シロナガスクジラは地球史上最大の動物って本当?
シロナガスクジラは、地球の歴史上で最も大きな動物です。アメリカ海洋大気庁(NOAA)によると、全長は最大でおよそ33メートル、体重は150トンを超えます。
ただし「心臓は自動車ほどの大きさ」という有名な話は、実物とはかなり違います。数字で確かめていきます。
全長33メートル、体重150トン超
NOAAはシロナガスクジラを「地球に生きたなかで最大の動物」と説明しています。全長は最大で110フィート、およそ33メートル。
体重は33万ポンド、つまり150トンを超えます。10トントラック15台分の重さです。
大きさには地域差があり、5つに分けられる亜種のうち、南極海に暮らす亜種がとりわけ大型になります。
主食は数センチのオキアミ
これほどの体を支えているのは、体長数センチのオキアミです。シロナガスクジラに歯はなく、口の中に並ぶヒゲ板が、ふるいのように働きます。
海水ごと一気に飲み込み、水だけを押し出して餌をこし取る仕組みです。NOAAによると、大きな個体は1日に最大6トンのオキアミを食べます。
小さな餌を、けた外れの量でまとめて処理する。この効率のよさが巨体を支えています。
心臓は自動車サイズ?
よく語られる「心臓は小型自動車ほど」は誇張です。NOAAによると、シロナガスクジラの心臓の重さは約400ポンド、およそ180キロ。
ピアノ1台と同じくらいです。カナダの海岸に打ち上がった個体から取り出し、王立オンタリオ博物館が保存した実物も、フォルクスワーゲンではなく「小型のゴルフカート程度」と説明されています。
それでも性能はけた外れです。1回の拍動で約60ガロン、230リットルほどの血液を送り出します。
ヒトの1回分は約70ミリリットルですから、3000倍以上の差があります。
潜ると心拍は毎分2回まで落ちる
2019年、スタンフォード大学の研究チームが、自由に泳ぐシロナガスクジラの心拍を初めて記録しました。米科学アカデミー紀要(PNAS)に載った結果では、深く潜っている間の心拍は毎分4〜8回、最も低いときで毎分2回まで下がりました。
浮上して呼吸した直後は、逆に毎分25〜37回まで上がります。心拍を落として酸素の消費を抑え、潜っていられる時間をかせいでいるのです。
「史上最大」を脅かした古代クジラ
2023年、ペルーで見つかった古代のクジラ、ペルケトゥス・コロッススの体重が180トンと推定され、記録が塗り替わるかと注目されました。しかし2024年、カリフォルニア大学デービス校とスミソニアン協会の研究者が学術誌PeerJで計算方法の誤りを指摘し、推定を60〜70トンに下方修正します。
骨の重さから全身の重さを見積もる際の前提に無理があったためです。史上最大の座は、いまもシロナガスクジラのものです。
けた外れの数字は、正確に知るほど面白くなります。体重は150トン超、心臓は180キロ、餌は1日6トン、潜れば心拍は毎分2回。
次にドキュメンタリーや図鑑でシロナガスクジラを見かけたら、この数字を思い出しながら眺めてみてください。
参考にした資料