科学

ウイルスの大きさも表せる、ナノメートルの世界

2026年7月 · 読了3分
ウイルスの大きさも表せる、ナノメートルの世界

ナノメートルは、1メートルを10億に分けた一つ分の長さです。髪の毛1本の太さがおよそ8万から10万ナノメートルなので、その10万分の1ほどにあたります。

ウイルスの大きさも、この単位を使えば二桁の数字で言い表せます。目に見えない世界を、人はこうして測ってきました。

10億分の1メートルはどれくらいか

1ナノメートルは10億分の1メートルで、記号はnmと書きます。数字だけではつかみにくいので、身近なものと比べてみます。

コピー用紙1枚の厚さはおよそ10万ナノメートル、1インチは2540万ナノメートルです。DNAの二重らせんの太さは2.5ナノメートル、金の原子1個の直径は0.3ナノメートルほどしかありません。

つまりナノメートルは、原子が数個並んだくらいの長さを表す物差しです。

単位として決まったのは1960年

ナノはギリシャ語で小人を意味する言葉に由来します。この接頭語が世界共通のルールになったのは1960年です。

アメリカ国立標準技術研究所(NIST)の資料によると、この年の第11回国際度量衡総会で、小さい側のマイクロ・ナノ・ピコと、大きい側のメガ・ギガ・テラが一度に追加されました。国際単位系(SI)が生まれたのと同じ年です。

ナノメートルは、単位の歴史のなかでは新しい部類に入ります。

ウイルスをナノメートルで測る理由

ウイルスの直径は、多くが20から300ナノメートルの範囲に収まります。新型コロナウイルスを細胞の中で撮影した研究では、平均およそ90ナノメートルという値が報告されました。

これをミリメートルで書くと0.00009ミリとなり、ゼロを数えないと読めません。ナノメートルなら90で済みます。

扱う対象が小さい分野ほど細かい単位が使われるのは、この読みやすさのためです。

光学顕微鏡でウイルスが見えない理由

学校の顕微鏡でウイルスが見えないのは、倍率が足りないからではありません。光そのものが大きすぎるのです。

目に見える光の波長は400から700ナノメートル。この光を使う顕微鏡が見分けられる限界は横方向でおよそ250ナノメートルとされ、それより小さいものは像がにじんで重なります。

ウイルスの多くはこの限界より小さいため、電子顕微鏡の出番になります。電子は光より波長がはるかに短く、細かい形まで写せるからです。

「3ナノ」は長さを表していない

ナノと付いていても長さとは限りません。半導体の「3ナノ」「5ナノ」がその例です。

これは世代を示す呼び名で、チップの中に3ナノメートルの部品があるという意味ではありません。IEEEの技術誌スペクトラムは、名前と実際の寸法が食い違う状態が20年ほど続いていると指摘しています。

130ナノメートル世代のゲート長は実測で70ナノメートル、22ナノメートル世代では26ナノメートルでした。数字を見たときは、何を測った値なのかを確かめてください。

ナノメートルという物差しがあるおかげで、ウイルスも原子も同じ土俵で比べられます。次に「ナノ」という文字を見かけたら、それが長さなのか呼び名なのかを確かめてみてください。見分けがつくと、数字の意味が一段はっきりします。

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