科学

兆の上には京や垓、その先には無量大数が続く

2026年7月 · 読了3分
兆の上には京や垓、その先には無量大数が続く

日本語の数の名前は、兆で終わりではありません。その上に京(10の16乗)、垓(10の20乗)と4桁ごとに新しい名前が続き、最後は無量大数(10の68乗)にたどり着きます。

1のうしろに0が68個並ぶ数です。この並びを世の中に広めたのは、江戸時代のベストセラー算術書『塵劫記』でした。

万から上は4桁ずつ増えていく

万より大きい数には、4桁ごとに新しい名前が用意されています。万が10の4乗、億が10の8乗、兆が10の12乗、京が10の16乗、垓が10の20乗です。

その先も秭(𥝱)、穣、溝、澗、正、載と続き、極で10の48乗になります。この「4桁ごとに名前が変わる」数え方を万進(まんしん)といいます。

日本語の数が3桁区切りのカンマと相性が悪いのは、そもそも区切る位置が違うからです。1,000,000を「ひゃくまん」と読み替える一手間は、この仕組みの差から生まれています。

極から先は仏典の言葉になる

極(10の48乗)から上は、性格ががらりと変わります。仏教の経典から借りてきた言葉が並ぶのです。

恒河沙(10の52乗)の「恒河」はガンジス川を指すサンスクリット語ガンガーの音訳で、その川の砂粒の数という意味になります。続く阿僧祇(10の56乗)、那由他(10の60乗)、不可思議(10の64乗)も、もとはサンスクリット語です。

いずれも正確な桁数を表すためではなく、「数えきれないほど多い」というたとえとして経典で使われていた言葉でした。

並びを決めたのは江戸のベストセラー

今の並びを定着させたのは『塵劫記』です。吉田光由(1598〜1673年)が1627年(寛永4年)に刊行した算術書で、そろばんによる掛け算・割り算を中心に、田畑の面積の求め方、川や堤の工事の計算、ねずみ算や継子立てといった遊びの問題まで収めています。

国立国会図書館の解説によれば、そろばんが広まった時期にもっとも読まれた数学書でした。ここに載った一から無量大数までの名前が、そのまま現代の教科書に受け継がれています。

無量大数の値は版によって変わった

無量大数は最初から10の68乗だったわけではありません。寛永8年(1631年)版では、恒河沙から上を1万倍ではなく1億倍ずつ増やす数え方にしていたため、無量大数は10の88乗でした。

寛永11年(1634年)版で全体が万進に統一され、10の68乗に落ち着きます。この版がもっとも広く読まれたので、今の値が残りました。

恒河沙も版ごとに値が違っています。数の名前は一度で決まったのではなく、版を重ねる中で固まっていったのです。

京は今も使われている

京は辞書の中だけの単位ではありません。理化学研究所と富士通が開発したスーパーコンピュータの愛称「京」は、2010年7月5日に決まりました。

1979件の応募の中から選ばれた名前です。理研の発表によると、開発目標の性能である「10ペタ」を表す万進法の単位であること、そして「京」がもともと大きな門を表す字であることをかけた命名でした。

1秒間に1京回の計算という目標が、そのまま名前になったわけです。

大きな数字に出会ったら、右から4桁ずつ区切って読んでみてください。万、億、兆、京と数えるだけで、桁がすぐつかめます。

← 記事一覧へ戻る