サメの歯は一生で何本生え変わるか知っていますか?
サメの歯は、あごの骨に固定されていません。歯ぐきの結合組織に支えられているだけなので、獲物にかみつくと簡単に外れます。
そのかわり口の奥では新しい歯が次々と作られ、前へ前へと送り出されます。レモンザメでは、一生のうちに3万本を超える歯を落とすと考えられています。
骨についていない歯
人の歯は、あごの骨にあるくぼみに深く差しこまれて固定されています。サメは違います。
サメの骨格は骨ではなく軟骨でできており、歯を差しこむ深いくぼみを作れません。歯は歯ぐきの結合組織に留まっているだけです。
そのため強い力がかかると、あごが傷つく前に歯のほうが先に外れます。サメは平均して1週間に1本以上の歯を落としているとされています。
歯を運ぶベルトコンベア
サメの口の中では、新しい歯が内側で作られ、ベルトコンベアのように前へ運ばれます。実際に使うのはいちばん前の列だけで、その後ろに控えの列が並んでいます。
前の歯が抜けると次の列が前に出て、役目を引き継ぎます。抜けてからわずか24時間ほどで、次の歯が埋まることもあります。
生え変わりが止まらない理由
この入れ替えが一生続くのは、口の中に歯堤(してい)と呼ばれる組織が残り続けるからです。歯堤は歯を作り出す工場のような部分で、人間の場合は乳歯と永久歯を作り終えると働きを止めます。
2019年に科学誌サイエンティフィック・リポーツで発表された研究では、ハナカケトラザメの歯堤から幹細胞の目印となるSox2などの分子が見つかりました。サメはこの工場を止めず、動かし続けているわけです。
歯の形は食べ物で決まる
何本生え変わるかは種類によって大きく変わり、それは食べ方の違いでもあります。大きな獲物を切り分けるサメはギザギザしたのこぎり状の歯を持ちます。
すべる魚をつかまえるサメは細い針のような歯、貝や甲殻類を割るサメは平たくてすり減りにくい歯です。歯の形を見れば、そのサメが海で何を追いかけているかがわかります。
世界でいちばん多い脊椎動物の化石
抜けた歯は海底に沈み、砂に埋もれて化石になります。サメの体はほとんどが軟骨なので、死んでも骨格はほとんど残りません。
硬い歯だけが残るため、サメの歯は世界でもっとも数の多い脊椎動物の化石になっています。砂に埋もれた歯は、まわりの地下水に含まれる鉱物が細かなすき間にしみこんで置き換わり、石のように硬くなります。
浜辺で見つかる黒い三角形の小石が、大昔のサメの歯であることもあります。
長生きするサメもいます。ニシオンデンザメについて、アメリカ海洋大気庁(NOAA)は少なくとも250年、500年を超える可能性もあると説明しています。
体長は6メートルを超えるのに、成長は1年に1センチメートル未満。大人になるまでに100年以上かかります。
それだけの年月を、歯を送り出し続けて過ごす計算です。次に水族館でサメを見る機会があれば、いちばん前の歯ではなく、その奥に控える列を探してみてください。
参考にした資料