雑学

パルテノン神殿にまっすぐな線がほとんどない?

2026年7月 · 読了3分
パルテノン神殿にまっすぐな線がほとんどない?

ギリシャのアテネの丘に立つパルテノン神殿は、まっすぐな柱が整然と並んで見えます。ところが実際には、土台も柱もわずかに曲がっています。

土台は中央が約6センチ高く、柱は中ほどがふくらんでいます。この曲がりが数字で確かめられたのは、完成から2000年以上たった19世紀のことでした。

紀元前447年から15年の工事

パルテノン神殿の工事が始まったのは紀元前447年、完成は紀元前432年です。設計を担当したのはイクティノスとカリクラテス、彫刻の総監督は当時の第一人者フェイディアスでした。

材料はアテネ近郊のペンテリコン山から切り出した大理石で、使われた量はおよそ2万2000トン。正面と背面に8本、側面に17本の柱が並びます。

土台の大きさは約31メートル×約70メートル。各部の寸法には4対9という同じ比率がくり返し使われています。

まっすぐな線がほとんどない

土台の線は水平ではなく、正面の中央が両端より約6センチ高く、ゆるやかな山なりに反っています。柱も一様ではありません。

中ほどがわずかにふくらみ、これをエンタシスと呼びます。四隅の柱はほかより少し太く、両端の柱は間隔もわずかに狭められています。

柱そのものも垂直ではなく、内側へごくわずかに傾いています。その傾きを上へ延長すると、はるか上空で交わる計算になります。

なぜ、あえて曲げたのか

古くからの説明は「目の錯覚を打ち消すため」です。大きな建物の水平線は、本当にまっすぐだと中央がたれ下がって見えます。

柱もまっすぐなら、真ん中がくびれて細く見えます。そこであらかじめ逆向きに反らせておけば、見る人の目にはまっすぐ映る、という理屈です。

この考えを文章に残したのは、紀元前1世紀のローマの建築家ウィトルウィウスでした。

錯覚説はまだ決着していない

ただし、これが設計者の意図だと証明されたわけではありません。土台の反りは雨水を外へ流すための実用的な工夫だとする見方もありますし、建物に生き生きとした張りを与えるためだとする見方もあります。

ウィトルウィウスが書いたのは神殿の完成から400年ほどあとで、当時の設計者の考えを直接伝える記録は残っていません。錯覚を打ち消す効果そのものを疑う研究も出ており、議論は今も続いています。

曲がりを見つけたのは19世紀の建築家

この微妙な曲がりに気づいたのは、イギリスの建築家ジョン・ペネソーンです。1830年代にアテネを訪れ、水平の線が反っていることを見抜き、1844年に発表しました。

これを受けて建築家フランシス・クランマー・ペンローズが現地を精密に測量し、1851年に『アテネ建築の原理の研究』として刊行します。以後、こうした微調整は「オプティカル・リファインメント(視覚的洗練)」と呼ばれ、古代ギリシャ建築を語るうえで欠かせない話題になりました。

パルテノン神殿は「まっすぐ造れなかった建物」ではなく、「まっすぐに見せるために曲げた建物」です。次に写真を見るときは、柱ではなく土台の線を横から追ってみてください。中央がわずかに持ち上がっているのが分かります。

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