、それが数えられる無限なのか、数えられない無限なのかを考えてみてください。
参考にした資料