ナイアガラの滝が少しずつ後退しているって知ってた?
ナイアガラの滝は、毎年少しずつ上流へ後ろに下がっています。動く理由は、硬い岩の下にある柔らかい岩が先に削られ、支えを失った上の岩盤が崩れ落ちるからです。
ニューヨーク州立博物館によると、この滝は約1万2000年前に今より約11キロ下流で生まれ、そこから現在の位置まで後退してきました。ただし後退の速さは、20世紀に入って大きく落ちています。
滝が歩いてきた11キロ
滝が生まれたのは、氷河期が終わった約1万2000年前です。当時の滝は、現在のニューヨーク州ルイストンとオンタリオ州クイーンストンのあたりにありました。
そこから上流へ約7マイル、およそ11キロ移動した跡が、今のナイアガラ峡谷です。アメリカとカナダの国際合同委員会(IJC)も、約1万2500年で約11キロという同じ規模の数字を挙げています。
長さ11キロの峡谷そのものが、滝が通ってきた道のりの記録なのです。
硬い岩と柔らかい岩の二層構造
滝の縁を作っているのは、ロックポート層の硬いドロストーン(苦灰岩)です。その真下には、ずっと柔らかいロチェスター頁岩があります。
落ちる水の渦としぶきが下の頁岩を先に削り取り、滝の裏側に洞穴のようなえぐれができます。やがて支えを失ったドロストーンが自分の重さで崩れ落ち、滝の縁が上流へ下がるのです。この繰り返しが、滝が移動する正体です。
後退の速さは大きく落ちた
ニューヨーク州立博物館によると、過去500年ほどの平均は年に3〜5フィート、およそ0.9〜1.5メートルでした。それが現在は年に1フィート、約30センチにまで落ちています。
IJCも、かつて年約1メートルだった後退が今は年約0.1メートルだと説明しています。二つの数字には幅がありますが、大きく減速したという向きは一致しています。
原因は自然の変化ではありません。水力発電のために川の水を取り分け、滝を流れ落ちる量そのものを減らしたからです。
1950年の条約が決めた水の量
滝に流す水の量は、アメリカとカナダが1950年に結んだ条約で決められています。観光シーズンの日中、4月1日から9月15日の午前8時から午後10時は、毎秒10万立方フィート、約2832立方メートル以上を滝へ流します。
それ以外の時間帯の下限は、その半分の毎秒5万立方フィート、約1416立方メートルです。下限を上回る分は両国で等分され、発電所へ回されます。
観光客の少ない夜に水を発電へ振り向ける運用が、そのまま岩を削る力を弱めているわけです。
この先1万5000年の見通し
ニューヨーク州立博物館は、今の速さが続けば約1万5000年後に滝が上流の柔らかい地層に届くと見ています。頁岩や岩塩を含む層に達すると、落差のある滝という形は保てなくなります。
さらに約5万年をかければ、川はエリー湖まで削り込む計算です。ただし五大湖周辺は今後より乾燥すると予測されており、その通りになれば後退はさらに遅くなります。
滝を見に行く機会があれば、水のカーテンの裏側にできたえぐれに目を向けてみてください。そこが、次の崩落と次の一歩を準備している場所です。
参考にした資料