生き物

ラッコは石で貝を割る、道具を使う数少ない動物

2026年7月 · 読了3分
ラッコは石で貝を割る、道具を使う数少ない動物

ラッコは石を道具に使う、数少ない哺乳類のひとつです。仰向けに浮かんで胸に石をのせ、そこへ貝を叩きつけて割ります。

2024年の研究では、道具をよく使う個体ほど歯の傷が少ないことが確かめられました。一方、手をつないで眠る姿は有名ですが、野生ではめったに見られません。

ラッコの食事は見ていて飽きません。潜って貝や巻き貝をとり、海面に戻って仰向けになり、胸の上で殻を割る。

この一連の動作には、愛らしさの裏に生きるための計算が詰まっています。

胸の石は「まな板」、手に持てば「金づち」

ラッコの石の使い方は二通りあります。ひとつは石を胸にのせて台にし、両手で持った貝を打ちつける方法。

もうひとつは石を手に持ち、岩にはりついたアワビなどを叩いて剥がす方法です。1964年にカリフォルニアのポイント・ロボスで行われた観察では、6日間で道具を使う場面が30回記録されました。

ラッコの道具使用について、今もよく引用される初期の記録です。

脇の下にポケットがある

ラッコの前あしの下には、たるんだ皮膚が袋のようになった部分があります。モントレーベイ水族館の解説によれば、ここに獲物をしまって潜れるので、両手を次の獲物探しに使えます。

石を運ぶのにも使えます。なお「お気に入りの石を一生持ち歩く」という話が広く語られていますが、これは俗説です。

確かめられているのは、脇の皮膚に獲物や石をしまうというところまでです。

なぜ道具が必要なのか

ラッコには、クジラやアザラシが持つ厚い脂肪の層がありません。代わりに毛皮の密度で寒さを防ぎます。

モントレーベイ水族館によると、最も密なところで1平方インチあたり100万本を超える毛が生えています。脂肪がない分、体温を保つ燃料を食べ続けなければならず、1日に体重の約4分の1を食べます。

硬い殻を素早く確実に割る技術は、かわいい特技ではなく生存の条件なのです。

道具を使うラッコは歯が傷みにくい

カリフォルニア大学サンタクルーズ校などのチームが、電波発信器をつけた南方ラッコ196頭を追跡し、2024年5月に科学誌サイエンスで結果を発表しました。石などの道具をよく使う個体は、より硬い獲物を割ることができ、歯の損傷が少なくなっていました。

道具を使うメスは、道具を使うオスより最大35パーセント硬い獲物を食べていました。メスは体が小さく噛む力も弱いうえ、子育てでエネルギーが要ります。その不利を道具で埋めていたわけです。

手をつないで眠るのは本当か

「手をつないで眠るラッコ」として広まった映像は、2007年にインターネットで人気になったバンクーバー水族館のものです。野生で流されないための方法として確認されているのは、ケルプ(大型の海藻)に体を巻きつけることと、ラフトと呼ばれる群れで固まって休むことです。

手をつなぐ姿も観察はされますが、野生ではまれとされています。日常的な習慣として語るのは言いすぎです。

ラッコの愛らしい仕草は、寒い海を生き抜くための工夫の裏返しでした。次に水族館や動画でラッコを見かけたら、胸の上の石に注目してみてください。

同じ石を何度も使っているなら、それは遊びではありません。歯を守りながら食事をしている最中です。

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